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映画「ドライブ・マイ・カー」が3倍おもしろくなる映画リスト!

映画「ドライブ・マイ・カー」が3倍おもしろくなる映画鑑賞リストです。
鑑賞前でも鑑賞後でも是非参考にしていただければと思います。
西島秀俊さん、三浦透子さん、岡田将生さんのフィルモグラフィから彼/彼女たちがこれまで演じた役や受けたであろう演出、関わったスタッフとの繋がりが「ドライブ・マイ・カー」という映画での演技に繋がっているのではないかと思えるリストだと思います。
特集上映では監督が特集されることが多いですが、ひとつの映画に出演されている役者それぞれのフィルモグラフィを辿って特集するのもなかなかおもしろいなと感じました。
観る映画の幅を広げたい方には特にオススメです。

西島秀俊

諏訪敦彦「2/デュオ」(1997)

今作で西島秀俊さんの役どころは同棲している彼女のいる売れない役者。私にはドライブ・マイ・カーの家福を彼が演じる上で今作での役の経験はすごく重要な位置にあると感じています。フィクションとドキュメンタリーを組み合わせて一つの映画を紡ぐ諏訪監督の作風を知らなければ初めて鑑賞したとき驚くかもしれません、けれど是非観て欲しい一作です。
ちなみに2019年には諏訪監督と西島秀俊さんは「風の電話」という映画で再びタッグを組んでおりこちらも国際的に上映されてドライブ・マイ・カーで西島秀俊が世界へ繰り出すにあたって重要な布石となったのではないかとも思っています。


黒沢清「ニンゲン合格」(1999)

「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督と東京藝術大学大学院時代に教授と学生の師弟関係を築き、「スパイの妻」では濱口竜介監督が脚本に携わりヴェネツィア国際映画祭にて銀獅子賞を受賞するという熱い関係がある黒沢清監督。
黒沢清監督がある時期にエドワード・ヤン監督から強い影響を受けすぎていたというインタビューでの発言はおそらくこの映画の時期に当てはまると思われる。
西島秀俊さんが現在の東出さんや高橋一生さんのような不気味さを身に纏っており、当時の西島秀俊という男はこういう風に演出したくなる役者だったのかなと感じます、この時期の西島秀俊さんは事務所わ移籍してテレビドラマに出演できない期間でした。そんな中で2/デュオとニンゲン合格と立て続けて演じ、自身がなりたい俳優の方向性を確実なものにしたんではないでしょうか。
ちなみに黒沢監督と諏訪監督のふたりは東京藝術大学大学院映画学科の教授として現在同僚です。
黒沢清監督とも2016年にクリーピーで再タッグを組み、その作品には脚本に池田千尋さんも参加している。

佐藤真「SELF AND OTHERS(2000)

同タイトルの写真家・牛腸茂雄の写真集を元にしたドキュメンタリー映画。ちなみに西島秀俊さんは出演はされていないのですがナレーションとして参加しています。実はこの写真集の写真を劇中で登場させたのが濱口竜介監督の「寝ても覚めても」です。また、こちらの撮影をされていた撮影監督のたむらまさきさんは諏訪監督「2/デュオ」の撮影も担当されてます。私は濱口監督と西島秀俊さんの関係性でこの映画の存在が一番気になります。
私個人がすごく大好きな映画でもあります。この映画何が凄いかと言葉にすることが難しいのですが、映画が終わっても自分が観ている映像や風景が生き生きとし始めて帰り道にどこまでもその映画が続いているような錯覚を私は起こしました。
この映画を見終わると外に出て自身のiPhoneででも映像を撮りたくなるような衝動というかこの瞬間を撮ることを逃してはならないという強迫観念を感じるまでになると思います。なぜそんなことになるかは説明つかないのですがたむらまさきさんの撮影や西島秀俊さんのナレーションと牛腸茂雄さんの視点によってすごくマジカルな時間を過ごせる映画です。

池田千尋「東南角部屋二階の女(2008)

