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書籍#15.『オリジン』ダン・ブラウン(著)~謎を追っていたらスペインに行きたくなった~

 先日もう要らないだろうと思う本を処分して、本棚を整理しました。

 一冊、一冊、棚へ置いていくときのトンッという柔らかい音が好きです。一歩下がったところから身長や性格の似た者同士がお行儀よく並ぶ姿を見るのは心地良く、時間を忘れてしまいます。背筋がすっと伸びて、なんと凛々しいことか。

 本のタイトルを目で追いながら想い出に浸っていると、ある小説のところで思考が止まりました。それは『ダ・ヴィンチ・コード』で有名なダン・ブラウン氏の小説『オリジン』です。どれだけ記憶を掘り返しても、一切内容を思い出せません。それでもあるのは、絶対に読んだという確固たる自信。帯にはでかでかと「『ダ・ヴィンチ・コード』を越える面白さ」「一気読み必至」「最高傑作」と書かれているのですから、読んでいないわけがありません。

 ――はい、思い込みでした。

 思い出せないはずです。読んでいないのですから。ということでここ1週間ほど、就寝前は『オリジン』の世界を旅しておりました。

宗教象徴学者ラングドンは、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館を訪れていた。元教え子のカーシュが、人類最大の謎を解き明かす衝撃的な映像を発表するというのだ。しかし発表の直前、カーシュは額を撃ち抜かれて絶命する。一体だれが――。誰も信用できない中で、ラングドンと美貌の美術館館長・アンブラは逃亡しながら、カーシュの遺した人工知能ウィンストンの助けを借りて謎に迫る!

帯の説明

 感想を綴るとすると、まず舞台がスペインという点に惹かれました。グッゲンハイム美術館やサグラダ・ファミリア、カサ・ミラなどの建築物はフィクションにリアリティを持たせ、詩や絵画などの芸術作品は物語の背景をより重厚に演出します。

 そこで問う人類最大の謎とは、ゴーギャンの絵画でも有名な「われわれはどこから来たのか」「われわれはどこへ行くのか」。ラングドン教授シリーズでは欠かせないテーマの宗教と科学の対立、そこに最新技術の AI が加わって見えてくる答えは、なかなか面白かったです。綿密な調査から生まれる圧倒的情報量と造詣の深さ。そこから読み手を納得させる説(いや、落としどころ?)を導き出すあたり、さすがダン・ブラウンだと思いました。

 ただ執筆された2017年から5年経っていることもあり、小説で語られている人類の未来に対してそこまで驚けなかったのが、少し残念でした。せめて購入した4年前に読むべきでした。そしたら今よりは驚きや恐怖を感じて、楽しめたかも。

 そうそう。就寝前に読むと、面白くて目が冴えちゃう可能性がありますので、ご注意を。


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