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しがみつくのは愛してるから


ただの名前の話。

結婚して名字が変わった。誰にでも起こりうる普通な出来事。

旦那さんの名字は少し珍しくて、一発で読める人はほとんどいない。シンプルで平凡な名字で生きてきた私にとって、そんな名前になることは少し刺激的な出来事だった。最初の頃は自分で書いた新しい自分の名字と名前を、まるで他人の名前ように眺めていた。28年間一緒に生きてきた自分の名前が変わったのだ。

画数が少なくて書くのが楽だった。「小」という字を含むその名字は私の体格的な特徴を表すにはちょうどよかった。仲の良い友達ほど私のことを名字で呼んだ。呼ばれるほどに、自分の名前に愛着が増した。私は、名字を含めて自分の名前が好きだった。

仕事では旧姓か新姓を使うかを自分で選ぶことができたので、私は迷うことなく旧姓を使うことを選んだ。戸籍上は名前が変わっても、今までの名前で変わらず呼ばれる環境を残しておきたかった。

生まれて最初に両親からもらってこれまでずっと一緒に生きてきた名前は人生そのもののような気がする。私は名前が変わることで自分のこれまでの人生が一旦終わってしまうような気がして少し不安だった。だからきっぱりと名前に別れを告げることができなかったのかもしれない。

旧姓と新姓を使い分ける生活を始めてみて。
思いの外、2つの別の人間の人生を生きているような気がしてなんとなく楽しい。もともと仕事とプライベートの境目をはっきり作らないタイプだったので、ある意味オンとオフのメリハリがついて結果的に私にとってよかったのかもしれない。

不安があるとすれば、万が一私が事件や事故に巻き込まれた時、もしもニュースなどで報道された名前が新姓では会社の人は気付いてくれないんじゃないかとか、どうでもいいことくらいだ。

まだ病院で名前を呼ばれても自分のことと思わずはっとすることもあるけれど、旧姓と同じようにこれから愛着をもって新しい名前とともに生きていけたらいいなと思う。

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