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広島原爆の威力、実は大したことがない説

 nukemapという核兵器の威力がシミュレーションできるサイトがあるのだが、これで広島原爆の威力を算定してみると、こうなった。

 どうにも皇居に投下された場合、千代田区は大きな被害が出るが、他の区には大した被害が出ないようなのだ。原爆一発で都市が消滅するというイメージとは異なる。結構被害は限定的なのかもしれない。実際、広島原爆の犠牲者はほとんど半径2キロ以内で、それより離れていると命拾いすることがほとんどだった。

 ベイルート爆発が1キロトンと言われているから、広島原爆はその10倍だ。被害半径は2倍と少しだろう。確かに爆発力としては強大なのだが、それでもビデオを取ることが可能なくらいの威力だろう。ベイルート爆発では多くの建物の窓ガラスが割れたが、倒壊している建物は少なかったし、死者も百数十人にとどまった。

 それじゃ、なんで広島原爆は14万も死者を出したのかという話になるが、答えは簡単で、米軍がそうなるように仕組んだからだ。広島の平たい地形は原爆の威力を発揮するのにうってつけだし、中央部にコンパクトにまとまっている都市だ。米軍は何回も繰り返し訓練を行って、広島の中心部に原爆が確実に落ちるようにした。これは完全に計画的な犯行だ。広島は当初から米軍に狙われていたし、どうがんばっても核攻撃は回避できなかっただろう。

 長崎原爆は広島原爆よりも威力が強かったが、被害は半分だった。山がちな地形で威力が削がれたのと、原爆投下がぶっつけ本番だったことが原因だ。本来長崎原爆は小倉に透過されるはずだったが、うまくいかなかった。当日の小倉は悪天候だった上に原爆投下を疑った八幡製鉄所の職員がコールタールを炊いて煙幕を貼ったからだ。原爆搭載機はせっかくの作戦をフイにするわけには行かないと、帰り道の長崎に原爆を投下した。小倉市を救った八幡製鉄所の職員は戦後長らく罪悪感を抱え、このエピソードは表に出ることがなかった。

 実のところ、原爆の威力は過大評価されている側面がある。とてもじゃないが、一発で地域を破壊することはできない。鉄筋コンクリートの建物の多くは原爆を受けても生き残るだろう。原爆ドームですら生き残ったのだから、現在の頑丈な建物は爆風に耐える可能性が高い。地下鉄も安全だろう。防護された軍事基地の破壊も完全には不可能と思われる。

 結局のところ、原爆のような危険な物を人口密集地に打つなという単純な結論に至るだろう。銃を適当に撃っても無意味なように、核兵器も慎重に狙い撃ちしなければ大きな被害を出すことができない。原爆が壊滅的な被害を出すのは大都市の中心部に打ち込んだときだけだ。農村部は人口がスカスカなので被害を生みにくいだろう。米ソが全面核戦争になったとしても死者は数千万人で、人類滅亡とは程遠いと言われる。

 広島市の14万という犠牲者は日本国内では飛び抜けて多いが、欧州と比較するとレニングラードの100万人やワルシャワの70万人と比べれば少ない。欧州では核兵器は使われなかったが、人間の悪意は遥かに強かった。最先端技術ではなく、飢餓というローテクな方法で数百万という人々が殺害されていった。しばしば第二次世界大戦が多くの死者を出したのは兵器の進歩のせいという話があるが、これは間違いだ。カンボジアやルワンダのように技術水準が低い国でも大量虐殺は頻発している。全米ライフル協会ではないが、人を殺すのは核ではなく人自身なのかもしれない。


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