おそらくこの映画と2011年の「セイジ」伊勢谷友介監督以降はストロベリーナイトとか、MOZUとかの世間にお馴染みの西島秀俊のイメージへとなっていくんじゃないでしょうか。
今作でもたむらまさきさんが撮影しており、2018年に他界されるまで西島秀俊さんと一緒になる映画はこれで最期になりました。
たむらまさきさんは元々ドキュメンタリーのカメラマンとしてキャリアをスタートして劇映画のカメラマンとしてキャリアを築いていきます。
西島秀俊という役者にとってのたむらまさきさんとの出会いはすごく大きかったと思われます。おそらくゴールデン街で西島秀俊さんとたむらまさきさんはたくさん映画について語り合ったんじゃないでしょうか。
ドライブ・マイ・カーの重要な場面で起こる長回しは彼がたむらまさきさんと何作も経験を積んできたからこそ発揮された演技だったのではないかと。そういった経験やこれまで出会った人との関わりがすべて繋がって生まれた演技なんじゃないかと私はそう考えてしまいます。

三浦透子

山中瑤子「おやすみ、また向こう岸で」(2019)

「あみこ」でPFFを制し、坂本龍一さんがニューヨークで鑑賞して激励した山中瑤子監督は、翌年テレビ東京の深夜ドラマ枠でこの傑作を撮りました。そしてさらに古川琴音、三浦透子というこの先10年は日本の映画界を支える逸材のヤングベストアクトをこの作品で撮った。濱口竜介監督がこちらの作品を観ているかわからないが、この作品の三浦透子は画面に映りながらも目の前のこととは別のことを常に思考しているようにみえ、それがラストで別の思考を働かせられない状況に立ち会うことがすごく効いている。
三浦透子の表情のその独自性はドライブ・マイ・カーでさらに磨きがかかり濱口監督も意図的に発生させるために彼女へドライバーの役を当てたんではないでしょうか。ここにいるけど常に目の前のこととは別のことを考えている表情、三浦透子の特徴なのかもしれません。

清水峻平「水本さん」(2017)
脚本 坂元裕二

東京藝術大学大学院映画学科の脚本コースの学生の作品。今でもYouTubeで公開されており坂元裕二節を短時間で摂取したい時にはこちらを観ると良いと思います。坂元裕二の脚本上の役を演じたことがある役者は必ず大きなものを得ると勝手に思っていて、僕はこの作品で彼女の台詞の抑揚や声の美しさにすごく惹かれました。
突拍子もない設定が彼女の声によってリアリティを帯びていくこの短編ドラマ。ドライブ・マイ・カーの非現実的な事象にだんだんと現実味が帯びてくる濱口監督の映画マジックに彼女が大きく貢献していることがよくわかります。

三浦透子「ASTERISK」(2020)

フィルモグラフィではないのですが、こちらを。
彼女の声を最初に褒めた人は映画監督のタナダユキさんらしい。タナタユキさんが「すごく声がいいから歌を歌ってみても良い」というアドバイスで彼女は歌手としてのキャリアも築いていく。濱口監督はキャスティングを決める際に「声が良い」という抽象的だけど具体的なものを重要視されているらしい。私としては石橋静河さんとかも声が良いなと思う役者です。私がこのアルバムで好きなのはTENDERが作詞作曲している「おちつく」だ。テレ朝「あざとくてなにが悪いの?」の再現ドラマで流れており調べたら彼女に着いた。他の曲も森山直太朗、曽我部恵一、澤部渉(スカート)と豪華な面子に楽曲提供してもらっており、ネクスト菅田将暉の階段を着実に登っている。というか楽曲と声は菅田将暉以上なのですごく注目しててください!

