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「女性性」が高まる世の中

皆様は「ホフステードの6次元モデル」なるものをご存知でしょうか。
オランダの社会心理学者であるヘールト・ホフステード博士が1960年代ごろから研究を行い開発したもので、国ごとに異なる文化や価値観を数値で表現し理解しようとするフレームワークなのですが、今日はこの6次元の中の一つの指標とされる「女性性」について注目し、世の中が「女性性」の高まる方向に動いている、という興味深いトレンドについて取り上げたいと思います。

各国の文化や価値観を数値化する上で指標となっているのは下記の6つです。

  • 権力格差 (Power Distance)

  • 集団主義/個人主義 (Individualism)

  • 男性性/女性性 (Masculinity)

  • 不確実性の回避 (Uncertainity Avoidance)

  • 長期志向/短期志向 (Long/Short term)

  • 人生の楽しみ方 (Indulgence)

このうち、初見ではある意味一番ピンと来ないのが「男性性/女性性」ではないでしょうか。指標の名前に「男性/女性」という言葉が含まれますが、ジェンダー平等の度合や、男女比を指すものではありません

下記の表に女性性の高い社会、男性性の高い社会それぞれの特徴がまとめられています。男性性の高い社会においては成功や勝つことに重点が置かれ、組織においては決定力・決断力のある上司が「良い上司」とされます。家庭より仕事を重視する傾向が高いのも特徴です。
一方で女性性の高い社会においては成功者を称賛することよりも弱者を支え、社会全体として生活の質を確保したり、社会として連帯・協力したりすることを重視します。組織においても男性性の高い社会とは対極的に、コミュニケーション力や関係構築力に長けた人が「良い上司」とされる他、仕事より家庭が重視されることも特徴です。

(引用:「世界の広告クリエイティブを読み解く」より)

さて、日本は男性性と女性性、いずれが高い社会と分析されているのでしょうか?この記事を読んでくださっている方はお気づきかもしれませんが、主要国の中で抜きんでて高い男性性を持つとされるのが日本です。「家庭より仕事」という価値観がいまだ一部根強く残ることや、「勝ち組」になることを目指す風潮などに表れているとされます。

(引用:「世界の広告クリエイティブを読み解く」より)

ところが、この「男性性/女性性」について、日本に留まらずグローバルレベルで、興味深い変化が生じてきています
世界全体的な特徴として、若年層を中心に男性性よりも女性性の価値観の方が一般的になってきているというものです。例えばワークライフバランスやダイバーシティ・インクルージョン、サステナビリティを重視する価値観に表れていると言えます。

確かに今の若い世代を見ていると競争や成果主義の時代から、協力や共感、連帯の時代に変わってきているように感じますし、ダイバーシティやサステナビリティといった今の時代を代表するキーワードにはいずれもこの価値観の変化が紐づいているように感じます。(個人的な考えとしては、これは世の中の多くの国が時と共に経済発展と社会・経済の成熟を遂げ、そもそも「競争」がだいぶ苦しくなってきていることにも起因しているように思います)

もしもこの流れが今後も続くとすると、上記でご紹介した表にあるような例えば「関係構築力があり、意見をまとめることが長けている」人が優秀な上司として捉えられる時代がやってくることになります。
「女性」を極端に一般化することはできませんが、大まかな傾向値として、「決定力・決断力がある」人が評価される時代よりも、女性が活躍しやすい時代に一歩近づくともいえるのではないでしょうか。

Top Image:Duy Pham