Luno企画

創作チーム「Luno企画」です。 ・小説 ・漫画原作(商業化作品は記事にて紹介) h…

Luno企画

創作チーム「Luno企画」です。 ・小説 ・漫画原作(商業化作品は記事にて紹介) https://note.com/lunoimago/n/n6d7a73e488f7

マガジン

  • まつりのあと

    突然の、父の死 喪主となった晴菜には、ある秘密が託された やってきた女 やってきた男達 明かされる秘密の「どれが本当の真実」なのか 父さん 本当に貴方は 最期まで勝手な人でしたね バラバラになっていた家族が集い 「あの頃」と「今」 かたちがあった時には見えなかった思いに触れながら 晴菜は託された秘密の行き先を模索する 使用画像 マガジンヘッダー:ぱくたそ様 各話ヘッダー:みんなのギャラリー/kesano_sora様(https://note.com/kesano_sora/) 作:月下 遊魚(つきもと ゆうな)/luno企画

  • 宿災備忘録 ー 空 薄鈍、そののち

    生まれながらに災厄を身に宿した存在【宿災】。その運命に生まれた少年と、ともに生きるもの達の物語。短編集。 ≪ 章 ≫ ・壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺 ・弐 ― 風、凪いだ朝の木立 ・参 ― 雨、雪溶かす春の調べ ・四 ― 風、水面に走る時の轍 ・五 ― 雨、待ち侘びる日の午後 ・六 ― 雪、積もる白と泡沫の夢 ・七 ー 陽、朧雲向かう先に 使用画像 ・壱/みんなのギャラリーより/スナフ様(https://note.com/snafu_2020/) ・弐/みんなのギャラリーより/alexandre_141様(https://note.com/alexandre_141/) 作:月下 遊魚(つきもと ゆうな)/luno企画

  • 自己紹介 Luno imago

    わたしたちのこと。 ※2023.7.22 埋もれた企画掲載開始

  • 宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節

    槙 深遠(まき しんえん)は、時の流れの異なる空間を往来しながら結界の修復を続ける【脱厄術師(だつやくじゅつし)】。主従関係にある鷹丸家の娘、維知香は、その身に災厄を宿す【宿災(しゅくさい)】として生まれた。 脱厄術師は宿災の守護とされ、深遠は維知香に宿災としての【在り方】を教え、見守りながら自らの任をつとめていた。 維知香は幼き日より深遠に恋心を抱き続けるが、深遠は維知香の思い、そして自分の本音に気づきながらも独りであろうとする。 自らの任と愛する人―― ふたつの間で逡巡する思いは、どこへたどり着くのか。 抗えない時の流れの中、一途な思いを抱く者達の四季を描く、恋愛ファンタジー。 著者:月下 遊魚(つきもと ゆうな)/luno企画

  • コーディネーターはスワンボートに乗って

    柾木博美(まさき ひろみ)、25歳、男。金、夢、希望なし。  ある日目覚めると、スラリとした男が傍らにいた。体は人のカタチ、しかし顔は、まるでヒヒ。当然驚くマサキ。どうしてこんなヤツと一緒なのか思い出せない。理解できたのは、どうやら異世界というやつにきてしまったということだけ。  謎の存在はマサキに仕事を手伝ってくれと言う。自分が生きてきた世界とは全く異なる場所で、どう見ても純粋な人間ではないモノ達と働く……なんでこんなことに、と思いつつ、【前にいた世界】の自分より、少しだけ前を向けていることに気づき始めるマサキ。そして「どうってことない俺の意見」が周りに笑顔を咲かせていく。 世界を変えるヒーローにはなれないけれど、自分の世界は変えられる。 ほんの少しだけ前を向きたい誰かに送る、異世界への旅。 著者:薄暮 繊月(はくぼ せんげつ)/luno企画

最近の記事

まつりのあと:2_③

 ウイスキーでいい気分になった頃、客が数人やってきた。私と浩太はカウンター裏にある台所に移動し、そこで宴を続けた。  食事用のテーブルに、向かい合って座る。店内とは異なる匂い。浩太の家の匂いだ。懐かしくて、落ち着く。顔が勝手に、ますます緩んでいく。 「ああ……夢が現実になったわ」 「夢?」 「ママが店で辛口マシンガントークして、おっちゃんらが大笑いして、それを聞きながら浩太と酒を飲む。高校の時、大人になったらそういうのがしたいって思ってた」 「ちっせえ夢だな! まあ、叶っ

    • まつりのあと:2_②

       アルコールを飛ばす目的で母校に足を運んだ。奈美の店からは一キロほど。自動販売機で買った水を飲みながら、真子と並んで、ゆっくりと歩いた。  高校の校舎は、鉄筋コンクリートの四階建て。老朽化で、来年には建て替えが始まるらしい。今見ておかないとなんて、微かなセンチメンタリズムが浮上する。 「部室もなくなるんだね……もう入ることもないんだけどさ、寂しいね」  校舎の西の端を見上げる。真子は頷いて、私の手をぎゅっと握った。余りに懐かしいシチュエーションで、うっかり笑いを零してし

