貝輪|ショートショート
あなたは、私の友達に会ってくれる。会わせられる人なのが嬉しくて、ついつい私も友人との場に連れていったわ。本当にバカね、私ったら。
〇○○
他の友達は名前覚えないのに、■■のことは覚えるのね、って言えば。
「俺■■のしもべやからな。あいつは魔性の女やで」
冗談だとしても、そんなの聞きたくないの。ふーんって流した私に、否定の言葉くらい寄越してよ。
「■■って、結婚はすんの?」
それあなたに関係あるの?
「彼氏が俺と同じタイプなんは聞いたんやけど」
それで? だから?
私と■■が映っている写真を見せれば。
「どっちもかわいい! かわいい!」
あなた、ああいうタイプがすきなのね。
その後で、いくら愛の言葉を囁かれたって。『愛情表現』なんてものをされたって。
私は忘れないのよ。あなたの言葉を。
男はみんな浮気する、なんて私、身をもって知ってるわ。
それを知ってるあなたが私にそんなこと言うなんて、ねえ、いかがなものかしら?
私は私を愛してくれる人が好きなの、と言えば。
「愛してるよ」
なに? きこえないわ。
「元カレに嫉妬する」
いったい、どの口が言ってるの?
「俺のこと捨てんとってな」
〇○○
私は、あなたに笑顔を向けることができる。そのまま会話して、時間が経てば油断してくれる。本当にバカね、あなたったら。
あなたの首に手をかける。ほら、いつものじゃれ合いよ、楽しいでしょう。さあ、いつもみたいに緩やかに抵抗して。
首に触れられる、特別な場所がすきなのでしょう。だからあなたは、いつも項に触れるのでしょう。
私、あなたを捨てたりなんてしないわ。だから最期くらい、そのお気に入りの場所を私に頂戴な。
【完】
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