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ネタの探し方:PubMedで遊ぼう

医療系ネタで何か書こうとしてる方向けの記事です。
ネタを探したい方向けのコラム。
医療ネタを探す方法は色々ありますが、「無料で使えるインターネット上の資料」の探し方の一つとしてご紹介します。

■ まず、PubMedってなに? 

アメリカ国立医学図書館のオンラインデータベース検索サイトです。
1946年以降の文献を収録するMEDLINEというデータベースに作られたものですが、現在はOLDMEDLINEという古い文献のデータベースも加わっており、かなりの文献を検索することができます。
ぐーぐるすからー先生よりも古くからある、「医学に関連するかもしれない分野を総舐めする」を目的に構築されてるといっても過言ではない、おそらく世界一充実した専門の検索サイトです。
なお、アメリカ政府のお金で動いてますので、アメリカで予算問題が起きた場合は何日か止まるとアナウンスされます。その場合、夕陽に向かって「アメリカ議会のばかぁ~!」とでも叫んで、あとはひたすら待ちましょう。

収録されてる分野は「医学に関係してるものなら何でも」といっていいくらいでしょう。
たまに収録されてない医学雑誌もありますが、収録されてない=ショボいとみなされてしまうくらいの存在だと、簡単に考えておいてください(とほり)。
工学系や歴史系、考古学系の論文もヒットします。

とっても真面目なサイトですよ?

■ ネタ探しにPubMed!?

真面目な目的で作られたサイトだからといって、趣味のために使っちゃいけないなんてルールはありません。
創作のネタが欲しい人は使えます。がんがん使いましょう。
歴史系の研究論文なんかもヒットすることありますので、医学の事はわかんないんだよなあ…という方も、使い方次第ですよ。


あ、そうそう。
このサイト、英語しか使えません(基本的に英語の読み書きできる集団が利用するから、それ以上必要ないっていうのもあるんですけどね。英語論文に用があるような人の共通語は、『ネイティブじゃない人が読んで聞いて話して書く』訛った英語だと思ってよいでしょう)

■ 使い方の初歩。

さて、前置きはこのくらいにして、まずはサイトを見てみましょう。

PubMedトップ

なんか地味~なデザインのサイトです。
とてもじゃないがこれが最強検索サイトの一角をなすとは思えませんが、これがなかなか使えるんです。

使い方は大変簡単です。

PubMed検索の基本

1)検索文を書く
2)ぽちっとな

これだけです。
「検索文」と書きましたが、文章はむしろ書かなくて良くて、単語を放り込んでみてください。
例として、今回はコミックス24話のネタである「ペスト」を使ってみましょうか。

検索開始

ここで注意してほしいのは、「ローマ字表記」じゃなくて「英単語」にしないといけないってことですから、そこだけ注意してください。
間違って"pest"て書いちゃダメですからね?Plagueですよ。
で、ぽちっとなと"Search"ボタンを押してみますと。

検索結果

はい、どーん。
検索の結果、該当する論文は 10532件 ヒットしました。

……そんなに読んでられるか~い!! (ノー_ー)ノ彡┻━┻

ご安心ください、これを全部読む気になる奴なんていません
我々がどうするかっていうと、絞り込みをします。
ぐーぐる先生で検索する場合いくつかの単語をスペースで区切って入力して検索します。PubMedの場合、同様に検索するのも可能です。
が、もうちょっと楽にやることもできます。

また、トップページに戻ってみましょう。
左上の「PubMed.gov」と書いてあるイメージをクリックすると、トップに戻れます。

ホームに戻る

さきほどはここで検索したい単語を入力しましたが、ちょっと条件を変えたりできるように、アドバンスト・サーチに行きましょう。

検索文の書き方は、覚えたければそのうち覚える程度で十分です。

今は『ネタを探して遊ぶ』ための解説ですからね、難しそうなことはガンガン避けていきましょう。「要らない努力は積極的に回避する」が中崎のポリシーの一つなので、ご了承ください

Advancedに進む

さて、上図にあるとおり、今度は"Advanced"の文字をクリックします。
すると、次のような画面に移動します。

Advancedトップ

Builder と書いてあるところに、いくつかのフィールドがありますね、ここを利用していきます。
といっても、調べたいキーワードを入力するだけです。
キーワードを入れていくと、上のフィールドには自動的に検索文が出来上がります。

