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中小企業は客数を伸ばしてはいけない

先日、面白いサービスを展開する企業経営者の方にお会いした。とても価値あるサービスで世の中にどんどん広がるべきだと感じた。

サービス力はありつつも一方、導入対象は従業員1000名以上の企業が中心であり、営業部隊を自社で抱えていないため、中々販路拡大に苦戦しているとのことであった。

こちらの会社は、営業利益は20%を超えており、IPOも目指せる優良企業である。しかし、あえて余剰人材を抱えずに商品力を磨くことにフォーカスしている。

人員を増やさずにどうしたら営業が進むかというご相談であった。この経営姿勢は素晴らしいと感じた。

結局、組織を大きくして上場すると、株主にむけて高い還元をしつづけないといけないし、上場コストも年間数千万円かかり高い。上場は良し悪しではないかと思う。(その上、見え方もあるので、株も簡単には手放せない)

そのためか、最近では、上場ではなく、M&Aを見据えて3~5年くらいかけてじっくりとバリューアップしたいという優良企業からのご相談が最近増えてきた。

バリューアップと簡単にいっても、いざ実行は難しい。

コンサルティング会社として、内部・外部分析をこってりすることもできるが、そのために大企業から頂戴しているような数千万円の費用を頂戴するわけにもいかない。

数千万円いただいて中期経営計画を作ったところで、金額が高い分すごい計画かというとそうではないと私は思う。数値の整合性はとれているかもしれないが、かけたお金や手間に計画の質は必ずしも比例しない。

最初に先立つのは、「勝てそう」という直感から始まる。

いわゆる、「高級文房具」と揶揄されている外資系戦略コンサルタント会社なども、最初は「これなら勝てそう」という直感に基づく仮説から、少しずつ大企業支援のロジックを組み立てていく。

中小企業支援においては、この直感、ざっくりとした感覚はより大事だと思う。その「ざっくり」の前提でいうと、重要な事は「どのサービスを伸ばすか」ではないかと思う。

さらに分解するとそのサービスの「客数」「客単価」をどう伸ばすか?となる。

尚、その前提において、中小企業においては、「客数」を伸ばすことはお勧めしない。薄利多売で、高回転型で儲けていくのは、大企業の得意とする領域だからだ。

高付加価値なサービスを、「ちょっと高いけど必要だから買うね」という企業にうっていくのが定石ではないだろうか。

これは、グロース・スタンダードに上場しているような規模の企業であっても当てはまる部分があるのではないかと感じる。業界TOP3に入る大企業でない限りは、いかに差別化とスキマをねらっていくのが大事だと私は思う。

サービスの機能を絞り込んでいくと、その商品を買う人は減っていく。(ように見える。)万人受けのサービスではなく、徹底的に「受ける人には受ける」というサービスをめざす。

となると、ターゲットはもちろん、営業戦略・営業戦術・サービスの磨き方も見えてくる。

toBビジネスであれば、ターゲットを本当にしっかりと精査していくと、50~おおくても200社とかそんなものになることが多い。あとはこの限られたターゲット企業にいかにアプローチしていくか?となる。

法人営業ならば、本気でねらっていくと大体、面談はできる。顧問名鑑をつかったり、取引先に紹介してもらったり。

しかし、「出会い方」は重要である。たんなる営業なのか、事業パートナーとみてもらえるかは、紹介者の信頼度や、初回面談での実績・事例などが重要になってくる。

こうした、事業のキーポイントにフォーカスして支援していくと、事業は少しずつのびていく。 一朝一夕でよい事業ができることはない。

一番よくないのは、サービスを磨き上げず、差別化も弱い段階で、人を増やして、ガンガン営業をしかけていくことである。

人材も疲弊するし、経営的にも固定費がかかる割に、成約率も低いので、どんどん収益性が落ちていく。安全性も下がる。これは絶対に避けるべき。

最初にやることは、客数を下げて、単価を上げる意思決定をすること。ここにつきると思う。

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