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たんぼLOVE「10月」その1

10月が来ました。
田んぼの10月はとくべつな月。
それぞれ遅速はあるけれど、あちらこちらで
稲穂が黄金色へと変わります。
収穫の季節の到来で
農家さんは、大わらわです。

とはいえ。
ひんやりとした朝、
農家さんのいない田んぼを
守る誰かがいます。
そう、案山子です。


  胸ふかく朝の金波に立つ案山子    梨鱗
 

でも。
雀たちには、人形だってばればれですよ。
近よっても動きませんから。
……なんて無粋を言うのはよしましょうか。

稲がいい具合に色づいてきたら、一仕事。
刈り入れの前の田んぼの水を
抜かなくてはなりません。
「水落とす」「落し水」と言います。

こうすることで、泥濘の土が乾きます。
ひとが入って稲刈りをすることができるそうです。


   棟上げの柱を空に落し水

田んぼから水を落とせば、
ぐるりと巡る水路の水も、細く、浅くなります。
水の豊かな町ですが、田んぼ界隈から
水がなくなると、なんだか景色が変わります。
すぐ近くには、建設中の家があります。
変わらないものは、ないのです。

部屋を片付け過ぎたような、
さっぱりとしたさみしい気持ちで
次の季節へ移るのだと実感するのでした。




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