ユダヤ人の歴史的視点と課題。

 イスラエル軍とパレスチナのイスラム組織ハマスの戦闘は、昨年10月7日から半年が経過した。ハマスの奇襲攻撃によって、イスラエルでは約1200人が死亡し、200人以上が人質として拉致された。
 イスラエル軍はすぐに報復攻撃を開始し、ガザ地区の死者は増え続け、3万3000人を突破した。当初イスラエルに同情的だった国際世論は一転し、報復措置は過剰だという声が高まり、行き過ぎやり過ぎではないか、あるいは集団殺人などの批判が出るようになった。
 132年にパレスチナに住んでいたユダヤ人は、ローマ帝国に征服され、聖地エルサレムから追い出された。その後彼らは中東諸国と欧州諸国に散らばり、国外離散の長い旅が始まり、欧州では多くの中傷や迫害を受けた。
 彼らは自分たちのルーツを大切にする意志が強く、あくまでユダヤ人としての血統に固執し、現地に同化しないことから、世界で嫌われる傾向がある。これはイスラエルと周辺のアラビア諸国との関係でも同様である。しかし、実際にはこの2000年間にユダヤ人の血統は何代にも渡り、希薄化している。
 ユダヤ教を信仰する宗教的民族集団としてのユダヤ人は、独自の国家としてイスラエルを作る。イスラエル国内においてユダヤ教を信仰していない者はイスラエル人と呼ぶ。こういった歴史的な背景と、この70年間常に戦争状態を継続しているユダヤ人はかなり被害者意識が強い特殊な民族と考えられる。今回の奇襲攻撃はイスラエルとパレスチナの間の長年にわたる対立の一部で、根底には地政学的、宗教的、そして歴史的な要素が複雑に絡み合っている。
 ユダヤ人の視点から見れば、今回のハマスの奇襲はイスラエルの国民とその生活に直接的な脅威を与えたことから、自国は国の安全と主権を守るために行動するべきで、軍隊は報復措置を取るのは当然である。長期にわたる両者の対立は、単なる軍事的な問題だけでなく、教育や徴兵制度などにも大きな影響を及ぼしている。そして、彼らは国を守るのは当然だと教え込まれている。
 教育制度では、国家の安全を確保するために必要な知識とスキルを提供する問題に重点が置かれている。しかし、これはしばしば他の視点や価値観を尊重するという教育の側面を犠牲にしている。このような偏った教育によって、民族主義や軍国主義が助長され、他の民族や国を理解する能力が制限され、対立が深まる要因となる。
 またイスラエルは1948年の建国以来、常に脅威に晒されてきたという国家の現実を反映し、18歳以上の男女の徴兵が行われ、国防の一線で働く。これは若者たちに大きな負担を強い、とくに戦闘が絶えない地域での勤務は、心理的なストレスが大きく、徴兵制度はイスラエル社会における意見の分裂を招いている。多くの国民は国防のためには個々の自由や平和が犠牲になるのもやむを得ないと考えている。
 これらの問題を解決するには国全体を見直す必要がある。しかし、非常事態の現状では改革は極めて難しい。それにはイスラエルだけでなく、国際社会全体の理解と協力が必要で、両者の対立が解決し、両者が共存できる未来が実現した後の話となる。
 以上のようにユダヤ人の歴史的視点と課題は、イスラエルとパレスチナの間の長年にわたる対立に深く影響を与えている。この問題を理解することは、両者の対立を解決し、共存可能な未来を実現するために不可欠である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?