2024/04/15 CA

今日のテーマ
女子大学の意義について
記事
朝日新聞 2023年5月2日 朝刊 『(私の視点)志願者減る女子大 性差別の是正、役割諦めない』

日本には国立・公立女子大学が10校あり、そのほかに68の私立の女子大がある。教育は雇用分野と並んで性による分離が残る領域であって、女子のみに入学を認める女子大学はその一例であると考えることができる。

ジェンダー平等が叫ばれる昨今において、性別によって差を設けることの合理性に異議を唱える意見もある。とくに、国立・公立大学の女子大学であるは憲法上の観点から批判されることもある。

また、女子大学の志願者は実学志向の高まりや多様な人々との交流を希望する受験生も増え、女子大の志願者も年々減少傾向にあるようだ。

対して、今回立論者が引用する記事では女子大学の意義について述べられている。フェリス女学院大学教授の教授は、女子大学はアファーマティブアクション(積極的格差是正)によって設けられた背景があることを指摘している。社会からの枠組みにとらわれず女性が学ぶことのできる女子高等教育が効率的であるとした。

そこで、今回は現代における女子大学の意義についてみなさんと議論しようかと思います。
私は「女子大学は現代において必要である」という立場をとりますので
皆さんは「女子大学は現代において不要である」という立場をとって議論を行なってください。

議論の前提
・国公立・私立、どちらかに限定せず議論をすることとします。
・是非に関して議論するものの、「女子大学を解体すべきか否か」といった議論ではなく、その意義について議論をすることとします。

Q女子大の共学化などの話を含めて議論するか?
A含めて議論する

Q総合大学としての側面ではなく専門的な分野のみになっているため進学を目指す人が少ないのでは?
A色々なニーズに答えられるようにしていければいい。
意見・論点
1女子大学は教育史上重要な存在である
女子大学の歴史を辿ると現在のお茶の水女子大学の前身である「東京女子高等師範学校」まで遡ることができる。当校は高等教育を享受する対象が男性に限定されていた時代に、女性に高等教育の機会を与えるアファーマティブアクションとしての役割を担っていた。その功績は教育史上重要であり、男女平等のシンボルとしての意義を持っている。

Q平等を意識するのであれば「女子大」を男女平等のシンボルというのは違うのでは?
A問題は解決された後に手法だけ残った状態が今だと考えられるが、より機会の男女平等にするための一つの仕組みとして考えられる。

2男女平等を達成するための人材を育成することに適した環境である
女子大学には共学の大学と異なり、構造に組み込まれたジェンダーバイアスが少ない。日本女子大学の篠原聡子学長はインタビューで女子大学の生徒はのびのびとしており「自由な言動が多い」という。また、建築や工学といった領域では、「男性がリーダーである」というバイアスが暗に存在しており、女性だけで教育を受ける「意義」を感じたと語っている。
大学教育はアイデンティティ発現の場であり、ジェンダーバイアスの少ない環境で学ぶことは十分に意義があることであると考えることができる。そのため、今後の女性リーダーの活躍のために女子大学は男女平等達成のための人材を輩出する土壌があると言える。
Qファッション業界では女性が強い→女子大出身のファッション業界に強い
 決まった業界でしか活躍できないのでは?
A大学によると考えている。ただのびのびと成長できる環境があることは大きな強みだと考えられる。
 共学だとできないことが女子大で出来ると考えている。

Q社会全体の意見から「女子大」でリーダーを作ろうとはしてないのでは
A懐疑的な面がある。女性リーダーは共学でも目指すことが出来るが女子大では「女性のみ」の環境であるため、バイアス無しに学ぶことが出来る環境だと。

3女子大学特有のブランディングがあり、それでしか満たすことのできないニーズがある
大学においてブランディングは(高等教育本来の役割ではないものの)重要な要素である。やや妥当性に欠けるデータではあるが、スタディプラスユーザへのアンケート(n=1956)では、大学選びで重視すること第2位に「ネームバリュー(57%)」第4位に「雰囲気がいいから(43.1%)」がランクインしている。また、リクルート進学ブランド力調査2023における「高校生に聞いた女子大学に対するイメージ」では「伝統や実績」というイメージが女子大学に根付いているという結果が出ている。これらは他大学との差別化を図ることができ、受験市場においても重要な役割を担っている。また、「安心・安全」というイメージもあるようだ。さらに、特段の事情(例えばイデオロギー・教養を身に付けたいなど)により女子大学を選ぶ受験生も多いようだ。総括として、女子大にはそれでしか満たすことのできないニーズがある。
Q「伝統や実績」は共学にもあるのではないか
A「女子大」ならではの伝統があり、そこに求められるニーズは共学とは違うと考えられる。

