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サービス横断でユーザーに最適な情報を届けるための仕組み

こんにちは。データ分析グループの濱口です。
今回はデータ分析グループで日々取り組んでいる分析事例のご紹介として、サービス横断でユーザーに最適なサービスをレコメンドする仕組みについてご紹介したいと思います。


はじめに

エムスリーのデータ分析グループには以下の2つのユニットが存在しており、それぞれエムスリーの利益向上につながる分析案件を推進しています。

  • プラットフォームユニット:エムスリーが運営する医療従事者向けのプラットフォーム(m3.com)の改善施策を実施するユニット

  • 製薬ビジネスユニット:製薬企業のDX化支援に関する分析、および製薬会社向けの新規分析サービスの設計開発を行うユニット

私が所属するプラットフォームユニットでは、日々各サービスのプロダクトマネージャーと共に、プラットフォームの改善施策を行い事業インパクトを生み出しています。一方で、データ分析グループとして中長期的に価値を生み続けるために、目の前の施策推進とは別に以下3つの重点テーマについても業務時間の10〜20%を使って取り組んでいます。

  1. m3.comで生まれる価値を正しく評価するためのデータ整備、効果検証手法の整備

  2. m3.comの価値を更に向上させるためのサービス横断の分析

  3. m3.comにおけるデータ活用プロジェクトのナレッジ集約

今回の事例は2.のサービス横断の分析として取り組んだ内容となります。

分析のコンセプト

エムスリーは医療業界の様々な課題解決に取り組んでおり、m3.comには多くのサービスが存在しています。最新の医療ニュースや臨床情報を提供するサービスや、製薬企業から医薬品に関する最新情報をお届けするためのサービス、開業や転職等の医師ご本人のキャリアを支援するためのサービス、医療以外のライフスタイル領域における会員優待サービス等、様々なサービスが存在しており、ユーザーのm3.comの使い方も人それぞれとなっています。

これまで各サービスそれぞれでユーザーセグメントを作って施策のターゲティング等に活用してきました。今回はそれらのユーザーセグメントを集約してサービス毎の利用レベルを定義し、①ユーザーのサービス利用レベルが上がる確率、②ユーザーのサービス利用レベルが上がる価値、の2点を定量化することで、ユーザーに最適なサービスをレコメンドできる仕組みを作りました。

分析のコンセプト

分析の方法

上記のコンセプト実現のため、①サービス利用レベルが上がる確率、②サービス利用レベルが上がる価値のそれぞれについて機械学習を用いて次のように定量化しました。

学習に用いるデータ

  • ユーザー×サービス毎の月間の利用レベルのデータ

  • ユーザー毎のm3.com利用による価値

  • ユーザー毎の属性情報や行動履歴等の特徴量

サービス利用レベルが上がる確率のモデル化

こちらはシンプルに一定期間(1ヶ月)のユーザー×サービス毎の利用レベルの変化を目的変数とし、ある時点のユーザーの属性情報や行動履歴を特徴量として、その後利用レベルが上がるか否かを二値分類モデルに学習させ、利用レベルが上がる確率を算出するようにしました。
モデルはサービス×利用レベル毎に分割しました。利用レベルが変化するユーザーの量は各サービスでばらつきがあるため、過去一定期間のデータをまとめて学習に使用することで一定の学習データを確保するようにしています。

サービス利用レベルが上がる確率のモデル

サービス利用レベルが上がる価値のモデル化

こちらは因果推論のMeta-Learnerの考えを応用し、ある時点の利用レベルの変化の有無によって、その後一定期間のユーザーのm3.com利用による価値がどれだけ変わるかを回帰モデルに学習させました。利用レベルが上がった場合と上がらなかった場合の2通りの価値をモデルで予測し、その差分を取ることで「利用レベルが上がった場合の価値」を定義しました。

サービス利用レベルが上がる価値のモデル

作成したデータの活用と今後の改善

上記のサービス横断で最適なサービスをレコメンドするデータは、現在は定期的に更新され、様々な施策に活用されています。アクティブ度の低いユーザーに対してチュートリアルを提案する施策、サービスの利用状況に応じたポイントインセンティブを追加する施策等、ユーザーに対してサービス間の優先度を付けるような施策で威力を発揮しています。また、今後はWeb上の施策に留まらず、電話やWeb面談等での活用も検討されているため、継続して対象サービスの拡充やモデルの精度向上に取り組んでいく予定です。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回はデータ分析グループでプラットフォーム改善向けに取り組んでいるサービス横断での分析テーマについてご紹介しました。事業会社における分析の進め方であったり、複数の対象に対して優先度を付けるための分析のアプローチに関して参考になれば幸いです。

データ分析グループでは「データ×分析技術」で事業成長と医療の発展に取り組む仲間を募集しています。各データサイエンティストはデータ分析のスペシャリストとして裁量を持ってエムスリーのデータ活用を推進することができます。カジュアル面談やインターンシップも随時実施していますので、興味を持っていただけた方は、下記の採用HPも是非ご覧になってください。