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ひっぱられる

演劇には遠心力があるのだ。
しみじみそう思う。

一度触れてしまえば
ぐるぐる回る銀河鉄道にでも乗ったかのように
降りることが難しくなる。
大体次の停車駅がどこなのかさえ不明だ。

でもこの鉄道の友人となり
永い旅を続けていきたいと願うのならば
時刻表と路線図に
誰よりも精通しなくてはならない。

身を捧げ、鉄道そのものとなる
あるいはもはや、宇宙そのものとなる
そんな生き方は
わたしはもう選ばないからだ。

わたしには
この地球での生活がある。
大切な家族と友人がいる。
家の掃除と料理と
汗を流す仕事と子ども達と遊ぶ仕事がある。

わたしの骨格と本体は
ここにあるのだ。
遠心力に振り回されるわけにはいかない。

遠心力に振り回されるならば
俳優としての本番においても
緊張の波
ネガティブの波に
飲み込まれてしまうだろう。

銀河鉄道の旅において
もっとも大切なのは
自己を律することである。
精神の鋼のような強さである。

したたかに。
冷静に。

続けていくために
可能なことだけをするのだ。

演劇は夢ではない。
こんなにもリアルでギリギリで
俳優の存在は確保される。

現実的に、もっと現実的に。
そうすることで、何かが可能になる。
そうすることで、ファンタジーの種が生まれる。

現実とは
ファンタジーの別の名前なのだから…

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