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入社式直前の内定辞退に企業は悲鳴――君たちは誠実だったのか?

 明日から新年度が始まり、新社会人の皆さんは来る入社式に向けて緊張しているのではないでしょうか。学生の頃は「社会人」というとまるで完璧な大人で、自分たちとはかけ離れた存在だと思ってしまうものですが、一度なってしまえばどうということはないと気づくはずです。

 考えてみれば、学生時代に「こいつらどうしようもないなあ」と思っていたアホな同級生も、みんな揃って社会人になるのですから、社会人になったところでそうそう本質は変わりません。大人もまあまあアホですから、過度に不安になることはありません。

 さて、企業側がこの時期に最も恐れるのは、入社直前の「内定辞退」です。入社に向けて準備していたのは学生だけではありません。受け入れる側も備品やスケジュール調整、配属先など、少なくないお金をかけて準備を進めています。その矢先に「内定辞退」のメールを貰った日には、「もっと早く言ってくれよ」と思うのも無理はありません。

 先日、上場企業の採用担当者を称するアカウントが、入社式直前の3月22日に内定を辞退するメールをもらい、「こんな大切なことをメール1通で済ませられたことが重くのしかかる。怒りを通りこしてあきれてしまう。顔にドロをかけられたような気分だ」と投稿し、話題になりました。

 彼の言い分もわからないことはありませんが、今は学生数に対して求人数の方が多い「売り手市場」なのですから、学生側にあらゆる意味で有利になるのは当然です。むしろ、メールを一通出してくれただけマシで、当日急に連絡がつかなくなったり、退職代行サービスを利用されるケースもあります。

 企業側が学生に誠意を求めるのなら、逆に企業側が有利になる就職氷河期に、企業は学生に対して誠実に対応していたのでしょうか。全く違います。学歴や性別による「足切り」で、請求した資料が送られてこない。学生にストレスをかける圧迫面接。不採用の場合は「お祈りメール」があればいいほうで、音沙汰がないこともよくありました。
 そういえばコロナ禍が始まったときに「内定取り消し」を行った企業がありましたが、そういうときはメール一本で済ませたりしてないでしょうか。

 このように、学生たちが苦労している時期に誠実に対応してこなかった企業が、自分たちが多少理不尽に晒されたからといって、怒りを感じる資格があるのか微妙なところです。

 勘違いしがちですが、企業に雇われるというのは一対一の対等な契約であり、そこに法的な上下関係はありません。内定辞退した学生に対して「失礼だ」と思うのは結構ですが、自分たちが学生たちに失礼なことをしていないか、過去を振り返ってほしいものです。

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