早慶卒の幸福度が一番高いと思う理由10選

 先日、興味深い記事を拝読した。「東大卒の人生を考える会」さんのこんな記事だ。

 私も東大卒業生として、常に似たような感情は抱えているし、他にもこうしたモヤモヤを抱えている人間は多いと思う。正直、東大卒の人間の幸福度どは日本人の平均よりも確実に低いと思う。

 私は以前から学歴コスパ論を論じていたのだが、その中で最も強調しているのは「早慶最強論」である。私の親戚や知人には結構早慶出身の人間が多く、彼らの幸福度は平均すると明らかに東大卒よりも高いと思う。今回はその要因について考えてみたいと思う。

1.受験勉強で余計な消耗をしない

 まず挙げられるのはここである。東大と早慶の入試難易度はかなり違うし、その差は世間で考えられているものよりも大きい。東大と早慶の間には京大・一橋・東工大・地方医学部などが入ってくるからだ。早慶とMARCHの差が1ランクなら、東大と早慶の差は2ランクくらい開いていると考えて問題ない。

 早慶の出身校は有名でない高校が大半だが、東大卒の出身高校はほとんどが有名中高一貫校か地方公立のトップ高校だ。彼らの多くは中学受験や高校受験の段階で激しい競争にさらされていて、その中でも東大に合格するのは一握りである。東大卒の多くは小学校4年生辺りからずっと親に受験勉強を強いられてきた者も多く、合格した時点で燃え尽きてしまう者がいる。中には教育虐待まがいの人もいる。

 この点で早慶はここまでハードな受験勉強をしてきた人間は少なく、AO・推薦や内部進学生も多い。彼らは明らかに東大生の多くより伸び伸びと暮らしてきたはずだ。また、東大入試の能力と実社会繋がるスキルの間には乖離があり、TOEICや公認会計士試験のような分野では東大と早慶の間に有利不利の差は少ない。内部生の場合はむしろ有利だと思う。また、スポーツを一生懸命やりたい学生の場合は絶対早慶附属に入るべきだと思う。アスリートとしていちばん大事な時期に国立大の場合は入試で消耗してしまうからだ。

2.内部競争が緩い

 大学に限ったことではないが、一番手の集団というのは内部競争が激しい。青天井であるというプライドからどうしても構成員の期待値は高くなってしまうし、「上位校」という共通の敵がいないので、団結して学閥を作ろうという空気になりにくい。

 世間ではあまり知られていない、東大生の生きづらさを見てみると、この点が浮き彫りになる。東大生は陽キャに対するコンプレックスを抱えている人間が多い。東大には陰キャが多いにも関わらずである。彼らは一番手としてのプライドがあるため、何でもかんでも張り合ってしまい、常に生きづらさを抱えている。しかも相手も優秀であることが多く、張り合うのは尋常ならざる苦労が必要だ。東大生という生き物は実は強烈な劣等感を抱えていることが多いのである。卒業後も常にかつての同級生と比較を続けている人間も珍しくない。東大入試で競争、入ったとも競争、卒業してからも競争、無限競争社会だ。

 この点で早慶の場合はここまで激しい内部競争はないし、健全な良識人も多いので、雰囲気が良い。学閥の強さもこうした事情が絡んでいると思う。同じ会社でも東大卒の会はなにやらピリピリした雰囲気が漂っているのに対し、早慶は親睦を深めたりと仲が良さそうだ。どこの会社にも必ず三田会はあるし、しばしば強い力を持っている。人間に幸福感をもたらすのは人との緩いつながりであることを考えると、ここは馬鹿にならない。

3.就職が良い

 早慶の就職は非常に良い。メガバンクでも総合商社でも大歓迎だ。普通のJTCであれば早慶出身であることは有利になるし、場所が都内なので、大手企業からのウケは良い。それに会社によっては強固な学閥があることもある。入試難易度で考えれば地方旧帝や上位国公立大学は早慶と並ぶか上回ることが多いが、これらの大学は地方に立地しているし、校風がノンビリしているために大手企業への就職は強くない。

