高齢者の交通事故と自動運転車の導入について。

 近年、わが国では高齢者の交通事故が増加している一方、自動運転車の開発や導入が進んでいる。とくに75歳以上の運転免許保有者が増え、昨年末で約728万人となり、5年間で約164.5万人も増加した。この増加は高齢社会が進行する中で、運転免許の自主返納のペースを上回っている。
 2024年3月7日の警察庁の発表によると、車側が過失の割合が重い交通死亡事故は減少傾向にある。しかし、運転手が75歳以上の割合は増加の傾向で、10年前の11.9%から昨年は16.4%と増加した。自動ブレーキやイベント・データ・レコーダーの搭載が義務化されたにもかかわらず、高齢者の運転免許保有者の増加と相まって、交通事故の割合が増えている。
 死亡事故の要因を見ると、75歳未満の運転手では前方不注意や安全不確認が目立つが、75歳以上では操作ミスが最多で、3割近くを占める。とくにブレーキとアクセルの踏み間違いやハンドル操作などの単純なミスが多い。
 この対策として高齢者向けの運転技術の再教育、安全に運転できる車両の機能向上、ドローンなどの新しい乗り物の開発、道路環境の整備などがある。また高齢者自身が自分の運転能力を客観的に把握し、必要に応じて自主返納を考えることも大切である。
 一般に、高齢者は視力や聴力の低下、認知機能の衰えなど、運転に必要な能力が低下する。これらの要因が交通事故のリスクを高めるので、交通事故の防止と自身の安全確保から、自主返納が推奨される。実際に高齢者の運転免許の自主返納は増加しており、昨年は前年に比べると、42.7%増加し、60万1022件を示した。
 自主返納がしにくい状況も多い。例えば、高齢化が進む山間地や人口過疎地区では、公共交通機関が不足しており、買い物や病院への通院、農作業で車を運転する必要がある。こんな状況では自動運転車の導入が極めて便利であり、また安全性も高い。実験的であるが、地方では移動手段として利用されている。
 実用化は世界的に進行中で、米国や中国ではすでにレベル4の自動運転タクシーが運行を開始している。レベル4になると、完全な自動運転が特定の条件下で可能となり、ドライバーの介入は基本的に必要としない。
 自動運転車の導入は交通事故を大幅に減少させ、運転の技術や反応速度が低下した高齢者に安全に移動できる手段を提供する。そのため、次世代の車と言われる自動運転車の導入が急がれる。わが国の開発は遅れているとされるが、科学技術の発展や産業の振興のためにも、早急に開発をする必要がある。
 高齢者だけではなく、交通事故全体の減少が期待される。

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