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たんぼLOVE「10月」その2


   夜の明けて赤々と稲架はざ龍のなり   梨鱗

例年、この辺りの田んぼは
9月の終り頃から稲刈りが始まります。

10月ともなれば、農家の方の繁忙期。
けれど4月5月の田起しや田植の頃にくらべると
人数も少なめなのです。

春に手伝いに来ていた様々な方たちは、
もういません。
最近外に出るようになったニートの方かな?
なんて勝手に思っていた人も(まあ失礼な)、

見かけなくなりました。
稲作を取りしきる棟梁のような方が
その相棒さんと二人ばかりで、
稲を刈っては束ねて、稲架掛けにして、
といった仕事をくり返しています。
稲作とは、ほんとうは孤独な仕事なのでしょうか。
棟梁さんの手の甲に日が射すと、
土塗れの鋼のような暗く沈んだ色、
太陽を浴びつづけた色でした。

そんな田んぼですが
ある日、ちょっとした催しがありました。
田んぼのそばの空地に
小さな人かげが集まっています。
この辺りの子ども達に、農業体験をしてもらうのです。
子ども達は、はしゃいでいます。
金色の稲穂のゆれる畦を走ったり、わらったり。
ぼくは遠くから見るだけなのですが、
あの棟梁さんも、こんな日はずいぶん愉しそうなのでした。

  
   ひとゆれて歌ゆれて黄金田はつづく



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