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野で遊ぶにはまだ早い

今回は僕の尊敬する俳人、
田中裕明氏(1959-2004)の俳句を紹介します。

    
   穴惑ばらの刺繍を身につけて    田中裕明 
『花間一壺』
                      

「穴惑」は秋の季語。
本来なら冬眠に入るはずの蛇がまだ、
眠るべき穴を見つけずにいることを言います。
その季節に、ばらの刺繍の人にふらっと出くわしたとも、
ばらの刺繍のように派手な蛇が人前を通ったとも読め、
秋の日差しの下の、軽やかで心地よいショック。
かすかな婀娜っぽさもあるような。

ということで季節を春に替え、勝手にアンサー俳句なぞを。


   蛇穴を出づや未完の刺青に    梨鱗


春寒のピリッとした空気の中へ、チンピラのあんちゃんが登場。
目覚めたばかりの不安定な気配が、現れているといいのですが。

二十四節気は「啓蟄」の候。
蛇だけでなく様々な虫の目覚めの季節とされています。
目覚めという現象が詩心にうったえるのか、「啓蟄」は人気の季語ですね。
今年の冬は寒かったので、虫たちが動き出すのも遅めでしょうか。


   啓蟄やまつ毛をゆらし地を見る子


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[つけたし]
僕の街は、今日はとても温かでした。買物に出掛けたら、畑のあまった部分を2種類くらいの蟻が3、4匹ほどいました。蟻も冬眠みたいなことをするそうですよ。今年見た初めての蟻でした。






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