プロのプラカード 持ち スタッフ②
プラカードを持ってお客様のお店への案内業務をしている間、私は派遣会社からの言いつけを守り、携帯を見ず、見た目では音楽を聞かずに真面目にこなしていた。
見た目で音楽を聞かないとは、前回の投稿でも書いた通り、シャツの二の腕あたりに缶バッチに100均で買ったイヤホンを貼りつけ、その上にシャツやジャンパーを着て看板を持ち、そこに耳を押し当てて聴いていたものだから。
そこの所はプロとしての責任感と、プライドがあったのだ。
派遣先によっては、看板を持ちながらチラシを配る様にと依頼される。お店にお客様を案内したことが契約に結びついたという期待以上のことをしたことが評価されて、社員にスカウトされることもあった。
そんな私でも5年以上やっていれば通行人のリアクションが、もっと欲しくなる時がある。
通行人が通り過ぎ、30m ぐらい離れたタイミングで、その背中に向かって「おーい 」と叫ぶのだ。するとたいていはびっくりして振り返るので、その反応を楽しんでいた。
振り返られた瞬間私は、顔を伏せて 知らないふりをする。
看板を持つ私に注がれるなんとなく冷たい視線は私の被害妄想だと思い込もうとしたが、ストレスも積もってくると発狂してしまうのだ。
他の楽しみ方としては、やはり、通行人が通り過ぎたすぐのタイミングで「おにぃぃぃちゃん、 へんっ!」と自分を自虐して言うのだ。 ビートたけしさんの「なんだこの野郎!」 みたいに言う。
そうすると立ち止まって振り返ってくれる。
どこから聞こえてくるのかしら?と思っていたのではないのだろうか。
そして私は自分が言ったのではないよというように耳を押し当て音楽鑑賞をしてモチベーション上げてからチラシ配りを再開する。
私にクレームが来たことはない。
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