Advancedへの入力

入力したら「Search」をぽちっとなと押します。
すると

AND検索の結果

こんな感じで結果が表示されます。

この画面の上のほうに、検索文が表示されているのが見えますか?
慣れてきたら、自分で文章を作ってここのページで直接入力しても構いません。それでも検索可能です。

さて検索結果はというと……2047件
まだまだ多いですね。というわけで、もうちょっと絞り込みましょう。
もとの画面に戻っても良いですが、ここはひとつ、もうちょっと楽にやれることを先にやります。

検索結果を絞り込む

医学系論文は「人間以外の動物での実験結果」を書いたものがけっこうあります。
ここでは動物実験の結果を知りたいわけじゃないので(ネタにするならヒトの話のほうが楽だからです)、図中2の「生物種による絞り込み」をしてみましょう。
といっても、"Humans"と書いてある文字をポチっとクリックするだけです。

ぽちっとな。

はい、こうなりました。

Humansに絞る

1301件、まだ多いですね。慣れていてもちょっとめんどくさいです。

それに、今回は「ネタを探してみる」ことを目的に検索してますから、もうちょっと絞れる条件があります。

ズバリ、『タダで読める文献に絞る』んです。

左側に Text availability という文字が見えますが、これは「どんな文献が入手できるか」を意味しています。
それぞれ、

Abstruct=アブストラクト。文献の要約のみ。
Free full text = 全文が無料で読めるもの
full text = 全文が読めるけど、有料

の意味です。
なお、世の中には「ネットには要約さえ載ってない文献」が山ほどあるので、そういうものはタイトルと作者名くらいしかわかりません。
ここでは「無料で全文が読める文献」のみに絞ってしまいましょう。それ以外の文献を一生懸命探す必要がないですからね。
"Free full text" の文字をクリックしてみてください。

無料に絞った結果

276件に減りました。

まだちょっと多いので、もういちどAdvanceの画面に戻りましょう。
戻って下のほうを見ると、Historyというセクションが見えます。これは過去に使った検索文を表示していてくれるんですが、ここで「Add」をクリックすると、前に使った検索文がそのまま入力される親切設計になってますから、それを利用しましょう。

過去のクエリの利用

あとはそうですね、今度はNOT条件でも入れてみましょうか。
最初の検索結果でAIDSが目につきましたので、AIDSを除外してみましょう。

過去のクエリ入力済み

これで検索を絞った結果、

266件。

まだまだ絞り切れてないですねえ……

ま、絞り切れないこともあります。
(ここで地名や流行時期を入れたりすると一気に絞れますけどね。たとえば AND 条件で Paris(※1) と入れると6件、AND条件でJustinian(※2)と入れると6件と一気に減ったりします。思いつくままやってみましょう)

じゅうぶん減らしたところで、アブストラクトを見てみましょうか。
今までは説明らしい説明のない画面を見てましたから、表示を切り替えます。

アブスト表示に切り替える

すると次の図のように要約が表示されますから、あとはタイトルと要約を読んで、使えそうかなあと思ったら、本文を読みに行きましょう。

FreePMCtextへ

こんな感じで探せますので、ちょっと遊んでみるといいかもしれません。

■ 言語について

英語はまあ……慣れれば読めますよ。ぐーぐる先生に翻訳してもらっても良いですが、けっこう微妙な訳になります(ざっと意味を知るには十分なことも多いです)。
英語しかないオンラインの文書もいっぱいありますが、ああいうのも慣れれば割と読めます。

そうそう。
中学高校で習う英文法、あれはたいへん役に立ちます。習ってるときはかったるいばかりの英文法ですが、いざ読みたいものが出てきたときは、「文法に従ったパズル」を解くだけで済むので、馬鹿にしたもんではないですよ。
なお、高校ではやたらめったら長い文章作る練習させられると思いますが、あんな面倒くさい物はいらないです。

(PubMed 最終検索日:2019年9月11日)

※1 地名の例。
※2 歴史上知られたペストの流行は何度かあるんですが、特によく知られているうち最も古いものの一つが「ユスティニアヌス(Justinian)の大疫」と呼ばれています(541年ペルジウムで発生、542年春にはアレクサンドリアを経由してコンスタンティノープルに侵入)。このユスティニアヌスの名前を入れてみただけです。Black Deathだとヒットしすