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Jクラブ 法人営業の課題とは?(Off the pitch talk 第47回〜第49回まとめ)

皆さん、こんにちは。神村です。
前回は、モンテディオ山形が取り組む SDGs の内容について今計画しているプランをお伝えしてきました。

今回は、「Jクラブの法人営業」について取り上げてみたいと思います。
そもそも、法人営業は経営における根幹事業であるにも関わらず、普通の企業では起こらないレベルの課題が(少なくとも、私が過去に在籍した)Jクラブには山積していると思っています。その中でも、①:営業戦略、②:システム管理、③:教育という3点に絞ってお話します。

(本稿は「Off the pitch talk 」第47~49回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー&文責:神田さん(@Twitter)でお届けします)

↓↓音声で聞けるstand.fmはこちらから↓↓

#47 : https://stand.fm/episodes/60211f0583a4823e16547749
#48 : https://stand.fm/episodes/6023caf88ba7e1bb8b201056
#49 : https://stand.fm/episodes/6026607beb44de780446ad5e

営業は市場の基本情報を知ろう

Jリーグの各チームは地域に根ざしたホームタウンがあります。
法人営業のターゲットは:
①県内の大企業
②首都圏・他府県企業の支店や工場
③地域の中堅・中小企業
④個人事業・店舗
⑤近隣県企業
など細分化されています。営業チームは、まずターゲット域内で、カテゴリーを分け、どれだけの市場規模になり得るのかを認識する必要があります。例えば、県内の企業数、事業規模はどれくらいか?、業種・業態の割合は?、人口や県内 GDP を踏まえると一体いくらのビジネスになるのか?という思考は、営業分析の基本中の基本です。

しかし、残念ながら上記のような思考法を持たないスタッフが意外と多いのも事実です。これでは、将来的に営業が獲得できる法人売上見込を立てることができませんから、クラブの中長期的な経営計画も立てられません。
地方クラブであればあるほど、地方経済の盛衰にクラブの未来が依存することになります。
事業拡大の余力がどこにあるのか?県内にその余地がどの程度あるのかを見定めていくことが、営業上必須事項になります。
*ここまでが、いわゆる「農耕型営業」の基本です。

そして、次のステップが「狩猟型営業」です。
近隣大都市圏、首都圏さらには海外といった「新しい市場」をしっかり見極めていくことから始めるのです。もちろん、やみくもな拡大ではいけません。ランチェスター経営の基本にある「戦線を広げすぎない」ことは絶対に忘れてはいけません。(私のバイブル:「ランチェスター経営」がわかる本―儲けのしくみ、教えます!」フォレスト出版 著者:竹田 陽一)

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自社の強み/弱みの分析・リソース特性・商品設計などいくつかの要素を組み合わせて、「どこで狩りをするか」「何を獲りに行くか」を考え実行していくのです。
しかしながら、新規の市場は市場分析・見極めをしてしっかり戦略を立てても、すぐに結果に結びつくわけではありません。人的リソースに限りもあります。だからこそ、人の配置・市場拡大タイミングなどを論理的に判断する司令塔が必要なのです。
既存顧客の案件継続に躍起になっているうちに、また新シーズンが始まってしまい、戦略を練る余裕が無くなりがちというのも実態です。
営業部門統括責任者の手腕が問われるところです。

個人的にはできるだけ早く「海外戦略」推進を実現したいと思っています。
ターゲットはもちろんアジアです。
以前所属したクラブで当時のタイ代表選手を獲得しました。
現地の人向けにタイ語の Facebook アカウントを直ぐに立ち上げたところ、一週間も経たないうちに1万人近いフォロワーができました
サッカー選手の発信力の大きさに非常に驚いたと同時に、PRメディアとしての可能性を実感しました。
しかし、残念ながら獲得した選手が移籍した途端、発信する情報が無くなり、せっかく作ったアカウントが開店休業状態になってしまいました。
1万人を超えるタイ現地へのリーチ・ツールも使われないと全く意味がありません。

ここでの教訓は、海外戦略は強化・事業が一体となって構築していくテーマということです。特にアジア系選手の獲得は必ずしも「戦力強化」だけではない意味合いを考慮した、まさに事業戦略の一つとして経営判断していくべきものだということです。
特定の選手に依存した、属人的施策は、往々にして”出たとこ勝負”になってしまう可能性が高くなります。この意味において、クラブ経営者には「地域志向」と「グローバル志向」を兼ね備えた資質・見識が求められるのだと思います。

システム化の”罠”

IT化と一言で言っても多岐に渡りますが、総じてIT化・システム化についてJクラブは一般企業に比べかなり遅れているといってもいいと思います。

5年前にこの業界に来た時には、「えっ?!!、まだこんなことやっているの?」と驚くことが日常茶飯事でした。この1~2年でかなり進化しているとはいえ、世の中の変化もそれ以上に速いので、このテーマは当面の課題として残り続けると思います。

では、なぜシステム化・IT化が進まないか?