 東大との比較はどうだろう。確かに世の中には東大生でないと不利になる就職先というのは存在する。キャリア官僚やトップの外銀・外コンがそうだ。こうした場所では最大多数派が東大となるので、その他の大学出身者は基本的に逆転扱いである。しかし、この手の就職先は例外なくブラックな上に内部競争が極めて激しく、幸福を求めて行くような場所ではない。

 なお、ネット上で常に言われる医学部最強説だが、早慶と比べて医学部の幸福度は高くないと思う。医学部は中高一貫校で勉強漬けの人間が多いし、何年も浪人を余儀なくされることもある。大学に入ってからも実習やら試験やらで大変だ。その後に激務労働が待ち構えている。国試から酷使へ、これが医者の人生である。また、開業医の勉強の苦手な息子がプレッシャーでおかしくなるのも何例か見たことがある。明らかに早慶からJTCの方がラクだと思う。

4.一般社会で常に高学歴扱い 

 普通のJTCの場合は大体学歴のボリュームゾーンがMARCHから早慶あたりにある。大体、最大多数派は慶応か早稲田だ。このことは社会に出てからも強みになる。

 JTCの学歴格差は原則として早慶とMARCHの差異がクローズアップされることが多い。従って早慶は常に高学歴扱いである。しかも数と知名度の問題を考えると一橋・東工大にも引けを取らない。東大には勝てないが、ここまで行ってしまうと学歴コンプの人から変な絡み方をされたり、「東大なのになんでうちの会社に?」などと言われるリスクが尽きまとうので、効用はあまり大きくならない。

 要するに、早慶を出ていれば一般社会で舐められる可能性はまずない。ホワイトカラーの世界のボリュームゾーンであるMARCHには優位に立てるし、地方旧帝と比べても首都圏での認知度が高い。一橋・東工大はもちろん、京大にも学閥で圧倒できる。唯一勝てないのは東大だが、数が少なく、無視できる。中には東大至上主義の会社もあるようだが、そんな会社はロクでもないので行く必要はない。

 早慶が力不足となるのは学歴だけで目立とうとするケースだろう。この点で東大は本当に強い。ただ、このメリットを活かせるのは自由業とかブロガーといった場合であり、実社会では意味のない項目である。

5.プライドが肥大化しない

 東大を出ていると、どうしても自分の将来に過大な期待をしてしまう。高名な学者になったり、政治家になったりして、日本の将来を担う人材になれるだろうという夢を持っている東大生は多いだろう。ところが彼らの大半は実際はサラリーマンになる。末は博士か大臣かと言われたのに意外と大したことのない人生だと感じやすい。

 また、東大は官尊民卑の気風があり、優秀層としてもてはやされるのは官僚や学者だ。民間企業に行くとその時点でトップランカーからは脱落したという意識がある。すると、ただ大手企業に勤めているだけでも挫折感や物足りなさを持つ人間がいる。18歳の時は日本の頂点にいたはずなのに、こんな地方の支店で上司にペコペコして何やっているんだろうという話である。一方でかつての同級生は若手研究者としてメディアに取材されていたりして、余計な比較をしてしまう。

 早慶の場合はここまで人生の期待値が高くないので、JTCに入ってそこそこ頑張れれば人生安泰という価値観になりやすい。そもそも、民間企業に対する関心が東大生よりも遥かに強いと思う。同じ企業でも、東大生は挫折感を持って入社するのに対し、早慶は期待感を持って入社していることが多い。この点は入社してからの成長度や満足感に大きな影響を与えるだろう。

 要するに、東大生は18歳の時点であまりにも強い達成感を味わってしまうので、大抵の職場に行った場合は下り坂に感じてしまうのである。もちろん顕著な働きをする人はいるが、それは一部であり、90%は早慶出身者と変わらないキャリアで一生を終える。こうなると、東大に行くと落ちぶれた子役のような人生になってしまうリスクがある。

6.育ちが良い

 早慶卒の人間は全員ではないものの、総じて首都圏のそれなりの家庭出身が多く、幼少期から豊かな暮らしをしていることが多い。環境に恵まれている人間は元々の自己肯定感が高いし、いざとなった時も粘り強い。それに幼少期から多様な経験を積む事ができるので、社会に出てからも引き出しの広い人間だと思われるだろう。

