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若い人ほど「学歴重視」――学歴社会は本当に悪なのか

 就職活動が始まる時期になってきました。売り手市場の昨今は大学2年や3年ですでにインターンなどで学生の「囲い込み」が行われるようですが、学問をするために高い学費を払って大学に入ったのですから、せめて3年間は放っておいてほしいものです。

 さて、就活において重要視されてきたのが「学歴」です。要するに偏差値の高い大学の出身かどうかで能力を判断するというもので、昔は低学歴の学生は書類選考で「足切り」されてしまうことも少なくありませんでした。

 最近はそうした「学歴重視」の選考基準は不公平だという風潮も高まり、昔ほど「足切り」は行われなくなりました。ところが、キャリア転職の会社が実施したアンケートによると、むしろ20代の若者ほど、「学歴は重要だ」と考えているという結果がでました。

若い人ほど学歴重視、日本の学歴社会はさらに進むか | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 アンケートでは現役世代の8割が「学歴は就活に影響する」と答えており、依然として「学歴フィルター」が残っていることがわかります。興味深いのは、「学歴社会は必要だ」と答えた割合は20代が最も高く、世代が上がるごとに下がっていることです。

 就活生側の理由として「自分が学習のためにがんばった経験があるから」という意見が多く寄せられたそうです。学歴社会というと旧態依然とした唾棄すべき価値観と思っている人もいるかもしれませんが、案外若者はそう思っていないようです。

 私は学歴社会に概ね賛成です。もちろん、人の能力は学歴だけで測れるものではありません。しかしながら、学歴もその人の能力の一つであることに違いありません。頑張って勉強してきた努力は認められるべきです。

 子どもはよく「大人になれば勉強しなくていいんだ」と思っていますが、案外、社会人になってからの方が勉強の機会は多いものです。企業としては、いくら口が上手くても、勉強嫌いで成長しない人材は採用したくありません。学歴は、少なくともその学生が有名大学に合格し、4年間勉強してきたという指標にはなるでしょう。

 昨今の就活では企業側のコンプライアンスが過剰に徹底され、「質問してはいけない事項」が山のようにあります。採用担当者は、一緒に働くかもしれない人の内面についてほとんど質問できず、当たり障りのない質問に学生がその場でどう答えたかだけで合否を決めねばなりません。

 そうなれば必然的に、息をするように嘘をつくことのできる詐欺師のような人間が有利になります。現状では企業側がそれを見抜くことが難しいのです。だったらせめて勉強のできる人間を採ろうというのは、人事の心情として理解できます。

 ところが、最近は大学も一般入試の枠を削り、推薦入試やAO入試の採用枠を増やすなど、勉強とは関係のない観点で学生を増やそうとしています(論点がズレるので多くは語りませんが、これも非常に良くない傾向です)。ともあれ、「学歴がある」=「勉強ができる」という単純な見方をするのも危険ですから、学歴はあくまでも指標の一つとして見るべきでしょう。

 敢えて言いますが、私は「貧乏人や無能ほど学歴を持っておけ」と考えます。学歴を重視しない社会を想像してみてください。学歴に変わり重要視されるのは「経験」です。海外留学して語学力がある、学生時代にビジネスをしていた、など、より上質な「経験」が求められます。

 しかし、「経験」を得るのに必要なのは「財力」です。留学したりビジネスを起こすには、少なくないお金がかかります。「幼少期から様々な経験をしてきた」と自慢げにいう人がいますが、そういう人は大抵、たまたま実家が裕福だっただけです。

 「学歴を重視しない社会」は今以上に「財力」がものをいう社会になります。差別を解消しようとした結果、今以上に格差の広がる社会になりかねません。反対に、学歴社会ほど平等なものはありません。勉強さえできれば良い大学に入れるし、大企業に就職できる訳ですから、スタート地点が悪くても挽回できます。

 もっとも、政治家や官僚を見ていると、東大卒の、「勉強だけできるアホ」が大勢いるので、学生の皆さんには、学歴のためではなく、自分の人生を豊かにするために勉強をしてほしいものです。

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