家計の金融資産について。

 わが国の国民資産は家計の金融資産と企業や政府の資産から構成される。家計の金融資産は現金や預金、株式や投資信託など、金融機関に預けたり、市場で売買できる資産を意味する。
 2023年12月20日、日本銀行は資金循環統計を発表した。今年9月末時点で、家計の金融資産は2121兆円に達し、過去最高を更新し、前年同期比で5.0%増加した。この要因として株価の上昇や投資信託への投資拡大が挙げられる。
 個人の金融資産2121兆円と言われても、多くの国民はピンとこない。貯蓄とはほとんど無縁で資産もない私たちにとって、労働の対価としての預金が増えないことから、富裕者が資産を多く持っていると考えるしかない。
 資産の内訳は現金や預金は1113兆円で全体の約53%を占め、前年同期比で1%増えたに過ぎない。現金や預金は安全性が高く流動性も高いため、家計にとって最も重要な資産となっている。現在、利回りは低いかゼロに近いため、他の資産に比べると、ほとんど増加しなかった点も頷ける。
 株式は273兆円で全体の約13%を示し、前年同期比で30%も増えた。これは日経平均株価が約2万円から約3万円に上昇したことによるが、企業の業績の向上というよりも、バブルによって資産が膨らんだ結果と言える。
 投資信託は101兆円で全体の約5%を占め、前年同期比で17%増加した。これは個人投資家が低金利やコロナ禍による不安から多様なリスク分散を求めて、国内外の株式や債券などに投資する投資信託に積極的に資金を振り向けたことが要因である。
 わが国では現金や預金への依存度が高く、他国と比べると、家計の金融資産の割合が大きい。これは日本人のリスク回避的な性格や長年続くデフレ傾向などが影響していると考えられる。
 家計の金融資産は経済の重要な要素で、消費や投資が増えれば、経済活動の活性化や成長力の向上につながる。しかし、国の将来、先行きのインフレや老後の生活に不安があるため、多くの国民がお金をため込んでしまう。
 しかも、今の政府の政策は、デフレ脱却、国の借金増大、防衛費の増加、消費税の増税、社会保障の削減など不安にさせることばかりである。この10年間続けてきた大規模金融緩和の継続か縮小かという問題も重要だが、それよりも混乱と矛盾の極みにある政府は襟を正して節減に努め、不安材料の軽減か解消を図るのが良い。
 一方、日本銀行の国債の発行残高は1066兆円に達した。保有残高は574兆円(時価ベース)で、約54%を占め、前年から7.2%増え、過去最高を更新した。金融緩和を続ける日銀は、上昇する長期金利を低く抑えるために国債を大量に買い入れている。
 過去最高が良いのか悪いのか分からないが、途方もない数値が一人歩きしている。

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