 この点で国立大の場合は早慶ほど裕福でない家庭の出身の者がいるし、地方だと得られる経験の量も首都圏とは異なる。今後日本が少子化する上で首都圏への集中は進むだろうが、地方出身だと首都圏で生きる上でアウェイになってしまうので、何かと生きづらいことが多い。この点で早慶の特に内部生は首都圏育ちの典型例のような人々なので、社会に出てからも強いだろう。少なくとも幸福度はかなり高いと思われる。

 東大生の場合も家庭環境という点では早慶と変わらないか、下手するとそれ以上なのだが、あまりにも競争社会にさらされ続けているので、「お坊ちゃん」的な余裕を持った人物がめったに存在しない。せっかく育ちが良くても別の要素が上塗りされていて、良さが活かせていない。

7.陽キャが多い

 早慶出身の人間は陽キャが多い。普通の公立中学校でそれなりに馴染めるようなタイプだ。彼らは学校生活で不遇な思いをしたことが少ないし、社会に出てからも強い。間違いなく幸福度は高いはずだ。

 陽キャが困難を抱えやすい1つの関門となっているのは大学受験だが、彼らは早慶という学歴を手に入れているので、最大のリスクをクリアしたことになる。後は持ち前のコミュ力で周囲から好かれて社会に適応していくだろう。

 東大の場合は発達障害やオタク系の人間が多く、社会に出てから困難を抱える可能性が高い。確かに東大にも陽キャはいるが、彼らは一般的な意味での陽キャというよりは競争的高学歴といった方が適切で、成績や就職偏差値に異常に固執している。どう見ても幸福度は高く無さそうだし、競争社会から脱落した時のリスクが大きいように見える。

8.モテる

「三高」に必要なのは高学歴・高収入・高身長という。早慶はかなりの高学歴なので、女性からのウケは非常に良い。結婚したい大学のランキングで早慶は常に上位に来るだろう。元々イメージが都会的なところもトクしている。

 これが東大となってしまうと、プライドの高さや発達障害傾向などが災いして早慶には劣ってしまう。東大が早慶に比べてもてはやされているのはネットの学歴厨の界隈だけだ。少なくとも東大が早慶に対して優位に立っているということはまず無い。一部の学歴フェチの女性は東大生に近寄ってくるが、こうした人物は何かしらの点で問題を抱えている時があり、そこまでオススメできない。

 婚活においても、早慶の場合は明らかに格上と言えるのは東大と医学部くらいなのに対し、MARCHやそれ以下の場合は女性の方が学歴が高いというシチュエーションが増えてくる。こうなると、男性のプライドは動揺してしまうことがある。

 なお、女性の場合はというと、早慶はやはりそこそこ有利だと思う。最近は女性にも学歴を求める男性が増えているので、早慶出身だと婚活で評価してもらえることが多いだろう。東大まで行ってしまうと敬遠されるリスクが高いし、結婚相手も東大ばかりになってしまうので、幸福度が高いかは微妙である。

9.学歴コンプレックスが少ない

 早慶出身者は学歴コンプレックスを持っている人間をあまり見ない。先述のように早慶はどこに行っても高学歴扱いなので、自尊心を満たせるし、学歴が足かせになるようなシチュエーションもほとんどない。唯一学歴コンプレックスを抱くのは東大やその他の難関国立大を不合格になって早慶に進学した場合だ。ただし、社会に出てみると、大学受験の時に雲の上にいたはずの東大生が意外に仕事ができなかったり、鬱屈した挫折感を抱えていることが分かったりする。こうなると、学歴が高ければ良いという問題ではないと思い直すことがある。早慶を出ていれば東大に逆転することは可能だし、現にそうして社会に出てから大活躍する人は多い。中には総理になる人もいる。

 他の大学はここまで状況が良くない。MARCHの場合はJTCに入っても学歴が高いという扱いを受けないので、早慶やその他の難関大の出身者にコンプレックスを持つことがある。日東駒専の場合はそもそも学歴が足りなくて大手に足切りされるなど、具体的な実害を被ることが多い。こうした層の人物は早慶に比べて学歴コンプレックスを遥かに抱きやすいだろう。

