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2022/5/29「社会的処方」を読んで考える対話レポ

今回は『社会的処方 孤立という病を地域のつながりで治す方法』を読んだうえでの対話を開催しました!
本を読んでから参加、というハードルの高い条件でしたが、6名の方にお集まりいただきました!

#学芸出版社

 
前半は、社会的立場(職業)を明らかにしないで対話を行い、後半は、立場を明らかにしてそれぞれの視点から意見を述べました。

【前半】 


本を読んで、各人が疑問に思ったことから話し始めました。
 
・この本や社会的風潮としても「孤立」は悪いこと、となっているが、本当にそうか。現代社会は個でも生きていけるようになってしまった、昭和に比べるとしがらみが少なくなって、つながりがなくても生きていける。
→私は、「孤立」よりは、「独立」という表現がいいと思う。「独立」は悪いことではない。
一人で住んでいても、誰かとつながっていればよい。
→データとして、独身男性の寿命が短いというものがある。女性に比べて10歳くらい短いらしい。男性の方が、社会的負荷が高いから、自分に負荷をかけてしまうから、寿命が短いのではないか?
→本書に出てくる「はじまりの婦人」の夫は、現役時代は出世し、退職後は家の中で気難しくて不機嫌で、妻にも厳しく当たっているという。男性の方が、子どもの頃から出世や競争、上下関係の世界で生きてきて、女性に比べて横のつながりが少ないのが、孤独になる原因ではないか。
→そんな男性への社会的処方はどうすればいいのか?
→子どもが小さいころ、地域の活動に積極的ではない男性を、一輪車のコーチとしてお声かけした。専門的に一輪車に詳しいわけではない人だったが、コーチという地域での役割をお願いしたら、積極的に動いてくれるようになった。
→役割を与えれば、役に立つことがモチベーションとなって、社会参加が進むかもしれない。
→でも、今の時代、自身の仕事のことで手いっぱいで、地域活動や余暇、文化活動ができる余裕がある人はとても少ないと思う。
→元々コミュニケーションを取ることが苦手な人もいる。独身でコミュニケーションが苦手な人が、地域活動に参加すると、うまく考えが伝わらす、年配女性とトラブルになることがあった。。
→地縁や血縁、仕事のつながりではなく、「グリーンバード」の清掃活動のように、やりたい人が参加する場はいいと思う。
→本書にも「どんな人でも、地域をよくする能力、知識、技術を持っている」と書いてある。その人の中に、何かしらの特性を探すのが大事だと思う。
・今は、人と会わなくてもZoomなどで交流できるが、それは真の人間の交流とは言えない。現代社会のこの流れを止めなければ、自然に孤立状態になってしまうのではないか。
→Zoomでは、助けを呼んでもすぐには来てもらえない。近くに助けてくれる人を作っておくことが大事。私の関わっているケースでは孤独死も多い。助けてほしいという手のあげ方がわからない、迷惑はかけれらない、と思っている人が多い。誰もが「助けて」と言える環境を作っていきたい。
・医療が(医師が)社会的処方を行うのは難しいと思う。ふさわしくないと考えている。
→医師は薬を処方していればいいということですか?
→病気を治せない、改善できないというのは医療にとっての敗北。医療の限界を超えて地域の生活に入っていくのは違うと思う。
→社会的つながりによって健康的な生活に導くのは困難ということか?
→地域に医師が出ていくということは、ヒエラルキーを持ち込むということ。医師の言うことは絶対であり、副作用の方が大きいと思う。イギリスではまずは家庭医が決まっている。日本は近所の内科医でも大病院でもどこで受診してもよい。医療の側から一方的に地域の情報を与えるようなやり方は成立しないと思う。
→イギリスと日本では医療の位置づけが異なると思うが、今は、社会保障費を軽くするためにも、近所にかかりつけ医を持つことを勧めている。医師の中には親の会、患者の会などと連携している人もいる。
→医師に権限が集中しているこの状態で、地域に入ってくることに疑問を持たれていますか?
→実際には本に載らないような様々な市民の活動がある。そこに今更医師が入ってくるのはいかがか。医師は決定権のある人で、責任ある立場。医師として地域に出るのは弊害の方が大きいと思う。
 

【後半】


・地域で活動を行っている。著者の西先生とも面識がある。西先生はフラットな立ち位置から地域とつながりたいと思っていると受け止めている。
・現実問題、本当に助けがいるときは血縁の承諾が必要(手術や相続なと)
→血縁がいない独居の方が、難しい。後見人を付けたほうがいいと言っている。
・自分は、医療などには携わっていないが、寅さんのように人と人をつないで、自然に社会的処方を行えるような人になりたい。
・地域で対話の場などを主催している。ニーズの押し付けではなくて、その人が何を求めているのかを把握しないと、場づくりは続いていかない。
・認知症カフェに関心がある。多くのカフェを取材し、いろいろな医師の話も聞いた。著者の西先生にも話を聞いた。認知症カフェを主催し、毎回参加する医師や、立ち上げたけれど一度も参加はしない医師等さまざま。一般の人は、医師に相談すると、そのアドバイスに縛られてしまい、自由を失ってしまう。
・医療の広報の仕事をしている。医療は閉鎖的な世界。2025年の75歳以上が2000万人を超えるという問題に興味がある。
・時代は孤立の方向に進んでいる。人とつながることができる人間になることが必要だ。
→対話の場を積み重ねていけば、そこに来たこどもたちが、大きくなって対話の場を開いてくれるかもしれない。ニーズの押し付けにならないようやっていきたい。
→医療のように直接助けることはできないかもしれないが、対話の多い社会を作っていくことで世の中を作っていけるのではないか。
→正解がひとつで、それを与えるという処方の仕方は副作用があると思う。
 
 

みなさんからの感想


・幅広い考えや事例がわかってよかった。
・自分と異なる観点からの意見に触れられてよかった。
・私にとっては、この対話の場が「社会的処方」である。
・全員の発言が聞けてよかった。
 

まとめ


 今回は課題本を読んでから参加という、ハードルの高いものでしたが、6名の方が参加してくださり大変うれしかったです。
 時間が足りず、あまり本の内容に踏み込めなかったのが残念です。医師の社会的処方について対立意見があり、もっと深めたかったと思いました。また、時代は孤立へ向かっているという意見に対しても、異見がありましたが深められなかったので反省点です。哲学対話は2時間ではやはり足りないかもしれません。
 「ニーズの押し付け」という言葉が印象に残りました。

今後とも不定期開催していきます!読んでいただき、ありがとうございました!


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