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【遺産分割協議】非協力的な相続人がいるとき

私は2023年5月に東京都で行政書士を開業しました。開業といっても副業行政書士としての開業です。今回は非協力的な相続人がいるときに利用する遺産分割協議証明書について記事にまとめていこうと思ってます。


遺産分割協議証明書って何?

遺産分割協議証明書とは、遺産分割協議を行ってどのような内容で合意したのかを証明する証明する文書です。それぞれの相続人が単独で1通の書面に署名押印した書面になります。遺産分割協議書との最大の違いは遺産分割協議書は合意した内容を相続人全員が1通の書面に署名押印しますが、遺産分割協議証明書は相続人ごとに書面を作成して署名押印します。

■遺産分割協議書→相続人全員が1通の書面に署名押印
■遺産分割協議証明書→相続人が単独で1通の書面に署名押印

遺産分割協議についてはこちらの記事をご覧ください。

遺産分割協議証明書にした方がいい場合

①相続人が多い場合

・遺産分割協議書は1通の書面に相続人全員の署名押印が必要になります。たとえ相続人が10人いると、1通の書面に10人がサインが必要ですがそれだけでも大変です。サイン以外に押印も必要です。また協議書を作って、郵送などで回している途中で紛失したり、棄損したりする恐れもあります。
・それに比べて、遺産分割協議証明書は各相続人が1人で作成して署名押印するので同時に作業もできるので署名押印も容易になります。

出典:弁護士法人デイライト法律事務所HP

②相続人同士が遠方に住んでいる場合

・相続人同士が近所に住んでいれば、回覧板のように書面を回したり、全員で集まって署名押印できますが、遠くに住んでいる場合、集まることは容易ではありません。そうすると署名押印したものを郵送することになりますが、非常に時間がかかったり、郵送している間に紛失したりする恐れがあります。
・遺産分割協議証明書は各相続人が1人で作成して署名押印するので郵送も一回の往復で済むので時間の短縮を図ることができます。

③非協力的な相続人がいる、すぼらな相続人がいる場合

・遺産分割協議書の場合、非協力的な相続人がいたり、ずぼらな相続人がいるといつまでたっても遺産分割協議書が完成しなくなる可能性があります。
・遺産分割協議証明書は相続人ごとに作成できるので、非協力的な相続人やずぼらな相続人は後回しにしたり、その間に協議をしたり、並行して作業を行うことができます。

遺産分割協議証明書の作成の流れ

①遺言書の有無の確認
②法定相続人の調査
③相続財産の把握
④相続人全員での遺産分割の話し合いと合意
⑤合意した内容を遺産分割協議証明書に記載
⑥それぞれの相続人が遺産分割協議証明書1通ずつに署名、実印の押印、印鑑証明書取得する

①~④までは遺産分割協議書の作成と同じです。⑤~⑦が遺産分割協議書とは少し違う対応になります。

ひとつずつを見てみましょう。

①遺言書の有無の確認

遺言書があっても相続人全員の同意があれば、遺言書とは異なる内容で遺産の分割をすることができます(民法908条)。ただし、遺言書があれば、その内容に従うべきだという相続人の方もいるかもしれません。まずは遺言書の有無を確認しましょう。

②相続人の調査

遺産分割協議書は相続人全員の合意、署名と押印が必要です。この全員というのがポイントです。例えば、亡くなった方に離婚歴があり、前妻との間に子供がいたり、亡くなった方が独り身で且つその方の両親も亡くなっていて、兄弟姉妹が相続人の時は複雑な相続になります。兄弟姉妹全員が存命でしたらまた良いですが、兄弟姉妹がすでに亡くなっており、その子が代襲相続していると相続人がさらに増えます。また、相続人に認知症の方がいますと、そもそも遺産分割協議書はできなくなります。

③相続財産の把握

・預金、不動産、株券、投資信託、貴金属、自動車、そして負債などを確認しましょう。
・預金は生前にある程度、確認できていることが多いと思いますし、金融機関に照会をかければ他に口座がないか確認してくれます。
・不動産は自宅については分かりやすいと思います。アパートや駐車場を経営している場合は相続人も把握できていると思います。また、不動産を所有している場合、固定資産税納付書が届いていると思いますので、そちらで確認することもできます。
・株券や投資信託は証券会社などから書類が届いていると思いますのでそちらを確認しましょう。ただ最近では書類を紙ではなく、電子化して渡す場合も多くなってきていますので、紙としてはない場合も増えてきています。
・ローンや負債なども返済表など届いていると思いますのでそちらを確認することもできます。

いずれにしても普段から家族の財産を把握できるようにしておくことが大事ですね。

④相続人全員での遺産分割の話し合いと合意

・相続財産の把握ができたら、家族で誰がどの財産、そして負債を相続するのか話し合いましょう。なお、遺言書に財産の分配に関して書いてあっても、その通りに財産に分ける必要はありません。また、法定相続分という分け方もありますが、その通りに財産分配する必要はありません。


⑤合意した内容を遺産分割協議証明書に記載

・合意した内容を遺産分割協議証明書に書きましょう。遺言書と違い、パソコンで作成しても有効です。遺産分割協議証明書の書き方は以下の内容になります。
・題名に「遺産分割協議証明書」と書く
・亡くなった方の氏名、本籍、最後の住所地、生年月日、死亡年月日を書く
・全ての相続人の氏名を書き、全ての相続人が遺産分割協議を行い、その結果、その相続人がどの財産を相続することを合意したかを書く

⑤相続人それぞれが署名、実印の押印、印鑑証明書取得

・相続人一人一人の遺産分割協議証明書ができたら、遺産分割協議証明書のプリントアウトして、相続人一人一人がそれぞれ遺産分割競技証明書に署名、実印の押印、そして印鑑証明書を添付すれば遺産分割協議証明書の完成です。その遺産分割協議証明書を人数分集めます。なお、遺産分割協議証明書が複数枚に渡る場合、割印や製本して割印することが必要です。少し面倒な作業ですが、遺産分割協議証明書は法的な効力のある書類なので、適切に作成しましょう。

遺産分割協議証明書の作成する時のポイント

①相続人全員の合意は必要
一人でも遺産分割協議証明書を提出しないと契約成立しません。遺産分割協議書は一人でも合意しないと成立しませんが、その点では遺産分割協議証明書も同じです。いずれにせよ、相続人全員の合意が必要であることは注意しましょう。

②捨て印を押してもらう
遺産分割協議証明書に捨て印を押してもらいましょう。捨て印があれば、書類の中に万が一、誤りが見つかった場合に訂正印として扱えるので代表者が取りまとめする時に再度、遺産分割協議証明書をもらったり、実印を押してもらう必要がなくなりますので便利です。

③最新の日付が契約成立日
遺産分割協議証明書は一番日付が新しいものが契約成立日になります。

遺産分割協議証明書のサンプル

遺産分割協議証明書の具体的な作成例は以下の通りです。

出典:弁護士法人デイライト法律事務所HP

■全員分の遺産分割方法を証明する場合

出典:相続会議HP

■自分の取得する財産のみを証明する場合

出典:相続会議HP


最後までお読み頂きありがとうございました!

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