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ニュースつぶやき:「ギャンブル依存症」

 人はなぜギャンブルから抜け出せなくなるのかの話。


 ドジャースの大谷選手の専属通訳だった水原一平氏が違法賭博、そして大谷選手の資金を賭け事に流用していた件で解雇されてから一夜明けた今日。新聞、ニュースサイト各誌は氏のギャンブル依存だったという告白に焦点をあてた記事が多く見受けられます。

 ギャンブル依存とは。

 言うまでもなく、ギャンブル=賭け事は、不確実なものです。その不確実性の向こうにある成功、それに伴う報酬を得たときに、人はえも言われぬ快感を感じるのでしょう。かく言うわたくしはパチンコ・スロットをはじめ、賭け事らしきものをしたことがないのでなんとも実感がわきません。なので、ここは科学的に、人間の脳内でその時なにが起こっているのかを調べて理解したいと思います。

 まず、ギャンブル依存症という名前がついてはいても、正確に言うならば「ギャンブルにおける成功報酬依存症」ということでしょうね。負け続けるギャンブルを望んで繰り返すわけではありませんから、そのギャンブルにおけるゲーム性うんぬんではなく、それで得られる成功報酬に依存しているということです。

 では、その成功報酬とはなにか。これは大きくふたつに分けられるでしょう。ひとつは、成功した時の報酬。金銭や物品であったり、成功体験そのものだったりします。そしていまひとつは、「成功しないかもしれない」という不安感──いわゆる「スリル」だと思いますの。

 お金を賭けたら必ずそれ以上の報酬が手に入る、それでは単なる報酬であり、それなりに満足感はあるでしょうけども、ここにスリル、成功しないかもしれないという不安や希望への抑圧というものが生じると、得られる快感は跳ね上がりますわ。抑圧状態からの解放──そう、カタルシスですわね。物語の世界でも、手軽に読み手に快感を与えられる手段として昔から重宝されています。有名な例としては「水戸黄門」あたりでしょうか。

 問題となるのは、成功報酬として、神経伝達物質であるドーパミンが脳内で放出されることだと言われています。ドーパミンは別名を脳内麻薬物質とも言われるほど、放出されると強い快感を覚えるようになる物質であり、意欲や動機、学習にも密接に関わっている物質です。さらには麻薬様物質であるため、依存性があり、何度も放出しているとその作用が鈍り、さらなる快感を求めようとするようになる──とも言われておりますわ。

 これでは、麻薬中毒そのものではありませんか。

 この螺旋スパイラルに陥ってしまうと、自力で抜け出すのは極めて困難でしょう。生活費を賭け事につぎ込んだり、労働や学習に支障をきたしたり、返済のあてのない借金をしたり、挙げ句の果てには窃盗や横領などに手を染めてしまう──まさに、今回のような事態にまで発展してしまうのです。これは、恐ろしいことですわ。なにが恐ろしいって、このような自力で這い上がることのできない穴が、身近に、ごく普通の日常に、常に口を開けているのですから。

 幸いにして、この穴は目に見える穴です。ギャンブル依存にならないためのいちばん有効な方法は、最初からギャンブルに近づかないことでございましょう。人生、ギャンブルなどしなくても生きてゆけます。運を天にまかせるような生き方よりも、自分の力、自分の努力で勝ち取った結果の方が、何倍も達成感と快感がございますわ。依存症になるなら、努力依存症におなりなさいませ!



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