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わたしに出来ること

準備がすべて終わって、あとは本番を待つばかりだ。
こんなに時間をかけさせてもらえたこと、はじめてかもしれない。
心が穏やかだ。

母は、悔やんではいないかと心配だった。
道を誤ったのではないか。
もっと他に、助ける方法があったのではないかと。

芝居の稽古を通して、母は死んだのだとわかった。
悩んでも上手くいっても、もう話すことは出来ないこと。
母はもうこの世にはいないこと。
母といた時間は、すでに過去であること。
時間は決して元には戻らないこと。

頭ではわかっていても
全然受け入れられていなかったことが
芝居を通して
身の内に染み通っていった。

お母さん。
わたしは大分頭がしっかりしてきたよ。
あの時は、死ぬかと思った。
仲が良すぎて、辛すぎたよ。
でも生きていてよかった。
お母さんの一番して欲しかったことを
これからするよ。

生きている間に、わかってあげなくてごめんね。
わたしのことを誰よりもわかっている
あなただからこそ
わたしの本質をずっと見抜いていた。

わたしは芝居を愛している。
そのことに今一点の曇りもない。
お母さんに話しかけるように
お客さまに話しかけたい。

お母さん、最後まで立派な背中を見せてくれて
ありがとうございました。
わたしはわたしに出来ることを
しますね。

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