【掌編小説】カレーの日

 病院の窓。外。ショッピングセンターの駐車場。数少ない車。ぴかぴか輝く、屋根や鼻っ面。
 独り者のドアが開いた。運ばれてきた食器には、いつも通りに蓋がされている。お皿の数は少ないのに、何だかいつもより豪華に見えるワンプレート。

 「お食事ですよ。今日はアレですよ」
 「えへへ」

 看護師さんが含み笑いで退室する。蓋を開ける。食欲をそそる、あの匂い。有名店のとっておきのスパイスが入っている訳でもないのに、ご飯にかけたカレーは何故か私達日本人を沸き立たせる。

 白いご飯と魅惑のルウを等しく混ぜて食べる人もいるけど、私は形を崩さずに食べる派。すでに完成された調和に、手を加える必要など無い。
 スプーンに出来た小さなカレーライスを一口で食べきる。優しい辛味とほんの少しのスパイス。

 付け合わせはフルーツカクテル? 献立表の文字に首をかしげて、実物を見る。果物のサイコロが白い海に浮かんでいる。
 牛乳? スプーンの先っぽに海を載せて舐める。甘味と酸味。ヨーグルト!

 私は白い天井を仰いで呟いた。
 「完…璧…!!」

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