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"逃亡日記" 第21夜 "遍在する音楽会"の思い出


虫の音の響く初秋の夜明け、遍在する音楽会の記憶をたどっている。

…ほんとにへんてこで、賑やかで、喜びと熱気にあふれ、そして切ないほど美しい体験だった。

プロローグ


夏の終わり。たそがれどき。ぬるい風の中、音の祭は始まっていた。

ガムラン、笙の笛、ツィンバロン、スティールパン、ナゾの蛇みたいなパイプ(セルパン)、馬頭琴とホーミー、マトリョミン(マトリョシカ型テルミン!)そしてDJ Torarz(ほんとにネコ頭人間だった‼︎)。
さまざまな音楽(はじめて聴く音ばかり!)と、再会を喜ぶ人たちの声や拍手やさざめきがとろけあい、祝祭の喜びがたかまっていく。…これがジョン・ケージの"ミュージサーカス"なんだ。


18時。まるで福引の大当たりのようなカネを鳴らして演奏者たちが去っていく。


18時20分開場…ホール内は既に"燃え上がって"いた。

炎と縄文とハイコンテクストな第一部


ホール内に入ったとたん、…ホールが燃えてる‼︎って思うほど燃え盛る炎。50枚近くあるLEDパネルが全て違う動きをしてる。天井から吊るされた地球のように丸い銀の球体にも炎がゆらめく。

むにー(柳宗悦w)やジョン・ケージ、トランプの声が重なり響く…と思ったら。既にステージにDJトラーズがいる。

1階の右には"サトちゃんムーバー"(…薬局前感…)がてりっと輝き、左にはLOVOTたちがキノコ🍄の衣装で歌いながら楽器をもってうろちょろしてる…どうしよう。いきなり情報量多すぎるんだけど(汗)

音楽会って、ホールに入ったら静かにお行儀よく座るものだと思ってた"常識"は小気味よくけっとばされてなくなった。

開演前のチャイムが鳴り、座席に着いたと思ったら…ウルトラマンが現れた…
(えっとー…今回の音楽会はあまりにハイコンテクストなのですが、とりあえずウルトラマンは仏教と縄文で、サトちゃんムーバーは"elephant in the room"だそうです。あとLOVOTがヴァイオリン引きずってたのは、ジョン・ケージのパフォーマンスをまねっこしてるそうな…)


ここから始まる"ミュージサーカス コンサートホール版"は本当に素晴らしかった。
琉球舞踊、アイヌの謡、京都醍醐寺の声明、またりさま(鈴とカスタネットを8人で順番に鳴らす遊びみたいなリズム音楽)オーボエとチェロ。

人の声のバリエーションの複雑さと豊かさ。全部が違う調性とリズムなのに、気持ち悪くならない絶妙なバランス。そうか。揺らぐ波だ!
…昆布だしに鰹だしを入れて、次にコンソメ、次にキノコ…みたいに、順番に素材が追加されていって、気づけば、滋味溢れ複雑で豊かな味のスープになってる…みたいな感覚。

これは、ここでしか聴けないし、二度と同じものは再現できないんだなぁ…海の波が同じ形にはならないように。


2曲目の"答えのない質問"は、聴覚の限界を試されるような、限りなく微細な音の波の上で管楽器から静かな"問い"が投げかけられる。
ppでずっと響く弦の音ここちよさ、さわやかな高音の抜け。
ずっと聴いていたくなるリセットされる感覚…きれいな水をごくごく飲むような感じ。
海老原さんの作るこの曲は、とびきり繊細でエレガントだった。


さて、3曲目は藤倉大さんの新作"メディアアートとオーケストラのための"for null"
落合陽一さんのTwitterに時々流れてくるキラキラでヌルヌルの作品、"Re-Digitalization of Waves"をもとに作られた曲…これは…落合アートマニアは泣いて喜ぶハマり感(語彙力…)
うーわー…‼︎これだけの枚数のLEDパネルでヌルヌルする映像は迫力がすごい…でも確かに"Silver Floats"だー。WOWさんすごいな‼︎

藤倉さんの音楽は繊細で豊かだ
濁った音がない


夢心地のまま、休憩にはいる…。

火祭りの第二部


後半は洗練された西洋音楽。
…と思ったら、お坊様の法螺貝ではじまる"火祭りの踊り"
むぅぅ…"祭"感(呪術感?)増しますなー(笑)


メインの"火の鳥"久しぶりに聴いたー(吹奏楽部の定期演奏会メインの定番だった)
バレエ音楽…ってより、映画のサントラとかゲームミュージックっぽいなー。
100年前(1910年の曲)の若きエッジィな作曲家のエナジーを、LEDパネルと光の演出で極上のエンタメに。

日フィル×海老原さんの音は、ほんとに品がよくて、澄んだ音が地の底から空の上まで、私の身体を通り抜けてのびやかに駆けめぐる。なんて心地よい"炎の浄化"


アンコールは静かな子守唄"ソルヴェイグの歌"
昂った心をすーっと静めるようなメロディ(…サウナのあとの水風呂?)

…なんて思ってたけど、何げなく歌詞を調べたら涙が止まらなくなった2日後の夜。


3人の落合陽一


…まさに三面六臂…‼︎その度に衣装が変わるので、ほんとに3人分‼︎

仕事やコロナでずっとオンライン視聴だったけど、今回はついにこの場所に来ることができたんだなぁ…としみじみ思う。

この"場所と時間"を共有できる多幸感と祝祭を喜び合えるあまたの演出への、心からの感謝と称賛(…礼賛⁈)を、落合陽一さんと海老原光さんと日フィルと全てのスタッフの方々へ‼︎

〈落合ファッションまとめ〉
全身黒猫🐈‍⬛(猫型仮面!)のDJ Toratz、赤×黒×ショートヘアで王子風のMC、白×黒×ロングヘアで演出家としての挨拶…‼︎ちなみにヅラは5種準備されてたけど、最後のアンコールの後の挨拶は地毛だったそうなw



満ち足りた気分でコンサートホールを出ると、晩夏の夜の風が吹いていた。

また来年もこの場に来れますように…!
心の中で小さく祈りながら、久しぶりに会えた友人の元へ小走りで向かった。
いつもより長めのワンピースの裾を、夜風にふわりとなびかせながら。

ロビーに展示されていた、縄文土器とぬるぬるきらきらする炎

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