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親の介護をしてきた相続人は”寄与分”を容易に受け取れるのか?!      ~“寄与分”を認定してもらうために必要なこと~

相続人の間で、遺産分割をする時に揉める要因をご存知ですか?
 
要因の一つに、「親の介護をしてきた相続人がいる」場合があります。
親と同居して面倒をみてきた場合、自分のプライベートを犠牲にして、親の介護をしてきたのだから、他の兄弟(相続人)より遺産を多く貰うのは当然だと思うのは無理もないでしょう。
 
これまで、弊社にご相談に来られた方々も
・妻とともに親の介護をしてきたのだから、親の遺産の多くは相続できる
・親と同居して面倒を見てきたので、この住まい(土地建物)は相続できる
と、考えられている方が多くおられました。
 
しかし、遺言が無い場合には、相続人全員での遺産分割協議で決めなければなりません。
親の介護をしてきた相続人からすると「寄与分があるじゃないか!」と言う人もおられますが、他の兄弟(相続人)はそれで納得することができないケースもあります。
「その分、生活費を援助してもらっていたのではないか」とか「自分たちも病院への送り迎えなど介護を手伝ってきた」などと主張され、協議が整わないなんてことも少なくありません。

今回の事例でお話しますと”寄与分”とは、
「被相続人の介護を献身的に続けるなど、特別な貢献をした相続人に対して、相続分以上の財産を取得させる制度」と認識いただければ幸いです。
 
また法的には、以下のように定められています。

条文にもあるように、”寄与分”は共同相続人の協議で定める必要があるということです。
それでも”寄与分”を主張するには、裁判所に申し立て(調停・審判)をするしかありません。ですので、”寄与分”を認めてもらうには、そう簡単なことではないのです。
また、”寄与分”が認められるためには、被相続人に対する貢献が「特別の寄与」でなければなりません。
 
そして、「特別の寄与」と認められるためには、次の1~6の要件が全て揃っていなければならず、一つでも欠けると難しいと言えます。
 
1.その寄与行為が被相続人にとって必要不可欠であったこと
・被相続人が生前に介護が必要な状態であった
 → 例えば、「介護保険の『要介護2以上』または、それと同等の状態」
2.特別な貢献であること
  ・家族であれば当然の行為と判断されるようなものは、認められない
 ・同居している親子なら、ある程度、親の面倒を見るのは当然であり、同居している親子であっても、普通はそこまでしないという行為でなければならない
 → 例えば、「親の介護について、通常は費用を払ってヘルパーを頼むところ、仕事を辞めて全て自分でやっていた」
 
3.被相続人から対価を得ていないこと
・対価を受け取っていない、或いはそれに近い
 
4.寄与行為が一定の期間あること
 ・介護が長期間継続して行われていた
 
5.片手間ではなく、かなりの負担を要していること
 ・仕事を辞めて介護に専念した、或いは同等なくらい負担が大きかった
 
6.寄与行為と被相続人の財産の維持又は増加に因果関係があること
 ・プロに支払うはずの費用を削減し、相続財産の維持又は減少を防いだ
 ・介護にかかる費用の減少に繋がっていなければ、寄与分としては評価されない
 
また、”寄与分”を認めてもらうためには、その状況を自ら立証しなければなりません。
主張をしたくても、それを裏付けるだけの資料がないと、他の相続人や裁判所を説得することができないため、その裏付けとなる証拠資料を揃えることが必要となります。
 
特に、調停や審判になったときには、証拠は必須です。
例えば「要介護の認定資料」「医師の診断書、カルテ」「介護サービスの利用記録・介護日誌」「家計簿、領収書」などがあれば、良いでしょう。
 
以上のように、”寄与分”が認定されるためのハードルは、皆さまが思われている以上に高いと言えますので、生前に被相続人の方に遺言書を遺してもらっておくことがトラブル回避につながります。
被相続人の方が介護をしてくれた相続人に対し、遺産を多く遺してあげたいという想いがあるのかどうかを、出来れば事前に確認しておくことをお勧めします。
 
弊社は、1回2時間×2回迄、無料相談をさせていただいております。
相続のことで、ご心配や気になることがありましたら、お気軽にご連絡ください。

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