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「ロマンティック・コメディ」感想

ロロ作品は温かい卵粥みたいな作品が多い。じんわりと生産性はないけど意義のある人と人とのつながりを表す。
「ロマンティック・コメディ」は亀さんスピードの作品だ。それぞれの大切を失ってしまった人々が時を止めブックカフェに集まり、でも徐々にその時は動き始める。自分のペースで生きることを肯定してくれる温かさがそこにはある。

詩歌から伸びた糸は材質、色、細さ全て違う形でそれぞれの人物に伸びて繋がっている。同じ糸である必要は無いし、比べられるものではない。

となりは詩歌と顔こそ知らないけれど繋がっていた。報せはすぐには入ってこなくて後から知った。近しい人が入れ替わって現れたことにすぐ気が付いた。
麦之介は寧と一緒に小旅行に行くような友人だったが連絡が途切れてしまった。肩を並べて隣を歩いていても寧の間違い探しは全部見つけられていない。
最後に寧から届いた荷物。麦之助と寧の大切な時間。

内向きに同じ作品を繰り返し読み込む様子は不気味でもある。でも時に不気味になったとしても前を向けるその時が来るのならば少しくらいは許して欲しい。

もうなくなってしまった物を具象化することが美徳とは到底思えない。誰に見せるためのパフォーマンスだろうか。あなたと私のきらきらした思い出はオルゴールの中に仕舞って二人で開いて話したいていたい。
詩歌がいなくなって止まってしまったひかりの時間。でもひかりは生きていて暮らしていかなくてはならない。歩き始めるまでに長い長い時間がかかったとしても、また二人で作っていくと決めたひかりにたくさんの幸せが訪れてほしい。


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