【掌編小説】夜の交差点
「最近何か良いことあった?」
夜のスクランブル交差点で待っていると、若い女が声をかけてきた。僕と同じ大学生くらいで、トレンチコートが似合っているモデルのような女だ。知り合いかと思って見てみたら全然知らない女で僕はまた前を向いた。
信号は赤のまま。嫌だなぁ、何かの勧誘かな。色とりどりの夜の街の灯りを眺めて聞こえていない振りをする。
女は僕の隣に並ぶとこちらを見ながら、
「嫌だな、変な女に声かけられたわ。なんだよこいつ、宗教の勧誘?キャバクラの客引きか?」そう言って笑う。
「え