岡田将生

山下敦弘「天然コケッコー」(2007)

岡田将生さんと夏帆さんが映画に目覚めるきっかけとなった作品ではないかなと個人的に考えてます。この作品の後2人は売れてゆき、岡田将生さんはイケメンとして夏帆さんはガールとして日本映画界の悪行、消費されるコンテンツとしての作品にどんどん出演されていきます。けれど近年ではそれぞれ自分達のペースで作品に参加しており岡田将生さんですと「星の子」「大豆田とわ子と3人の元夫」のような作品、夏帆さんですも「架空OL日記」「ブルーアワーにぶっ飛ばす」のようなミニシアター系映画やドラマに戻ってきているように感じる。
この作品は山下敦弘監督で脚本は「ワンダーウォール」や「今ここにある危機と僕の好感度について」などの渡辺あやさん。最高なタッグでかつ近藤龍人の撮影という。当時役者2人とも10代だと考えるととても良い経験値になっていると思うし、ここからの2人の成長を感じるにも必ずこの作品は観て欲しい。

中島哲也「告白」(2010)
李相日「悪人」(2010)

岡田将生はかっこよすぎる。かっこよすぎるからこそ気持ち悪く嫌悪感ある役をやらせても成立する。その最たるものが2010年立て続けに公開されたこの2作。
告白での新しく赴任した中身のない正義感を振りまく先生、悪人での満島ひかりを暴行する彼の姿。他の誰かが演じればその印象のせいで他の役を演じられなくなってしまうような嫌悪感を与える役を岡田将生さんは見事に演じ切り、その後に影響を見せない。それはすごいことだと私は思っている。
ドライブ・マイ・カーでも岡田将生は大前提にかっこいいがくる。映画の画面に映ったその瞬間からかっこいいやつが来たなとわかる。しかしその仮面の下にはすごく欲求がありそれが見えてくると気持ち悪いなと感じてくる。しかしこの2作とドライブ・マイ・カーで異なる部分がある、それは役の人間味だ。前2作では人間味という部分をほとんど切り離されて映画にとって都合の良い存在としてあるけれど、ドライブ・マイ・カーでは家福が彼をしっかり人間として扱っていてそのおかげで、鑑賞者はこういうやつっているし嫌いだけど、、、ってそのライン設定が濱口竜介監督はすごく上手い。そう感じた。そして岡田将生さんもこの映画での演技はキャリハイのベストアクトとなっているのではないだろうか。

森義隆「宇宙兄弟」(2012)

これはマジで超個人的趣味。だけどこの映画の岡田将生が僕は大好き。中学生の頃って誰もが「宇宙」が好きな時期あると思うんですけど、僕はその時期とこの映画と原作マンガがドンピシャに当てはまったのだ!正直映画の出来自体はそこまでなんだが、岡田将生「ムッちゃん行かないの」天に指を刺して
を、見るためだけにでも鑑賞して欲しい!ちなみに小栗旬はこの映画の後からムキムキになっていきます。

宮藤官九郎「ゆとりですがなにか」(2016)
坂元裕二「大豆田とわ子と3人の夫」(2021)

どちらも良いドラマなんです!岡田将生がこれまでのキャリアでどれだけ映画監督や脚本家に恵まれたかがよくわかるし、同時にそういった有名な作家が誘いたくなる、料理したくなる存在なんだともわかる。ちなみに「大豆田とわ子〜」の演出は池田千尋さん。
上記では岡田将生がかっこいいからこそできる人間味のない役を紹介したけれど、今回は両方ともカッコいいのにダサい!という人間味がある。
演者としてのレンジの広さにすごいと感心しつつも岡田将生ってやっぱり「かっこいい」が前提なんだよなあ〜とも考えてしまう。

まとめ

以上、映画ドライブ・マイ・カーに出演された3人の役者のフィルモグラフィの中からおすすめ映画をリストアップしました。
坂元裕二、池田千尋、黒沢清、東京藝術大学大学院、たむらまさき、とキーワードとなる演出家や脚本家、カメラマンを介してそれぞれどこかで繋がっており、それが濱口竜介監督とドライブ・マイ・カーという映画にやがてまとまっていくように感じました。
これが体系的な映画鑑賞とは思いませんが、そういった繋がりを意識しながら過去と未来の時間軸を捉えて辿っていくと映画をよりおもしろく感じれると思います。たぶん3倍はおもしろくなるんじゃないかな。
是非オススメした映画を観てもらいたいです、各種配信にてもみれる作品群だと思います。
ドライブ・マイ・カーがこれから先もより多くの人に見てもらえることを祈ってます。

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