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読書メモ:獲る・守る・稼ぐ週刊文春「危機突破」リーダー論

基本情報

『獲る・守る・稼ぐ週刊文春「危機突破リーダー論」』
新谷学
2021年7月30日 発行

最近でもダウンタウン松本人志さんの性加害スキャンダルを報道した「週刊文春」の編集長である新谷学氏の著作。出版は、「光文社」となっている。川谷絵音・ベッキー不倫スキャンダルあたりから「文春砲」と呼ばれるようになったが、著者自体はあまり「文春砲」というのは好きではないとのこと。内容としては、週刊文春がどのようにしてビジネスモデルを変えて、新しい稼ぎ方の仕組みを作り、脈々と受け継がれる「スクープ」を報道できるのかがまとめられている。
ダウンタウンの松本さんの性加害問題に関して、いよいよ裁判が始まり、どのような結論が出るのかわからないが、「週刊誌の存在意義」とは何か気になり手に取った一冊である。

構成

第1章 ビジネスモデル構築 スクープDX時代の「稼ぐ仕組み」を作る
第2章 ブランディング すべてのビジネスに「クレディビリティ」が必要だ
第3章 差別化戦略 最大の武器は「スクープを獲る」
第4章 危機管理 週刊文春流 炎上から組織を守る五つの要諦
第5章 事業展開 異業種間コラボ成功のための極意
第6章 組織と個人 縦割りの垣根を超える編集力
第7章 働き方 ワーク・イズ・ライフ

感想

週刊文春がスクープを報じる判断基準は、「報じるべき事実があれば報じる」と明確に書かれている。但し、ものによっては必ずしも稼げるわけではなく(河合克行・案里公職選挙法違反等)、週刊文春が権力に忖度しないで今後も調査報道を続けていくためには、やはり資金が必要であり、著者がデジタル化をうまく使い、稼げる仕組みを作っていたことが書かれている。具体的には、紙の週刊誌を続ける一方で、デジタル媒体で広告モデルと課金モデルで収益の最大化を目指し、書籍やグッズにも枝葉を広げていくというビジネスモデルである。

また、炎上対策及び法的リスクに関しても社内で組織体制・対策が構築されており、訴訟になっても十分耐えれるようになっていることがわかる。(話は少し逸れるが、以前爆笑問題太田さんが週刊新潮と日芸裏口入学に関して争った際の取材不足は素人でも杜撰さがわかるものだった。日芸の入試にそもそも数学はなかった)

デジタル化の流れで、紙の雑誌は廃刊が続いており、これからもこの流れが変わることはないだろう。一方で、テレビ、ラジオ、雑誌等マスコミが「権力」の監視という機能を引き続き担わないといけないことも変わってはいかないはずである。NHK、各民放もお金が必要であることは同じで、いかにして稼ぎ、メディアの機能を果たすのか。(旧ジャニーズ事務所の総括を考えてもそもそも果たそうとしてるのかという疑問もあるが)
週刊文春がこれからも頑張りスクープを連発するのはよいが、同様に他のメディアも調査報道に少し力を入れて欲しい。(特に日本人はすぐ忘れてしまうから)

「マスコミ」に関して考えるきっかけとなる一冊だった。


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