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ベランダの手すりに、鳩が止まった。
早朝の、冷えた日差しと鳩。
今日もいい一日になるなあ、と思っていたら、プリケツからフンをひり出した。
こんなに近くで、鳩がフンをひり出すところなんて見たことないので、やらせるままにする。
1回では終わらず、クルックーと2回、3回と続く。
無表情の鳩フェイス。テンポよくひりだされるフン、フン、フン。
鳩と目が合った。クルックーの首前後。鳩はわたしの存在を認識していないのか、脱糞が終了しても、まだ、いる。
クルックークルックーと、調子よく、淡い朝日の中にいる。
いつまでいるのかなあ、フンは取った方がいいよな、なんて考えていたら、ふっと飛び立った。
あ、行かないで。
ベランダに出て、鳩の姿を追う。が、彼方に行ってしまったようだ。
わたしは彼(彼女)の痕跡を見つめる。
朝日に照らされ、すでに乾き始めている等間隔の薄灰色のひねりブツ。
鳩って、何を食べるんだろう。
パソコンで検索してみる。
鳩は、基本的に雑食です。小さな草などの種や、木の実 などを餌として食べて育ちます。 小さい虫 や 人間の食べ物 や 食べかすなども食べています
ベランダにもどり、鳩は基本的に雑食かあ、と、薄灰色のひねりブツをみながら思う。
細長い部分は腸の太さと同じかな、灰色の部分は虫か、軟便だな、なんで3回に分けたのだろう、とか、日曜の晴天に考える。
──食べてみようかな。
寄生虫とか、いるのかな。
ハトの糞が危険なのは、糞に含まれる大量の病原菌や寄生虫、カビが病原菌になり大変危険です』
軟便の、白部分を人差し指で拭う。鼻に近づける。
カビのような腐敗臭。ねっとりと光る指をじっと見る。
灰色部をつまみ上げようとしたら、脆く崩れた。
人差し指と親指の匂いを嗅ぐ。臭い。うんこの臭いがする。
わたしは再びじっと、見る。
海を行く船が汽笛を鳴らす。トントンと進む貨物船。海が映す朝日の煌めき。
ためらうな負けるな、こういうところがダメなんだよ――。
わたしの中のわたしが、わたしを鼓舞し続けている、わたし頑張れ。

わたしはたわしを手にしている。
そして、フンの後始末をしている。
口にするどころが、食べるなんてこと、出来なかった。
負けた。今日も負けました。

『ピンク・フラミンゴ』のラストシーンで犬の糞を食べたアイツすごいな、と今更思う。
心に決めた食糞は、実行できるようになりたい。
そして、変態の幅をひろげたいなあと思った、晴天の日曜だった。

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