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たんぼLOVE「4月」

  風やめば天使のはしご春田打   梨鱗

4月ともなると町にも小川にも
さまざまな花があふれ、おおにぎわいです。

桜を追って八重桜
薔薇にさきだって木香薔薇
その薔薇もつぼみをふくらませ、
水辺では菖蒲の葉が伸びやかに。

そんな中、田んぼでは丈の低い雑草が
先月とかわらず風にゆれるばかりです。

ある日の朝、オレンジ色のトラクターが
田んぼの端にぽつねんと置かれていました。
なんか出て来たなあ。
なんて思っても、忙しい朝ですから素通りです。
ところが。
翌日にはちゃんと田んぼの土が鋤き返されています。
田植え前の準備、「田打ち」が始まりました。

トラクターが出てくれば「田打ち」「田起し」と
来るのは当たり前なのでしょうが、
そこは稲作をしたことのない素人。
点と点が線でつながりません。

この日、田打ちがおこなわれたのは
畦で囲われた一面だけでした。
そこから隣の田んぼ、そのまた隣の田んぼと
見えるかぎりの田んぼの隅まで
数週間かけて、田打ちが行われました。

トラクターがあるのに、ずいぶん時間がかかります。
けれど田打ちは、3回おこなうものなのだとか。
鋤く回数をかさねることで、土をよくほぐします。
なかなか根気のいる仕事だったんですね。

田んぼに大きな篩を置き、その前に人が座っています。
根っこの絡まった土くれを
手で一つ一つほぐしているようですが。
こんな気の長い仕事、
よその田んぼでもあるのでしょうか。
去年までこの田んぼでは、見かけなかった顔です。
新人さんでしょうか。
ふしぎなことが、さり気なく
ひとつ始まっていました。

  花かかげ田打のあとを風の草

  とほまきに雀はひるげ春田打


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