      • まつりのあと:2_①

         目覚めると、真子からのメッセージがスマートフォンに届いていた。夕べ電話をしたけれど、真子が鼻をすすり始めたから、すぐに会話を終えた。  メッセージの内容は、夕べの謝罪と、ランチのお誘い。今日も弔問客があるかもしれないけれど、家の鍵は開けっ放しで構わない。客も、私に会いにくるわけではないし。  叔母は、いつまで家にいるのかわからない。いればそれなりに対応するだろうし、帰るのなら、さっさと帰れ。  真子に返信し、喪服ではない黒の上下で一階へ降りた。叔母はまだ起きておらず、

        • 弐 ― 風、凪ぎの朝に問う・3

          「変わりはないか?」 「はい。貴方もお元気そうで、なによりです。こちらには、いつまで?」 「用事を済ませたらすぐに」 「奥方様への手土産をお買いになる?」 「先に、先代に挨拶を」  男は次の言葉を紡がず、灯馬もまた音を止めた。杉の葉が囁きを上げ、男の視線を奪う。  目の前で、杉の木立を眺める男。男の面立ちに、灯馬は少年を重ねた。よく似ている。否、よく似てきた。軽やかになびく黒髪。物憂げな、しかし意思の強い目元。無愛想に閉じられた口元は、正に生き写し。 「あそこなら、街が

        まつりのあと:2_③

        マガジン

        • まつりのあと
          7本
        • 宿災備忘録 ー 空 薄鈍、そののち
          10本
        • 自己紹介 Luno imago
          6本
        • 宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節
          68本
        • コーディネーターはスワンボートに乗って
          105本

        記事

          弐 ― 風、凪ぎの朝に問う・2

           有為転変。それが世の中の常。 (移り変わる事すら夢のまた夢……)  灯馬は自分の両手と向かい合った。どれほど永い間、この手を自分の手として認識しているのだろう。  変わらない  白い布からはみ出した指先。伸びない爪。刻まれない皺。この体は老いに嫌われ、人目に映らず、【生きている事】を実証できない。身が果てるという、ごく自然な、生物に等しく与えられた権利が、自分には夢にすらなりそうにない。大切な人がひとり、またひとりと世を去る。それを傍観し、寂しがるも空しく、ただ

          弐 ― 風、凪ぎの朝に問う・2

          弐 ― 風、凪ぎの朝に問う・1

           揺らぎ。その現象を起こさない存在は、目覚めを迎えたばかりの街を見下ろしていた。  冬は夙めて。そう詠んだ人は、かつてこの街で生き、今とは全く異なる景色を眺めていたのだろうか。そんな思いを巡らせながら、風と雲の戯れに目元を緩める。 「おはようございます」  言葉を返さないモノ達に挨拶を届けた後、白い輪郭は杉の木の高い位置を目指して宙に舞った。  木の天辺にしがみついた葉に遠慮し、程よく距離をとった枝に腰を下ろす。それでも視界は充分保たれ、視線の行く手を阻む物はない。

          弐 ― 風、凪ぎの朝に問う・1

          作家のPCに埋もれている企画を掘り起こす③

          管理人、十日夜です。タイトル通りの記事第三弾です。第二弾からだいぶ間があいてしまい、反省しきりです。 今回は、月下氏のPCから掘り起こしました。 企画ではなく長編小説です。 (埋もれていた理由は「ファンタジーじゃないから」とのこと) ファンタジーではなくとも、管理人は気に入っています。 マガジンにまとめてまいりますので、リンク先よりどうぞ! ■ 執筆にあたり勝手にイメージソングとして聴いていた楽曲の紹介 ■ 自己紹介、埋もれ企画掘り出し等は下記リンクより ■ 各マガ

          作家のPCに埋もれている企画を掘り起こす③

          まつりのあと:1_④

           女性と少年は玄関に入り、戸を閉め、もう一度私に頭を下げた。 「お線香を……あげても、よろしいですか?」 「はい」 「息子も一緒に、よろしいですか?」 「勿論です。どうぞ、お上がり下さい」  二人を茶の間に招き入れ、私は台所へ。来客用の茶を淹れ、静かに茶の間へ戻る。  仏壇の前に二人は並んで座り、父の遺影を見上げていた。小さなすすり泣きは女性のもの。少年は咳き込み、鼻をすすって、学生服の袖で目元を拭った。  鈴の音が消え入るタイミングで、私は二人の背中に言葉を飛ばした

          まつりのあと:1_④

          まつりのあと:1_③

           家に戻ったのは、私と、ごく少数の親戚。そして加島の一団。叔母は加島に笑みを見せて挨拶をするも、男達が野太い声を上げると肩をびくつかせ、少し休むわ、と客間に消えた。しばらく出てこないだろう。助かる。  座敷に長机を並べ、座布団を敷き、一団は整然とそこに座った。私は、準備の一切を手伝わずに済んだ。加島が「おい」と言っただけで、リーダー格と思われる中年の男が場を仕切り、瞬く間に【会場】は整った。 「晴菜さん、どうぞ」  リーダー格の男は、私に加島の対面に座るよう促した。けれ

