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『聲の形』の合間に放映されたポカリCMはなぜ炎上した?

金曜ロードショーで放送されていた『聲の形』を見た。耳が聞こえずいじめられていた過去を持つ"西宮"といじめていた張本人の"石田"が主人公。高校生になった2人が出会うことで、本人や周囲の止まっていた時間が動き出す、という物語。

同作品、なかなかに話が暗い。青春に暗さレベルがあるとしたら間違いなく上位層に入る。なんと言ったって陰湿な嫌がらせをされた人間とした人間が出会う訳だから。後ろ暗い過去を持たない少年少女の出会いではないから。お互いに恋心を抱いたとて、すんなり成就する訳もなく。まぁこじれます。

そんな青春のダークな部分とは対照的だったのが、ポカリのCM。それはもうキラキラした少年少女が歌って踊って弾けてる。明るい青春ど真ん中。

うわー。。とか思いつつ案の定、放映されて間もなくツイッターのトレンドに「ポカリCM」が上がった。嫌悪感を抱いた、とするツイートが多数を占めていた。嫌悪の炎は翌朝まで消えることなくプチ炎上。「出演している奴ら全員受験失敗すればいいのに」のコメントにはさすがに笑った。

でもなんでポカリのCMが炎上したのか。理由は明白で、『聲の形』を見る層に、青春を心ゆくまで満喫できた人間なんてこれっぽちもいないからだ。

人間の機微!繊細な色使い!京アニ!が売りの作品を、青春ど真ん中のカースト上位に君臨して歌って弾けて踊る輩が見ると思うか。見ないよ。金曜の夜だもん。酒飲んでるにきまってるじゃん。コロナとか関係なしにウェイウェイしてるって。カースト上位層だった彼らを尻目に『聲の形』をリアルタイム視聴したくて帰宅するのは、青春まっさかりにカーストの下位層でうごめいていた我々だから。

そんな青春カースト下位層モンスターたちが『聲の形』を見て「青春の形も色々だよな。色々辛いよな。分かる。」とジメーっとした共感を寄せ合っていたタイミングで突如ぶち込まれるあまりにも明るすぎる青春。おいやめろって。そんな強い光を浴びたら消滅するって。暗い場所で暗い映画を見て暗い青春を振り返ってたんだよ。という声も虚しく、容赦なく繰り出される燦然としたCM。しかもロングバージョン。岩場の陰でひっそりしていたなめくじが急にライティングされて戸惑ってたんだけど、次第に目が慣れてきて沸沸と怒りがこみ上げてくるというか。そりゃ反発します。

と言う訳で、ポカリCMが炎上した理由はターゲティングミスでした!というお話でした。『聲の形』じゃなくてどこぞの居酒屋で流しておく方がよっぽど効果的だと思うよ。パブリックビューイングができるバーとか。大人になった今も青春を満喫しているような人たちには訴求できるCMでしょう。

お父さんはそう思ってる。


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