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#459 建築工事の不備はよく紛争になります

【 自己紹介 】

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【 今日のトピック:建築工事の不備 】

工事の不備は,しょっちゅう問題になります。

「工事」といってもいろいろですが,弁護士のところによく持ち込まれるのは,建築工事です。

「欠陥住宅」と呼ばれることもありますが,建築工事に何らかの不備があって,その不備のせいで建物に「欠陥」が生じていて,その「欠陥」をどうにかしたい(施工業者に修理してもらいたい,施工業者は信用できないから他の業者に修理は依頼するけれどもその修理費用は負担してもらいたい),というのが,よく持ち込まれます。

さて,こういった建築紛争は,かなり大変な事件になることが多いのですが,今日は,先ほど書いた,「欠陥をどうにかしたい」という要望が,法的には,どのような根拠に基づいているのかについて,少しだけお話します。

今僕が話そうとしているのは,「欠陥住宅」の中でも,新築する場合を指しています。

そもそも,住宅って,新築する場合と,既に建築済みの住宅を購入する場合の2つのパターンがありますよね。

新築する場合は,建築業者(「ハウスメーカー」と呼ばれることもあります)に対し,住宅の新築工事を発注しますが,この「発注」は,法律上,「請負契約」と呼ばれています。

建築業者と交わした契約書にも,「建物建築工事請負契約書」と書いてあることが多いです。

これに対し,既に建築済みの建物を購入する場合は,「売買契約」です。

請負契約にせよ,売買契約にせよ,手に入れた住宅に住んでみたら欠陥があった,ということは,どちらのケースでもあり得ます。

実は,去年の3月31日までに契約を交わした住宅については,売買契約か請負契約かで,適用される条文が違っていました。

どちらも「瑕疵担保責任」と呼ばれていたのですが,同じ言葉なのに,売買契約と請負契約で,その意味するところが違っていたのです。

まあ,正直なところ,売買契約だろうが,請負契約だろうが,「瑕疵(=欠陥)」があれば,その修理費用を相手に請求できるのは変わりないので,欠陥住宅の場合に,「売買」なのか「請負」なのかで結論が大きく変わることはないと思います。

ただ,去年の4月1日以降に契約を交わした場合は,適用される条文が完全に一致するようになりました。「瑕疵担保責任」という言葉もなくなり,新しく,「契約不適合責任」というワードが登場しました。

ま,言葉が変わっても,内容は同じです。

民法が改正される前,「瑕疵」をどうやって判断してきたかというと,まずは契約書を見るんです。

請負契約の場合であれば,契約書どおりに建築されているかを見て,契約書どおりにされていないのであれば,それが「瑕疵」と考えられていました。

今は,「契約不適合」という言葉に変わったので,「契約どおりではない」ということが,よりストレートにわかる言葉遣いになっています。

よりストレートに意味合いが伝わるように言葉遣いを変えただけで,内容自体は変わっていません。

ただ,「契約書どおりかどうか」で判断できないこともしょっちゅうです。契約書に書かれていないこともたくさんあるので,実際に行われた工事が,「契約書どおりかどうか?」を必ず判断できるとは限りません。

そうなると,次に出てくるのが「常識」というやつです。

「常識的に考えて,~の工事は〇〇とするべきだよね。にもかからず,実際に行われた工事は××だった。だから,瑕疵がある。」と考えるのです。

「瑕疵」という言葉が,今は「契約不適合」に置き換わっただけです。

そうなると,「契約不適合」という言葉は,少し不正確かもしれません。だって,「契約」に適合しているかどうかだけでなく,「常識」に適合しているかどうかも,考慮するからです。

契約では決められないのであれば,常識に照らして適切な工事だったかどうかを判断する。

これが,「瑕疵」で,今は「契約不適合」と呼ばれているモノの正体です。

売った住宅に「瑕疵(契約不適合)」があれば,売主はその瑕疵(契約不適合)の修補費用を負担しなければなりません。

建築した住宅に瑕疵(契約不適合)があれば,注文を受けた建築業者は,その瑕疵(契約不適合)の修補費用を負担しなければならないのです。

ここが,いちばんのモメどころです。

瑕疵(契約不適合)があるかどうか,というところが一番モメます。

大切なのは,一般的な「欠陥」のイメージと,「瑕疵(契約不適合)」が微妙にズレていることです。

例えば,雨漏りです。雨漏りは,欠陥住宅の典型例ですが,雨漏りがあることだけで,「瑕疵(契約不適合)」は認められません。

まあ,住宅を新築し,住み始めた途端に雨漏りが発生したのであれば,建築工事に「瑕疵(契約不適合)」があるのは明らかではあるのですが,とはいえ,雨漏りだけで「瑕疵(契約不適合)」として充分ではないのです。

雨漏りの原因を特定しなければならなくて,例えば,屋根がズレているとか,一部防水シートが貼られていない部分があるとか,そういった,「雨漏り」という欠陥の原因を特定して初めて,「瑕疵(契約不適合)」を主張できるのです。

この「特定」作業が,めちゃくちゃ大変です。

それと,もう1つ争われるのが,修理費用の金額です。

そもそも,一言で「修理」といっても,修理の方法も複数パターンあり得るわけです。

例えば,新築工事を発注した側としては,欠陥のある箇所を含めて,全部キレイに修理してほしいと考えますが,これに対して,建築業者側は,欠陥のある箇所のみに手当てすればいいと反論します。

そうすると,そもそもの修理方法に折り合いがつきません。修理方法の主張が食い違っているのですから,修理費用がまるで違います。

そして,修理費用について折り合いがついたとしても,その金額も争われます。

どれくらいのグレードの材料を使うのかとか,修理費用に含まれる人件費はどれくらいが適切なのかとか・・・・

「修理」という言葉には,いろんな内訳が隠れているのです。

欠陥住宅の紛争は,複雑で難しくなることが多く,長期化は避けられないと思っていいでしょう。

【 まとめ 】

欠陥住宅にまつわる紛争の場合,

・「瑕疵(契約不適合)」があるかどうか

・修理方法はどうするか

・修理費用はどれくらいか

と,大きくわけて3つの点が大きく問題になると思います。

住宅は,なくてはならないモノなので,感情的な対立も激しくなります。購入した側も,これから毎日住む家ですから,簡単に譲歩するわけにはいきません。

建築業者側も,欠陥を理由にお客さんからお金が入ってこないと,経営が非常に苦しくなるので(建築業者は,下請け業者への支払いに追われているので,基本的に自転車操業です),こちらはこちらで大変なのです。

あくまで僕の個人的な意見としては,住宅を「所有」するから,欠陥住宅が紛争になるので,住宅を所有するべきではないと思っています。

ずっと賃貸物件で暮らし続ければ,何か問題が起きたときに引っ越せば住むので,非常にリスクが少ないです。

こんなことを言ったら元も子もないのですが,とはいえ,「所有」によるリスクを甘く見てはいけないと思います。

それではまた明日!・・・↓

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