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【感想】地震で世界破滅の危機に陥る映画だったらしいけど京葉線が運転を見合わせる程度で済んでそうな『2020』【ネタバレ】

概要

2020 (Shockwave: Countdown to Disaster)

あらすじ

謎のテロリストに盗まれたビックリドッキリメカ地震兵器ヘルストームがアラブで起動してしまう。これを放置すると世界の主要都市で地震が発生し数百万人もの犠牲が出るという。物理学者のケイトはこれを止める為に国防総省を説得するも聞き入れられず、別居中の夫と独自にチームを組み破滅を回避しようとする。時間との戦いの中で、ケイトは地震を止める方法を探さなければならない。

IMDb

この映画、どこにもまともな情報がないから、態々海外サイトにまで探しに行ってしまった。実に無駄な労力だったよ。クソが。で、だよ。この作品はU-NEXTでこう説明されている。

見どころ
低予算ながら何とか"形"にしようとしたスタッフの努力が垣間見られる。終末を前に、人間としての究極的な心理が、ディザスターと折り重なるように綴られていく。

U-NEXT

これ皮肉か?もっと他に書くことは無かったのかと言いたくなったけど、視聴後にもう一度読むと、これが如何に正確な文章であったかが分かるよ。それを説明して行こう。

ローランド・エメリッヒへのファンムービー

先ず、低予算としてはかなり高クォリティな映画だと思う。予算がどれ程だったのかは分からないけど、CGのチープさを見るにアルマゲドンシリーズ辺りと同じくらいなのだろうか。それを考えると、映像表現は本当に頑張っていた。他の低予算ディザスターと違ってCGの使用は最低限に抑えられていたし、ロケ地が少ないのが痛かったものの、それはキャラクターの動きで上手く誤魔化されている。ローランド・エメリッヒ監督へのファンムービーだとしたら、それなりに評価できるかな。

さて、このニック・ライオン監督はそれなりに映画を撮り慣れているんだろう。過去にも十作以上の映画を作っていたのが確認できた。当作は、駄作が大量生産されているディザスター映画としてはかなーーーりまともな部類。ただ、残念なのが、映画としての完成度と脚本の面白さは必ずしも比例しないってとこだね。アサイラム製映画みたいな金のあるクソ映画と違って、低予算映画は絵が貧相な分、脚本で頑張らないといけない。この映画は脚本がズタボロすぎる。上記したU-NEXTの紹介の通り、ちょっと映像が良いだけで全く面白くないんだよ。

脚本の温度差で風邪引く

この映画の脚本の何が一番悪かったかと言うと、パートごとのバランスが非常に悪かった点だ。普通、この手の映画を観るときは、自分の知能を下げてから観る。これは飽くまで比喩だけれども。例えば、『インデペンデンス・デイ』を観ている時は『007/スペクター』を観ている時よりも頭を働かせていないはずだよ。これに限らず、特撮作品では細かい整合性が無視され易い。そうした方が面白いからね。

そういう整合性を無視した一作完結型の特撮映画が一番やってはいけないことは「頭を使う場面とそうでない場面を、同じ作品の中に同時に存在させてしまう」こと。これをごちゃ混ぜにしてしまうと、観客は「おバカ映画のノリでIQを下げて観ていたのに、急に小難しい話になって理解がしづらかった」だったり「小難しい話かと思って真剣に観ていたら、急に整合性ガン無視のおバカ映画になって困惑した」なんて感想を抱いてしまう。全く、たまったもんじゃない。この映画は途中から政治を絡めたかなりグダグダな話になるんだけど、これがあるから、他の映画では割り切れるような細かい部分がかなり気になってしまった。ヘルストームって名前のダサさだったり、主要都市ばっかり地震に見舞われるところだったり、地震が、京葉線が運転を見合わせる程度しか揺れていないように見えたり。

監督はもっと本読め

とは言え、肝心の内容が面白ければ、それ程文句は無いんだ。ボクだって上記の理由だけで「全く面白くない」なんて言わないからね。で、その内容だけど、これが酷いこと酷いこと。

先ず、登場人物が属性過多だ。群像劇にすれば良いものを、俳優を雇う金が無かったからなのか、一人のキャラが実に多くの役割を担っている。例えば、主人公(?)のケイト。こいつは『インデペンデンス・デイ』で言えば、ラッセルであると同時にデイヴィッドであり、スティーヴでもある。状況を打開する科学者である且つ逃げ回るファミリーの一員であり、最後に爆弾の設置すら行うんだよ。これはちょっと盛りすぎじゃない?まぁ、母親という役割から逃げている仕事人間って設定は良かったかな。ボクの実父もこういう部分があったから、マジで殴りたくなった。

次に、ストーリーの厚みを重視しすぎて物語が長く停滞しているところ。こんなディザスターモノなんか完全にエンタメに振っちゃえば良いものを、監督が態々面倒臭い政治腐敗パートを入れた理由は明白。安っぽいエンタメ作品にしたくなかったからだよ。センスが無いもんだから、半年も野菜室に入ってて腐っちゃったミッション:インポッシブルみたいになってるけどね。閑話休題、この出来の悪い話が続くせいで分かり易い見せ場が殆ど無く、話が停滞して凄く飽きる。その癖、ガワだけはしっかりしてるから、中身が無いのに大作を観た時並に疲れる。飽きたし疲れたしで、90分映画なのに途中でほっぽり出しておじゃる丸とオトッペ観てたわ。

あと、ケイトの所為でボコボコにされた有能ぽっちゃりがどうなったのかは気になるね。他にも山積みの問題があったでしょ。あの官僚の処遇とかさぁ。普通の映画であれば当然回収される伏線ですらないものをこの映画はガン無視しやがる。雑にでも良いから回収してくれよ。

2020……2020!? 2012じゃない!?

ここまで説明した所で、冒頭のU-NEXTによる紹介文をもう一度読んでみよう。

見どころ
低予算ながら何とか"形"にしようとしたスタッフの努力が垣間見られる。終末を前に、人間としての究極的な心理が、ディザスターと折り重なるように綴られていく。

U-NEXT

これを書いた奴を褒めてやって欲しい。頑張ってるのは認めるけど、別に面白くは無い。「クソ」の二文字を出来る限りマイルドに表現したU-NEXTの運営は立派だよ。

最後に、この放題さ、2012のパクリだよね。マジで広報は売ることしか考えて無い。この映画がこんなに低評価なのは七割くらい日本の広報が悪い。監督に謝れ。

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