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【司法/予備・選択科目の選び方①】倒産法編〜民法の延長科目〜

司法試験・予備試験の選択科目を何にするかは決めましたか?

倒産法、経済法、知的財産法、労働法、国際関係法(私法系)、国際関係法(公法系)租税法、環境法…たくさんあって悩みますよね。

「興味があるのは倒産法だけど、自分に合わなかったらどうしよう…」「基本7科目がまだ不安だからできるだけ楽な科目がいいな…」「倒産法に決めて法科大学院でも履修はしているけどイマイチ勉強法がわからない…」など、様々な悩みがあると思います。

本記事は、司法試験や予備試験の選択科目を何にするか決めかねている受験生と、選択科目を倒産法に決めたものの勉強法がわからない受験生に向けて、様々な不安点・疑問点を解消していただこうと執筆したものです。是非、選択科目を決める際の参考にしてください!(ライター:加藤/The Law School Times ディレクター)



倒産法とは

倒産法という法律はない

倒産法とは、破産法・民事再生法・会社更生法の総称をいいます。選択科目の倒産法では、破産法と民事再生法から出題されます。司法試験では第1問で破産法が、第2問では民事再生法が問われる傾向にあります。予備試験では、破産法と民事再生法のいずれかが問われる傾向にあります。

倒産法を選択した場合には、破産法と民事再生法の2つの法律をマスターする必要があります。

倒産法と民事再生法のイメージ

皆さんは「〇〇株式会社が倒産した」というニュースや「自己破産」という言葉を耳にしたことがあると思います。破産法は、ある個人や法人が負っている債務を返済できなくなった場合に債務者の資産を債権者に公平に分配しつつ、債務者の経済的更生をも図ろうとする法律です。日常用語でいう「破産」について、その手続を詳しく学ぶイメージです。

一方、民事再生法は債務者に立ち直る資力が残っている場合に債務者の自力での再建を図ろうとする法律です。まだギブアップには至っていない段階(破産には至っていない段階)において、民事再生という手続を学ぶイメージです。

民法に似ている

破産法の学習は、ズバリ民法の学習の延長であると言えます!

より詳しく言えば、親族相続法以外の民法総則・物権担保物権法・債権総論・債権各論の理解が基礎となります。

例えば破産法で学習する論点には、民法総則の94条2項の「第三者」の論点が絡むものがあります。また、民法では物権法として学習する抵当権・非典型担保の話が破産法にも度々登場します。債権総論では債権者代位権・詐害行為取消権の理解、相殺についての理解が重要になります。債権各論では賃貸借契約・請負契約・委任契約など各種契約の基礎的知識が必要です。

なお民法の他にも、会社法で学習する事業譲渡や、民事訴訟法で学習する既判力に関連する論点を学びます。


どんな受験生に向いているか

倒産法では民法の理解が必須になります。規範等の記憶という側面よりは、制度や条文構造、概念、判例の理解の側面が強いです。「民法が得意!」という方、「民法を得意科目にしたい!」という方にはオススメです。他方で「民法がメチャクチャ苦手…」という方にとっては、倒産法の学習がツライかもしれません。

他方で、倒産法と民法は関連性が非常に強いので、倒産法を学習することによって民法の理解が深まります。司法試験・予備試験では民法が必須ですし、実務家になった後も民法は必ず使いますから、民法に苦手意識がある方であっても「民事系科目を強化したい!」という意欲がある方であれば、倒産法を選択しても後悔しないでしょう。

なお「破産法と民事再生法の2つの法律を学習しなければならないのは大変そう…」と心配に思っている方がいるかもしません。しかし、両者は全く異種の法律ではありません。学習の流れとしては破産法をはじめに学習し、続いて民事再生法について破産法と違う部分と民事再生法特有の制度について学びます。そのため、例えば、民法と商法の2つをマスターするような負担はありません。


学習方法

まず、オススメの書籍等を紹介します。

伊藤眞『破産法・民事再生法』(有斐閣、第5版、2022)
伊藤塾『試験対策講座 倒産法』(弘文堂、第2版、2021)
松下淳一ほか『倒産判例百選』(有斐閣、第6版、2021)
山本和彦ほか『倒産法演習ノート』(弘文堂、第3版、2016)
・司法試験論文式試験過去問 倒産法(2006〜)
・予備試験論文式試験過去問 倒産法(2022〜)

基本書は非常に分厚く、初学者にはとっつきにくいと思います。試験対策としては、はじめに多くの受験生が使用している予備校本である『試験対策講座 倒産法』を一読することをおすすめします。同書は破産法と民事再生法の両方についてコンパクトにまとめられている他、コラムに重要判例の判決文の引用がされていたり、巻末には論証集が掲載されていたりなど、充実度が高いです。

より理解を深めたい部分については、基本書を適宜参照するのが良いでしょう。また、民法よりも判例の理解が重要となりますから、『倒産判例百選』も学習教材としてオススメです。

また、試験対策には演習がマストですが、中心に据えてほしいのは過去問です。毎年非常に良質な出題がなされており、最良の演習教材です。法務省のホームページにて問題・出題趣旨・採点実感が公表されていますから、必ず入手して取り組んでください

*過去問の取り組み方に関する記事はこちら

最後に、教材ではないのですが、倒産法では条文が重要です。細かな条文も出題されますから、常に条文を参照することを心がけてください。


おわりに

いかがだったでしょうか?倒産法がどんな選択科目なのか、どのように学習すればいいのか、視界がクリアになったでしょうか。「もう少し倒産法がどんな法律なのか知りたい」という方、「自分に合うかまだ不安…」という方は、上記に列挙した書籍を書店等で手にとって眺めてみてください。よりイメージが膨らむはずです。


The Law School Timesは司法試験受験生・合格者が運営するメディアです。「法律家を目指す、すべての人のためのメディア」を目指して、2023年10月にβ版サイトを公開しました。サイトでは、司法試験・予備試験やロースクール、法律家のキャリアに関する記事を掲載しています!noteでは、編集部員が思ったこと、経験したことを発信していく予定です。

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