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たんぼLOVE「12月」

収穫を終えた稲の切株から、あらたな芽が伸びはじめます。
晩秋に生えるひつじは、すぐに消えてしまいそうな早緑色です。
それでも今年の穭は、12月になってもそよいでいます。
やはりこの冬は暖冬のようです。

冬の田んぼには農家の方も見えません。
藁塚を作ったあとの余りの稲束と、しまい忘れた案山子。
こんな季節の田んぼを「休め田やすめた」と言いますが
その名まえのとおり深い休息をしているようです。
とはいえ、ちょっとした、いえ大きな変化もありました。

西の田んぼも東の田んぼも
どちらもその敷地の一部が、売地になってしまいました。
売地になれば、またたく間に建物が作られます。
棟梁さんの話では、田んぼの持ち主さんのお宅で
相続税の関わる出来事があり、致し方ないことだったと。

田んぼの間の道は、片側だけが田んぼの道になりました。
建設中のアパートの影が道に掛かって、そこを通ると冷たい。
夏になったらどのくらい稲の上に掛かるのだろう、
と思います。
でも、ぼくはきっと見慣れてしまうのでしょう。
毎冬、毎夏、日ごとこの道にかかる影に。

だからこそ、今年の冬の光景をここに
こうやって残しておいて良かったと思うのです。


  休め田を撫でまぶた撫で日の明かり     梨鱗


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