 なお、東大にも学歴コンプレックスの人間は存在する。厳密には学歴コンプレックスという名前が付けられれないだけだ。東大には明確な上位大学が存在しないため、比較対象は同じ東大生の優秀層ということになる。早慶の中には東大に劣等感を持つ人がいるが、こういう人は東大に行っても同様のコンプレックスを持つ可能性が高い。

10.卒業後のリターンが見合っている 

 結局はこの点に行き着く。日本社会で一番手堅く豊かな暮らしをする方法はJTCに入ることであり、JTCという就職先は早慶と大体見合っている。JTCに就職した早慶出身の人は自分の人生に対する肯定感が高いと思う。

 東大より医学部と言われるのも、労力が見合っているかという話に帰着するだろう。医者は医学部に入らないとなれないので、学歴と就職の関係に関してモヤモヤすることは少ない。しかし、東大の場合は多くは早慶でも入れるところに就職するので、余計なプライドを持ちやすくなる。「東大までの人と言われたくない」とか「出世しないと学者になった同級生を見返せない」といった変な固定観念にとらわれてしまうのである。せっかく東大まで行ったのに何者にもなれないという劣等感は結構しんどいものがある。

 正直、学歴に見合った就職先という価値観は馬鹿にできないと思う。就職先が学歴に見合っている場合はこれまでの自分の歩みを肯定できるし、辛い時も踏ん張ろうという気力が湧いてくるはずだ。ところが就職先が学歴に見合っていないと、大学の同級生に劣等感を抱いたり、自分の努力が報われていないと感じたり、逆転を目指して短期離職したり、無意識に周囲を見下してマウントを取ったり、といい方向に行かないケースがある。しかもこの手の悩みは同僚から理解されにくいので、ますます孤独感をつのらせてしまう。博士課程の問題の多くもここが関連している。

まとめ

 長々と書いてしまったが、早慶の幸福度が高い理由は単純だ。卒業後のコスパが良く、難易度が高すぎず低すぎず、ちょうどいい塩梅になるからだ。IQの最適値は120と言われるように、社会で生きる上では高すぎても低すぎてもマイナスになることが多い。

 東大レベルにまで行ってしまうと、プライドが高すぎたり、内部競争が激しすぎたり、合格後に燃え尽きたり、その後の人生に達成感が感じられなかったりというリスクが高まる。東大生の間で花形とされている進路はブラック極まりなく、行ったところで幸福感は上がらないだろう。

 逆にMARCHや上位国公立レベルになると、JTCでは基本的に高学歴という扱いにはならないし、就活も早慶に比べれば露骨に厳しくなってくる。この偏差値帯で就活に失敗すると幸福度の上限と言われる年収600万〜1000万の水準に到達しない可能性が高い。

 要するに、日本人が手っ取り早く豊かな暮らしをするにはJTCに入るのがベストで、JTCを基準として考えると、東大⇒JTCは挫折感を感じるケースが多く、MARCH⇒JTCは入ってから学歴コンプレックスを抱えたり、学閥が弱いことが多い。地方旧帝⇒JTCも悪くはないが、やはり学閥の弱さと地理的な不利が響く。早慶⇒JTCが一番手堅い「横スライド」であり、無難である。

 日本社会で生きていく上では早慶辺りが一番幸福度が高いし、実のところ社会的影響度が一番高いのもこの層だ。十分な発信力と経済力があり、層も厚い。これ以上になってくると数が少ない上に世間ずれしていることが多いので、社会的影響力としては微妙である。

 などとクドクド書いていたが、似たようなことを簡潔に説明しているnoteを発見した。やはり同様のことを考えている方は結構多いようだ。

 ふと思ったが、京都大学はどうなのだろうか。東大ほど競争が激しくないし、変人にも人権がありそうだし、かつ学歴ブランドもありそうなので、金よりも知的要素が重んじる人にとっては最高の進学先にも思える。ただ、京大出身の知り合いが少なすぎて実情は分からない。我京大ぞ!って人はコメントをどうぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?