教皇フランシスコの発言。

 ローマ・カトリック教会の教皇フランシスコは、ウクライナに対するロシアの侵攻に関連して、停戦交渉を行うべきだという考えを示した。2024年3月9日、バチカンメディアはインタビュー放送の前に教皇の発言の内容を公開した。
 同メディアによると、教皇は2月上旬のインタビューで、記者からウクライナでは降伏の勇気、白旗を求める人たちがいるが、それはロシアの侵攻と占領を正当化すると言う人もいると質問を受けて、「最も強いのは、状況を見て、国民のことを考え、白旗をあげる勇気を持って交渉する人だと思う」と述べた。
 さらに、教皇は大国の協力を得て交渉を進めるべきだとの考えを示し、仲介役としてトルコに言及した。その上で、「交渉という言葉は勇気のある言葉だ。自分が敗北し、物事がうまくいかないと分かったときは、交渉する勇気を持たなければならない。恥ずかしい
かもしれないが、何人死んだらすべてが終わるのか。事態が悪化する前に交渉することを恥じないで」と訴えた。ウクライナの平和的解決について情理を尽くして説明し、交渉は敗北を意味するのではなく、事態が悪化する前に解決策を見出すための勇気あるステップであると強調した。
教皇の発言は停戦を促す点では国際連合事務総長アントニオ・グテーレス氏やトルコのエルドアン大統領と同様で、極めて常識的で、国際社会の共通の認識である。戦争の悲惨さと平和への願いを象徴し、協力と対話の重要性を訴えている。実際にグテーレス氏とエルドアン氏は停戦のために自ら活動し、和平の下地を作った。
 停戦が長引くと、被害は大きくなり、国民が困窮する。この典型がわが国で、第二次世界大戦における好戦的な姿勢が挙げられる。当事者は狂気の沙汰で聞く耳は持たないだろ
うが、土壇場になるまで白旗を掲げなかった。
 わが国はすでに敗色が濃厚だったにもかかわらず、無条件降伏の半年ほど前に降伏の機会があったが、本土決戦、一億総玉砕などと血気にはやり、これを拒否した。このため、1945年(昭和20年)年3月死者数が10万人以上、罹災者100万人を超えた東京大空襲、4月に20万人の戦没者を出した沖縄総力戦、8月に死者21万人を超えた広島と長崎への原爆投下を招き、わが国は悔やまれる結果を残した。
 やはり、バチカンメディアの呼びかけに対して、ウクライナの大統領は聞く耳を持たずで、クレバ外相は10日、自身のXにウクライナ国旗以外にいかなる旗も掲げないと投稿した。2022年2月にロシアが侵攻して以来、ウクライナは歳入の全てを国防と軍備につぎ込み、年金から社会保障費まで、その他のあらゆる支出は数百億ドルに上る外国からの援助で賄っている。外国の借金も増大しつつあり、ウクライナ軍は弾薬不足の傾向にある。
 侵攻は局地戦の様相を呈するが、国外避難者は800万に上り、多くのインフラが破壊され、国民総生産も3割程度は低下し、国は荒廃している。侵攻は3年目に入ったが、いまだ終結の見通しはたたない。世界で12億人のカトリック教徒の精神的指導者であるローマ教皇の発言は停戦を促す方向に働くだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?