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アメリカ臨床留学への道④:留学先決定〜渡米まで

現在アメリカで外科医として勤務してます。まだ半年ほど経っていないので成功している訳ではありませんがこれまでの過程について紹介しますので海外留学をお考えの方の参考になれば幸いです。
アメリカでのトレーニングを続けていく上でポジションを獲得するまでは経済的な問題が一つ大きな悩みの種です。もし参考になりましたらサポートいただければ幸いです。

=留学先決定後に必要なもの=
今回は留学先決定〜渡米までの過程についてお話しします。USMLEを受験する前はSTEP1が一番のハードルだと聞いていましたが、USMLE合格後は留学先を探すこともまた一つの大きなハードルです。やっと留学先が決まったと思ったら今度は色々と手続きや書類などまたまたハードルが続きます。そして実際渡米すると…実際に働き出すと…この繰り返しです。今振り返って言えることはUSMLEはただの目的地までの最初の乗車券といった程度で、そこから目的地へ辿り着くまでの過程にはまだまだいくつもの困難が待ち受けているということです。当然ですがこちらで働いている医師はすべからくUSMLEをパスしています。その中で生き残っていこうとする訳ですから次のステップに目を向けていかなければなりません。

話が逸れましたが、実際に留学先が決まっても大まかに言って2つのことをクリアしないと実際に渡米できません。一つはビザの取得、もう一つはライセンスの取得です。

=ビザについて=
ビザは留学先の病院によってサポートしてくれるビザの種類が異なります。よく聞くのはのはJ1ビザ、H1-Bビザ、Oビザなどですがそれぞれ条件が異なります。ちなみに私はH1です、J1より良い点は最大6年間アメリカに滞在できることとH1ビザ特有の2 years ruleがないことです。ビザの種類や厳密なルールについては適当なことを書けませんので、必ず自身で公式のHPを確認されることをおすすめします(https://www.uscis.gov/working-in-the-united-states/temporary-nonimmigrant-workers)。もし留学先がJ1しかサポートしてくれない場合はどういうデメリットがあるかを理解した上で手続きを進めていかなければなりません。ビザ取得のプロセスは留学先の病院が手続きを手伝ってくれるのですが、ここに大きなpitfallがあります。留学先の秘書や事務員の能力によってスムーズに進む場合と全くスムーズに進まない事もあります。私の場合は残念ながら後者でした、そして多くの日本人留学経験者が同様の印象を持っていると思います。私が学んだことは、返信が遅い場合は1週間以上は待たずに必ず確認のメールを入れること・メールで連絡する際は必ずCCにfellowship-directorなどの上司や責任者を加えることです。ビザ取得にあたっての必要書類は病院やビザの種類によって異なると思いますが多くの場合はCVやself-photoなどに加えてdiplmoma/degreeのコピー・大学時代の成績のコピー・医師免許や専門医免許のコピー・パスポートのコピー・過去にビザの取得経験があればそのコピー・EAD(employment authorization document)・I-797などです。EADやI-797は病院が用意してくれます。私の場合は医学生時代に2ヶ月ほどアメリカに留学経験がありその時にビザ取得履歴があったため提出しました。古いパスポートも必ず手元に置いておきましょう。また家族とともに渡米する場合は家族にもビザを取得してもらわなければならないので家族のパスポートや婚姻証明書・出生証明書なども追加で必要になってきます。当然ですがどの必要書類も英語で準備する必要がありますので早め早めに申請する必要があります。特に時間が掛かるものは医師免許の英訳です。これは厚労省が無料でやってくれるのですが約3ヶ月ほど掛かります(厚労省の当該部署に問い合わせたところ最大で半年程度かかるという説明でしたが実際は3−4ヶ月だったように思います)。参考にURL(https://www.mhlw.go.jp/content/000819025.pdf)を載せておきます。もし女性医師の方で結婚後に名前や本籍が変わったにも関わらず医師免許の書きかえを行っていない場合などはまず医師免許の書き換えに数ヶ月〜半年の時間を要しますのでパスポートと一致した名前の医師免許の英訳を取得するのに1年ほどの時間が掛かることになりますので要注意です。ですので医師免許の英訳については留学先が決まるや否や、もしくはフライングぐらいのつもりで取得する方が良いと思います。専門医の英訳についてはそれぞれの専門医機構にお願いすればOKです。MDやPhDなどのdiplomaについては各大学の学生課にお願いすればOKです。婚姻証明書は出生証明書については民間の翻訳サービス会社にお願いしましたが問題なかったようです。

必要書類が揃い留学先の病院に提出したら留学先からI-797が送られてきます。これをもとにアメリカ大使館(東京または大阪)へ予約を取って面接をいき、パスポートを預ければ数日後にはビザが貼り付けられたパスポートが手元に戻ってきます。アメリカ大使館については私は大阪寄りに住んでいましたが東京まで行きました。その理由は東京のアメリカ大使館の方がビザ発行までの期間が短いからです、これに関しては大使館のHPにも東京の方が早く発行できますと書いてありましたのでご自身の時間的猶予に合わせて選択されると良いかと思います。ビザが届いたらようやく渡米可になります、ここまで到達するのには本当に一苦労でした。

=ライセンス取得について=
ライセンス取得というと「???」となるかもしれません。既にECFMG certificateを取得しているとは思いますが、ECFMG certificateだけでは実際には働くことができずできず州ごとのライセンスを取得して初めて医療に従事することができます。これは州によって条件やプロセスが異なると思いますのでそのルールに則って申請を進めていくしかありません。一つ苦労したのはcriminal backgroundのチェックです。両手の指紋(Fingerprint)を提出する必要があるのですが、日本でも留学や海外の就労のためにFingerprintを採取してくれる民間会社があるためそこで予約を入れて採取しました。FD-258カードといった適切な形式に指紋を印刷して送る必要がありますので注意が必要です。私はFingerprint Room Japan (https://www.fingerprintroomjapan.co.jp/)という会社のサービスを使用しました。これをEMSでアメリカに送るのですが、必ず追跡をして、到着していることが確認できたら担当者に受け取ったかどうかを確認する旨をメールを送りました。

他にも留学先の病院や州によって色々と求められるものが違うかもしれませんが、このように留学先が決まっても実際に渡米するまでにはいくつものプロセスをクリアしていかなければなりません。次回は実際に渡米してからのエピソードを少しずつ書いていきます。まだまだ苦労は続きますがアメリカで臨床医として働き出すという、大きな一歩を踏み出せる喜びは何にも変えがたいものがあります。


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