これはいわゆる組織の”罠”です。
みんなが必要だと思っている、だれも反対しない、でも進まない・・・・

「進めたいけど・投資が怖い」経営者
「めんどくさくても慣れてる方が楽・新しいの嫌」の現場スタッフ

●サッカークラブ経営者の多くは事業を単年度P/Lで見ています。それが悪いということを言うつもりはありませんが、「投資と企業の資産価値」に重要視点を持っている人は極めて少ないと思っています。(コストと資産の区別がない人が多いといってもいいかもしれません。)すぐに売り上げ・利益につながるもの以外にお金の使い方を知らない経営者も多いのです。

●一方で現場スタッフも「システム化・効率化」による「生産性向上」に関心を持っている人が少ないと感じます。何度も同じ入力して面倒だなと思いつつ、新しいツールを探したり、業務改善を推進していくことに踏み出す人が少ないのです。新しいものへの抵抗感があることが第一です。そして何より、「多少生産性が上がったところで自分に得になることがそんなにあるわけじゃない」ことわかっているのです。

これは決してスポーツクラブにだけ起きる”罠”ではありません。中小企業にはよくある事例です。この”罠”にはまらない経営・現場の推進力が重要です。

教育なき組織は持続しない

スポーツクラブにおける人材教育については、私自身が人材業界出身ということもあり、特に課題感が強い部分です。
●人を大事にするとは言うものの、人材を「資産」として認識している経営者が少ない(人への投資が予算化されない)
●人事部がない
●仕事における必要なスキルセットや、昇進昇格に向けた「課題設定」が明確でない
など、驚きますがそれが実態です。

営業部門でいえば、コロナ禍においてリモートワークが急速に普及しました。対面営業もままならくなりました。顧客との関係性維持、新規開拓はどのようにすればいいのでしょう?それは誰が教えてくれるのでしょう?
営業部門において必要なのは、特別成績のいいスーパー・セールスマンではありません。その彼のスキルを営業のベストプラクティス(成功例)に再現性を持たせるための仕組みづくりなのです。
①新規開拓の仕方
②企業ニーズの把握の仕方
③提案書の作り方とプレゼンテーション
④関係性構築とアップセル
この4段階だけでも言語化し、実行動をチェック・分析・評価するだけでも
1年後に全く違う組織ができるのです。人の成長を個人努力に依存しないこと、組織の力で人を育てるのが強く・持続する組織だと思っています。
特に、 法人営業が5~10人程度の少人数組織では、個々人のキャラクター、およびスキルに依存した営業体質になってしまいがちですから、教育体制の改善が急務なのです。(これを実行できるトップがいる会社は数年後に大きく飛躍しているでしょう。)
結果として、教育体制が整うことにより、若い社員(特に新卒)を採用することができます。それによって企業に新陳代謝が起きます。新陳代謝は人の成長を促します。人の成長は事業の成長につながります。
事業成長の好循環を生み出すはじめの一歩が「人の教育・投資」なのです。

まとめ:戦略・システム・教育は連鎖している
    ~~まずは営業戦略を固めよう~~

法人営業が抱える3つの大きな課題について言及してきました。
現状を100点満点で自己採点すると、

①:営業戦略 ⇒ 60点
②:システム化 ⇒ 10~20点
③:教育 ⇒ 30点

という感覚です。今シーズンが終わるころには「70:50:70」くらいには持っていきたいと思っています。(そしたら、また自己ハードル上げますけどね・・・・笑)
若い人たちに知っておいて欲しいのは、ここで述べた3点は、全て連鎖的に作用しているということです。
すなわち、
①市場分析に基づいた戦略によって、営業ターゲットがより明確になり、
  アクション内容がはっきりしてくる。(量的営業が可能になる)
②ターゲット攻略の効率化、そのプロセスのデータ蓄積、結果の検証など、
 システム化が力を発揮し始める。(営業が定型化してくる)
③営業が定型化する(再現性が強くなる)と人員採用が可能になり、人が人
 を教えることでさらに成長する。

法人営業は企業の根幹です。この連鎖をしっかり身につけて欲しいと思っています。


     


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