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発達障害傾向から幼稚園の時に酷いイジメにあった話

 筆者は小学校受験で某名門小に入学した。いわゆるお受験組である。お受験をしたからと言って、別に学歴に有利になるわけではない。ブランドといっても履歴書に書く機会は無いし、そもそも自分の意志と能力で受験をしたわけではないので、過去の栄光として誇る余地もない。ただ、それでも筆者が小学校受験をしたのは明確な理由があった。それは筆者がおそらくは発達障害傾向が原因で幼稚園で担任保育士からイジメに遭っており、親が心配したからである。

 幼稚園は共同で作業をする機会が多かった。一から理解して技術を習得するような作業であれば筆者は得意なのだが、一斉に説明して周囲と歩調を合わせながら複雑な作業を行うことは苦手であり、いつもノロノロしてしまった。作業工程を間違えて周囲に注意されることも頻繁だった。こうした特徴が担任に目をつけられる原因となったと思う。

 担任の行為は酷いものだった。作業を一つ間違えるごとに1日中立たされることもしばしばだった。なぜ悪いか分からずに、延々と説教されることが多かった。恐ろしいのはその程度が次第にエスカレートしていくことだった。11月に至っては連日立たされるようになった。他の園児が作っている製作を自分だけさせてもらえなかったことが常態化し、ちょっとした発言でも人格否定をされていた。昼休みに担任の憂さ晴らしで説教されて泣きながら誤っていた記憶がある。「先生にごめんなさいする〜」と泣きながら5回くらい言わされたこともあった。隣の園児に作業の進め方を聞いたら「〇〇ちゃんがお前にとっての先生なんですか〜」などと怒られた。大人が思っているよりも子供は覚えているものだ。

 筆者が正真正銘の問題児であった可能性は低い。隣のクラスの先生には可愛がられていたからだ。自分で言うのもアレだが、幼児期は結構愛嬌のある顔だったので、知らない女性から「かわいい〜」などと言われることが多かった。やはりイジメにあった理由は作業がうまくできないことだったと考えている。その後も支配的な女性から嫌われた時は全て同じパターンである。

 イジメが発生した構図はありがちなものだ。筆者の幼稚園はある大きな幼稚園の分園であり、園長の目が届かなかった。担任保育士は30前後で幼稚園では実質的なリーダー役であり、他の保育士に対して優越的な立場にあった。いわゆる女社会で上位に立つタイプの人物である。会社組織でもこのよな人物が問題を起こすことは多い。人間関係で優越的な地位に立っていながら、相応の責任と権限を持たないため、ハラスメント行為の温床になるのだ。いわゆる「お局」問題や「ボスママ」問題と同じである。保育士や看護師といった職場にありがちとも聞く。

 結局、こうした行為に筆者の両親が感づくようになり、幼稚園のクレームを入れた。担任保育士はその年をもって幼稚園を辞めることになった。筆者の親がクレーマーだったのかもしれないが、同様のケースを人生で経験したことはなかったので、やっぱり担任に問題があったのだと思う。園長の異例の対応の速さを見るに、おそらく他にも何か問題があった可能性が高い。

 経験上、発達障害傾向の強い人物はこのような「ボスママ」系の人物には警戒した方が良い。同調圧力が強く、はみ出た人間に容赦がないからだ。人間の可能性といったものにそこまで注意を払わないので、杓子定規的なところがある。「ボスママ」の人物は秘書や取引先といった間合いであれば問題ないのだが、支配下に入ったり、「ヨコの関係」に入ることは回避した方が良い。

 こうした事情があって、筆者は小学校受験をすることになった。筆者の通っていた幼稚園は一斉保育の色が強く、どう見ても風土が合っていなかった。名門小学校であれば自由な風土なところが多く、先生の質も高い。幼稚園の頃の筆者は多分賢い方だったのだが、言動などが担任からは生意気だと思われたようだった。名門小学校であれば賢いけどマイペースな子供に合っているだろうとの判断だった。

 幸いなことに筆者は小学校に入学してからは幼稚園のような経験をしたことがなかった。浮いたりトラブルになることもなく、普通に小学生をやっていたと思う。スクールカーストが低いのが悩みだったが、その程度の悩みは誰にもある。大人しい性格だったからか、怒られることもあまりなかった。むしろ合唱のピアノ伴奏をして褒められたり、クラス演劇の脚本を書いたり、要所で能力を発揮していた方だと思う。

 就職してからは再び幼稚園の悪夢が蘇ってきた。集団と歩調を合わせてマルチタスクを行うということが壊滅的にできず、周囲からは嫌われてばかりだ。組織社会において役に立たないことは「悪いこと」である。筆者にとって職場とは自分の生きている価値を否定される場所であり、本当に苦しい。就職してからというもの、笑う機会は激減したし、慢性的な希死念慮を抱くようになった。ただ存在するだけで周囲に迷惑を与えている存在なのだ。会社で突然泣き崩れたこともあった。小学校から大学まで、人前で泣いたことなどなかった。幼稚園時代と今、どちらが泣いているだろうか。

 

 

 

 


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