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研究者マシンガントーク

今、集団遺伝学、統計学に関するオンライン講義を受けています。
アメリカ西海岸から生放送。
向こうでは8:00 ~ 15:00。こっちでは17:00 ~ 24:00。

今朝ラボに行ったら、
「今日は夜に講義受けるんでしょ?なんで今いるの?」
ってびっくりされました。

夜の講義で7時間は働いてるんだから、それ以上働く必要はない!
と言うことらしいです。
オンライン講義は時間外労働というより趣味の時間にカウントしてたよw
明日は普通にラボ行くか泳ぎに行くかするけどwww


先生は2人。両方女性です。
集団遺伝学の専門家。

にしても早口です。マシンガン ジェネティクス トーク。
いちいち日本語に直してから理解してたら追いつかんから直接理解してると思うねんけど、思いおこすときは全部日本語、しかも関西弁で出てくるのはなんでなんだろう。。。笑


ここから少し専門的なお話。。。

遺伝学の話をするときは前提をたくさん提示しないといけないんです。

例えば、

集団1は赤い木が11本、青い木が1本。
集団2は赤い木が6本、青い木が6本。
さて、どちらの集団がより多様ですか?

っていう問題があったとする。

どっちが多様だと思いますか????





答え...






この3行だけではわかりません。(おい)




表現型(見た目)の多様性でいうとどちらも赤と青の2色なので一緒。


遺伝子ベルで見ても、「この配列のここにピンポイントに変異が入って初めて色が変わる」場合、多様性は集団1と集団2で同じになる。
だって
ATGATGAATG
ATGATGATTG
とかの二種類しかいないんですもん。


色を決める遺伝子のどこに変異が起こってもいいなら、集団2の方が多様かもしれない。
ATGATGAATG・・・赤
ATGATGATTG・・・青
AGTATGAATG・・・青
ATTATGAATG・・・青
みたいに。


遺伝子じゃなくて染色体レベルの変異かもしれない。
ひっくり返ってる(逆位)とか、1本足りない(欠失)とか多い(重複)とか、...


もっとイケズなことを言うと、赤い木だって見た目が赤いだけで配列は全部違うかもしれない。
ATGATGAATG・・・赤
ATGATGATTG・・・赤
AGTATGAATG・・・赤
ATTATGAATG・・・赤
みたいに。。。


ほんでもともと赤なのかもともと青なのかでも解釈は変わってきます。


なので、問題を出す際は

集団1は赤い木が11本、青い木が1本。
集団2は赤い木が6本、青い木が6本。
さて、どちらの集団がより多様ですか?

なお、色の変化はある遺伝子Aへの変異によって起こり、1度変異が入ればその変異箇所がどこであっても色は赤から青へ変化する。
遺伝子A以外の遺伝子の多様性については考慮しないものとする。。。

等々の但し書きがたくさんつくんですね。

あぁ、院試思い出すな笑

遺伝学の試験はこう言う但し書きを全部正確に読み解いて公式を当てはめたり遺伝様式を当てはめたりしないと解けないので、必死に読んで必死に書いていた覚えがあります。



目に見える現象について、感覚で「こうでしょ」と言うのは簡単。
最近は計算ソフトが充実してるから、モデルを当てはめるのも簡単。

でもそれだけじゃダメ。

いろんな法則や条件から理由を一つ一つつけていく。


わからないことはたくさんある。
モデルがすんなり当てはまらないかもしれない。
親では当てはまるものが子では当てはまらないかもしれない。

「理論的にこうなるはずだ」が外れることもしばしば。
だって生き物だもん。そう簡単に人間の思い通りにはならない。


分厚い英語の教科書をめくりながら、論文を漁りながら、
1つ1つ理由を考える。実験して可能性を1つ1つ確かめる。
あーでもないこーでもないって学生や先生とディスカッションする。

これが楽しくてやめられない。変態だな。


それから、集団遺伝学やコムギ遺伝学の話をすると
・木村資生
・大田朋子
・木原均
の3人の日本人の名前が必ず登場するのがちょっとした誇りだったりする。


アメリカ西海岸とチューリッヒの時差は9時間。
でも遺伝学や生物学を学ぶ学生の熱意は同じ。

若い学生たちの

こういう場合はどうなる?

じゃぁこれは???

動物は面白い!!!

いや、植物の方がクールだ!!!!

なんて言う論争(zoomのチャット内)を微笑ましく眺めてます。
そのうち「やりやすい研究対象なんてない」ことに気づくのだろう笑


学生に限らず、先生に限らず、研究者のマシンガントークは、チャットであろうが講義であろうが御構い無しにどんどん進む。めっちゃ早い。

日本の講義はもう少しのんびりしている。
基本的にちんたらやってたら内容終わらんから、日本でもマシンガンになるはずなんだけども。
丁寧に教えるのも大事だけど、情報をこれでもかと詰め込まれるこの感覚は、一回経験しておくといいのかもしれない。
同じ時間でも得られる情報量が違う。思考の広さが違う。

あともう少し体系的な講義を展開してもいいんじゃないかと思う。
研究内容の紹介だけでなく、順序立てて1つの学問を教える講義形式がもう少し増えればいいのに、と前々から思っています。

研究者は喋るの好きな人が多いので、喋ってる量は国内外問わず結構多いんだけどね。



最後に、今日の講義の感想をアンケートされたんやけど、選択肢が

遅い
普通
早い
シートベルトいるわ!

って、やっぱりあんた絶対関西人やわwww





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