Q経営の面から共学にすべきではないか
A女子大を共学にすることでのメリットが生まれるかは疑問。

Q実際に定員割れをなくすには
A

予想される反論・再反論
1ジェンダー平等の潮流に反するのではないか
ジェンダー平等社会が目指される世において、男女で入学要件を設けることは2つの次元で限界があると言える。1.女子学生のみに入学を認めることは男性への「逆差別的な」構造を生み出している。2.そもそも、男女の二分論がジェンダーマイノリティの人々への無意識への排除を生み出している。
→1.男性への逆差別という構造は、形而上は認められるものの、社会全体における逆差別は実質的には存在していない。女子大学設立の背景には社会全体において女性が差別という前提があったものの、現代において男性が実質的に大学選択において著しい制限があるとは言えない。
2.お茶の水女子大学ではトランスジェンダー学生の受け入れを2020年度から開始している
Q女子大学という名前から差別を生んでいるのではないか
A名前から違和感を感じる人もいるが、共学が多くあるという視点もある。そのため性別不和の人が女子大学を選択することがあまりないと考えられるため、差別を生むとは考えづらい。

Qネームバリューの影響があるのではないか
Aトランスジェンダーの人がいることで生物学的に男性がいることが女子大の「女性しかいない」という強みに影響してしまうのでは。
事例がきわめて少ない為、ブランディングに大きな影響が出ないと考える。

2女子大学本来の役割は現代において達成されているのではないか
女子大学は本来アファーマティブアクションとして設けられた「機会」である。アファーマティブアクションはそのほかに「人種」や「民族」といった項目において行われる。これらに共通することは、「社会的弱者」に対して行われるということである。対して、現代の高等教育において女性は社会的弱者と評価できるだろうか。例えば医学部において「ガラスの天井」が存在していたが、極めて例外的である。工学部のような理系学部に女性が「少ない」という現状があるものの入学の機会は保証されている。何らかの問題(今回は高等教育における女子差別)に対するアプローチが、問題の解消によって無用になる、いわば「ロックイン」が働いているとも考えることができる。
→機会の確保という点では、女子大学は無用である。一方で、女性リーダーという領域では未だ意義を持ち続けちると言える。(概ね意見・論点の2で補足可能)
Q女子大の改革について:社会に出た時に男性のいる組織でどのようにリーダーシップを発揮するのか
A意見論点2に記載したように、高等教育では「バイアスのない中での経験」は大きな糧になる。そのため男性がいることでリーダーシップを発揮出来ないとは繋がらない
A男性を含んだ実践演習も出来るのでは

3良妻賢母の再生産を目標としているのではないか
女子大学は女子高等教育の機会の確保を目標としたものであったが、これらが必ずしも男女平等社会の実現に与するものとは限らない。女子大学にはルーツに家父長制や家制度を前提とする「良妻賢母思想」をもつものも多い。
→女子大学は良妻賢母思想と訣別すべく、変化している。例えば、「良妻賢母の大妻」の世評を持ち、「廉恥報恩を基調とする徳操を涵養し、時代の進運に適応すべき学芸を授け、有為な社会人たらしめること」という建学の精神を持つ大妻大学は、そのルーツは認めつつ「自ら啓発し将来各界で世の師表となって活躍できる女性の教育を図る」としている。

Q変化していると考えられているが家政学部などは今も残っており、男女平等社会の実現に繋がるとは考えづらい
A家政学にも意義がある学問だと考えている。今までの文化は残していく。

憲法についての視点から

参考文献・URL
・朝日新聞 2023年5月2日 朝刊 『(私の視点)志願者減る女子大 性差別の是正、役割諦めない』
・青柳幸一(1984)「<論説> 国公立女子大学の憲法適合性: 高等教育における差別」『横浜経営研究』5巻1号、 p.95-114.
・広井 多鶴子(2022)「女子教育と「特性論」の歴史」『ジェンダーと教育』89巻4号p.514-525
・学校法人大妻大学「建学の精神」
URL: https://www.otsuma.jp/introduction/philosophy
・リクルート進学総研「高校生に聞いた大学ブランドランキング「進学ブランド力調査2023」
URL: https://souken.shingakunet.com/research/2012/07/post-66a6.html
・スタディプラス「大学選びに関するアンケート」
URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000131.000047308.html
・HUFFPOST「女子大って、今の時代に必要ですか? 日本女子大学の篠原聡子学長に聞く」
URL: https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6221ff5ce4b03bc49a99b40b
URL表記のあるもの全て最終閲覧2024年4月9日

【先生からのコメント】
・家政学部は男性がしてもいい。女性だけが学ばなければならない学問ではない。
・女子大としての役割が変わりつつある。男性がいないことで学びやすさが生まれていると考えられる。
・高校では共学になる事例があるでは大学ではその動きが今のところない。

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