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「相続土地国庫帰属制度の概要」

今年4月27日より「相続土地国庫帰属制度」が、スタートしました。
これは、相続等で土地を取得した相続人が、その土地を国に引き継ぐことができる制度で、使用する予定のない土地を相続した人が、その土地を管理できずに放置してしまうことを防ぐ(土地の管理不全化の防止)ためと「所有者不明土地の発生予防」を目的に創設されたものです。
 
今回は、「相続土地国庫帰属制度」について、事例を交えてお伝えいたします。
 
以前、お客様からこのようなご相談がありました。
 
東北地方の山間部に住んでいた相談者のお兄様がお亡くなりになり、そのお兄様の財産を相続しようか、それとも放棄しようか迷っておられました。
お兄様は、生涯独身者で両親も他界しているため法定相続人はA様(お客様)お一人でした。
 
財産は、
・築50年程の木造住宅とその敷地
・約2,000坪の山林
・僅かな預貯金
です。
 
A様は、それらを相続すれば管理責任も発生するし、山間部の土地は売却できるか不確定なため、相続放棄をしたほうが良いのではと考えていたのです。
A様が相続放棄をすれば、他に相続人がいないため、それらの財産は国庫に帰属することになります。
 
いろいろと悩んだあげく、A様は相続放棄をせずに、お兄様の財産を全て相続することにしました。
管理責任はあるものの、相続した土地を全て時間をかけてでも処分する方法を選択したのです。
 
これは、今回の制度ができる前のご相談でしたので、
相続放棄をするか、しないかの選択肢は2択で、相続放棄をしない方がA様にとってメリットが大きいと判断したためです。
仮に相続放棄をしても、土地が国庫に帰属するまでは、A様に管理責任が残ること。
また、国庫に帰属させるためには、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうのですが、その際に予納金として数10万円~100万円程度を納める必要があること。
そして、相続財産管理人への報酬や諸経費などを負担しなければならないこと。
など、総合的に判断し相続することを決めたのです。
 
ですが、「相続土地国庫帰属制度」がスタートしたことによって、
不要な土地(山林や農地も)を相続したとしても、要件が揃ってさえいれば、それらを国に引き取ってもらえるようになりました。
 
この「要件が揃っていれば」というところでいうと、どのような土地でもこの制度を利用できるわけではなく、一定の要件を満たす必要がありますので、ご注意ください。
 
以下が、この制度の主なメリット・デメリットとなります。
 
◾️メリット
1 .不要な土地のみを手放すことができる
立地が悪い、管理コストが高いなどの土地は、売却したくても売れないことが多いです。特に、農地は法律により売却先が限定されたり、山林は管理コスト等が高く、需要が低くなります。この制度を活用できれば、固定資産税の負担からも解放されます。
 
◾️デメリット
1 .国に引き継げるのは要件を満たす土地のみ
申請すれば、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。
 
法務省では、以下に揚げる土地に関しては引き取れない旨、明記しています。
 
(1)申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)
 ・建物がある土地
 ・担保権や使用収益権が設定されている土地
 ・他人の利用が予定されている土地
 ・土壌汚染されている土地
 ・境界が明らかでない土地
 ・所有権の存否や範囲について争いがある土地
 
 (2)承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)
 ・一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
 ・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
 ・土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
 ・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
 ・その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
 
2 .負担金・審査手数料がかかる
負担金は、土地の種目ごとにその管理に要する10年分の費用(算定額)を納付しなければならず、審査手数料も土地一筆あたり14,000円の納付が必要となります。
 
3. 国に引き継ぐまでに手間や時間がかかる
申請手続きには、多くの書類の作成・提出の手間がかかり、申請から審査結果が届くまでには、半年から1年程度の期間が必要です。
審査項目は多岐にわたり、書面で審査できるものもありますが、現地調査をしなければならないものもあり、また申請の際に建物の解体や相続登記など事前に済ませなければならない手続きや作業等も少なくありません。
 
今回は、「相続土地国庫帰属制度」についてお話をしましたが、 
「使用する予定のない土地の相続で迷っている」
「実際に相続してしまった」などの、ご相談のある方は、
 
弊社では、1回2時間×2回迄 の無料相談を実施しておりますので、お気軽にご連絡下さい。

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