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「今まで生きてきた中で一番幸せやな…」

タイトルは
昨年、私の中で大ヒットした夫の言葉。

聞いた時はちょっと大袈裟だな…って思ったけど、それが別のシーンで私に影響するとは…


昨年の暮れ
そもそも帰省する予定ではなかった一番末の息子が急に帰って来ることになった。
社会人一年目の彼は遠く離れた場所で一人暮らしを満喫中。
盆と同じように正月もあっちでのんびり過ごすのだろうと思っていた。
年末年始のラッシュ時期を狙ってわざわざ帰省するのは面倒だ…と思っているに違いない。聞かなくてもわかる。

それが急に
暮れの押し迫ったタイミングで帰ってくるというのだ。
しかも娘の方からLINEをもらった。

『〇〇の便で一緒に帰るからよろしく!』と。

早めに帰省していた長男家族と久しぶりのご対面となり、孫の初抱っこを無事に果たした。孫にとって末息子は新米叔父さんだ。8ヶ月を過ぎたぐらいの赤ちゃんを抱くのは初めてで、肩に力が入りすぎているのがわかる。見ているこちらも何だか、フフッとなる。ぎこちない感じで抱っこするものだから、てっきり泣き始めるのでは…思っていたが、難なくクリア。
兄弟だからパパと似たところがあるのか…孫も初対面の叔父さんをじっと見つめる。

夫は隣で
「オレの時は泣かれたのに…」と、軽いヤキモチを焼いている。


その晩は、数年ぶりにカニ鍋!
かなり奮発した。
みんなで鍋を囲みながら、久しぶりの再会を喜び合う。

一晩だけだったけど、みんなが揃った瞬間だった。夫はよほど嬉しかったのか、最初から最後まで鍋奉行に徹した。
しかも終始笑顔。
シメのカニ雑炊は最高の味!

夫婦二人だとこうはいかない。
お互いいつも小言のぶつけ合い。
夫の柔和な顔をみるのはこちらも気分が良いものだ。

兄弟三人にお嫁さんと孫の存在がプラスされて、これまでとは違う時間が流れる。
この穏やかな流れをいつまでも大事にしていきたい…。

それは夫も同じなのだろう。
たまたまその夜、洗面所で二人になったタイミングで

「今まで生きてきた中で一番幸せやな…」

お酒が入ってたせいか、ちょっとカッコつけたセリフだな…って思ったが、気持ちがこもっているのがわかる。

みんなが揃ってホントに嬉しかった…


末の息子が帰省することになったのは、娘のアプローチがあったからこそ。


「盆も帰らんかったのに…正月くらいは顔見せに帰った方がいいよ。」
と、助言をしたようだ。
にも関わらず、なかなかアクションを起こそうとしないことに痺れをきらし、二人分のチケットを取って一緒に帰ってくれたのだ。

半ば強引なやり方に笑ってしまったが、私からすると姉の言うことなら素直に聞くんだ…と。やはり、姉ちゃんには逆らえないのだろう。

孫を囲んで兄弟三人が何やらケタケタ笑う様子にお嫁さんのTちゃんが
「三人とも仲が良くて羨ましい。」とつぶやく。
なんてことない光景にTちゃんの言葉が添えられた途端、それがかけがえのないものに変わる。


長男家族を見送った次の日。
娘と末の息子の帰る時間が近づいてきた。

「忘れ物ないようにね。」
と、帰り支度をしている娘の後ろで声を掛けた。

「それとさ、昨日お父さんがね、
……。」と、言いかけた途端、次の言葉が出なくなった。
鼻の奥がツーンとなり、何かが溢れてしまいそうになるのを必死にこらえた。


『今まで…生きて来た中……で、一番幸せ……やった…って…』


はっきり伝えたかったけど、途切れ途切れになってしまった。

娘の方はびっくりしてこちらを振り返る。

「泣いてんの?お母さん。」

娘は優しく続けた。

「もう、お母さん涙腺緩くなってない?」

その瞬間、顔がクシャッとなり、思わず両手で覆ってしまった。

こんなシチュエーションは想像してなかった…自分が一番驚いた。

「また、いつでも帰っておいで。」

駅で見送る時は、二人に笑顔で手を振った。


みんなが向こうに帰った後は、寂しいというより何だかホッとした。

夫の実家への帰省が苦痛で仕方なかった嫁時代を思い出す。
帰らなければいけない…っていうのもホントは大事なのかもしれないけど、みんなが帰りたくなる場所にしないとなぁ…ってあらためて思った。

その晩、夫に娘の前で泣いてしまったことを話そうと

「ねえ、今日さ〜」

と、話し始めたところ、

「今まで生きてきた中で…」のセリフの手前で……

また感情が溢れてきた。
何だかおかしい。


夫も察したようだ。
自分の気持ちが娘にも伝わっているんだとわかったのだ。おまけに私がこんな感じなものだから。

黙っていたけど…
キッチンカウンターの向こうで夫も必死にこらえているのがわかった。


『今まで生きた中で一番幸せ…』


そう言っていた夫だが、ホントはあのセリフ…幻だったの?
あれから夫婦二人生活を続けているうち、いつの間にか魔法が解けたようだ。


おかしい。
もしかしたら、私も同じかもしれない。


忘れないうちにあの時のあの瞬間を
書いておこう。



TVでは、WBCの決勝戦!
いい流れになっている。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。












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