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読書メモ:スト決行 プロ野球が消えた2日間

基本情報

『スト決行 プロ野球が消えた2日間』
朝日新聞スポーツ部
2004年12月30日発行

2004年に決行されたプロ野球のストライキを中心にオリックス・近鉄合併から端を発した球界再編問題を時系列に記した本書。朝日新聞スポーツ部の取材をベースに書かれており、途中で当時のコラムも挟まれている。
楽天ゴールデンイーグルスが創設されたのが、まさにこの時で今年で創設20年を迎える。当時大学生だったが、スト当日の土曜日に夜のスポーツ番組「すぽると」に古田選手会長が出演され、視聴者から寄せられたFAXを涙しながら聞いていたのが今でも忘れない。そして、あそこまで支持されたストライキは未だかつてなかったのではないか?
少し前に西武池袋でストライキがあり話題になったこと、また、YouTube「古田の方程式」で、元楽天の斎藤投手・岩隈投手が出演された回で、当時の球界再編に関して少し触れており、気になり手に取った一冊である。

構成

1 勃発 6月13日 近鉄・オリックス合併構想浮上
2 迷走 7月7日  堤オーナー「もう一つの合併が進行中」
3 退場 8月13日 渡辺オーナー辞任
4 苦悩 9月6日  選手会、週末限定ストを発表
5 決行 9月17日 ついにストライキ突入
6 決着 11月2日 新球団は楽天に決定
インタビュー 古田敦也

感想

改めて時系列で振り返ってみると巨人・西武らのオーナーによる「10球団1リーグ制」へシナリオに対して、選手会側が抵抗し流れを変え、現在も続く「12球団2リーグ」を維持したかが、克明に記されている。
オリックス・近鉄合併の前段としてあった近鉄の本拠地である大阪ドームの「ネーミングライツ」を認めなかったこと、巨人の全試合がテレビ中継される等2024年現在と比較すると、この20年でプロ野球界も様変わりしていることを感じる。球場のネーミングライツは認められ、多くの球場にスポンサー名等が入り、巨人戦のテレビ中継は大幅に減り、Daznで配信され、今年から2軍ではあるが、2チームが新規参入もしている。(イースタンとウエスタンで、チーム数がそれぞれ奇数が試合を組むのみ苦労していたこともあるとは言え、新潟・静岡に球団ができたことは、プロ野球ファンとしてへ喜ばしいことだった)

プロ野球再編問題時は、プロ選手が参加する国際大会は、オリンピックしかなかったが、昨年大盛り上がりしたWBCが始まったのが2006年で、2004年の再編問題時に12球団2リーグを選手会の古田会長を筆頭になんとか維持したからこそ、今のプロ野球の盛り上がりがあったと思う。

読んでいて驚いたが、選手会がいわゆる「労働組合」に該当するかオーナー側からは再三認められない旨のコメントがされており、いかに選手会が邪魔だと思っていたのかわかるエピソードが書かれている。ストライキ実施に向け、スト権を確立していく時もオーナー側は、ストした場合の損害賠償をチラつかせる等明らかな不当労働行為のようなことをしており、不適切にもほどがある対応が随所に見られる。
今となっては、当時がただの経営の努力不足だったことが明らかだろう。
少しだけ触れられているが、当時の中日の落合監督が、井端選手会長に「徹底的に戦ってこい」と言ったというのはらしいなと思うエピソードであった。(選手会立ち上げには、落合さんも入っていたが、最終的には加入しなかった経緯があるが)

「組合運動」というと比較的ネガティブなイメージもあるが、いくつかの幸運(ライブドアが新規参入、巨人の渡辺オーナーの辞任、ダイエーの経営不振等)も重なったが、力を合わせて声を上げてしっかりとまとめ、成果を勝ち取ったことをまとめた一冊である。



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