          まつりのあと:1_③

          まつりのあと:1_②

           座敷と奥座敷を繋げた二十畳のスペースに、弔問客は入りきらなかった。縁側を解放し、廊下に隣家から借りた座布団を敷き、それでも息苦しさが見て取れた。父の人脈には今更驚かない。ただ、本気の涙を見せる人がいることに驚いた。  その中のひとりが、なぜか気になった。女性。母よりは若く、私よりは確実に年上。黒髪のセミロング。小柄で華奢。隣には学生服姿の少年。息子だろうか。うつむいているから、顔はよく見えない。  気になったのは、女性が号泣しているからという理由ではなく、一種の予感のよ

          まつりのあと:1_②

          まつりのあと:1_①

           今日はひとことも発したくない  目覚めを意識してすぐ、そう思った。酷く喉が痛む。唾を飲み込んだら、潤いよりも先に痛みを感じた。昨日、家中を支配した線香の煙のせい。タバコの煙は嫌われているのに、線香の煙には誰も顔を顰めたりしない。特段好きな香りでもないはずなのに。正直、私はあの「悲しそうに感じさせる香り」が、好きじゃない。  仏間には必須のアイテムだから、片付けられるはずもなく、やってくる人の数だけ煙の筋は昇った。今日はどれだけの線香が消費されるのだろう。私は名前と顔の一

          まつりのあと:1_①

          壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺・7

          「地上から零念が消えることはない。それほど人間は穢れている。それでもお前は、この世界を浄化し続けるのか?」 「はい」 「お前に宿る災厄全てを放てば、一時的だが浄化は進み、清らかな世界になる。お前も自由になる。その可能性を試そうとは思わないのか?」 「はい。全く」 「なぜだ?」 「失うものが大きすぎます」 「怖いのか?」 「否定できませんね」  交えた視線は互いの真剣さを伝え合い、相手が動く時を見逃すまいと、瞬きは訪れない。  少年の前髪。見間違いかと思う程の微かな動き。そ

          壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺・7

          壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺・6

          「災厄が私を離れて行く時、不思議な感覚を味わいました。ひどく淋しく、怖いんです。心……それとも魂でしょうか。うまく表現できませんが、自らの一部を引きちぎられるような……とにかく淋しかった、怖かった。離れるのは嫌だと思いました。いかないでくれと強く願いました。結果、ひとつの災厄だけが私の元を去り、数多の災厄はここに残りました」  灯馬の右手が胸元に向かう。少年は、その気配を逃さなかった。  音を止めた灯馬。雨音が空間を支配しかけた、その瞬間。少年は窓に背を向け、灯馬と視線を

          壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺・6

          壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺・5

          「果たして災厄だけなのでしょうかね、過剰な嫌悪感を抱いたのは……あの程度の零念、放っておいても問題ないでしょうに」 「せっかくの雨を穢されたくない」 「宿災の力は浄化の為のもの……先程は苛立ちが前面に出ていたと、私は思います。それでも災厄が力を貸してくれたのならば、それは貴方達の関係が友好である証拠なのですが」 「掟破りは、お師匠様に報告……か? 好きにしろ」  窓の外に視線を向けた少年。更なる一言は生まれ落ちず、強まった雨音が場を繋ぐ。 ーー 零念……あんなものが存在す

          壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺・5

          壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺・4

          「今宵の雨は元気が良いですね」  少年の中にある闘いに割って入った、灯馬の声。その言葉通り、雨音は闘いを煽るように音を強めた。  新しい年へと向かう冬の夜。窓の向こうの冷え切った空間は、雨に洗われながら朝を待ち侘びている。少年は、冷気が寄り添ったガラスに自分の姿を発見した。  目にかかる黒い前髪。意識的に無に戻したはずの口元は微かに緩み、うっかり言葉を生みそうになっている。夜に映る輪郭は黒いシャツを纏い、決してガラスに映り込まない存在を意識している。 「灯馬……お前は

          壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺・4

          壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺・3

           ひっそりとした室内。気配を伝えてくるのは、雨音とストーブの炎の揺らめきのみ。そこに潜んだため息を、少年は確実に捉えていた。このところ灯馬は頻繁にため息を漏らす。その原因が自分にある事を、少年は理解している。 ーー 俺なんて、ほっとけばいいのに……  胸の中に浮上した思いを伝えても、灯馬は従わないだろう。常にともにある事が務めだと、信じて疑わないから。  灯馬を【従者】と呼ぶ者もいる。しかし従うという文字が付いていても従わないのが灯馬という存在。まるで目付役。自分が半人

          壱 ― 雨、降りしきる夜の窓辺・3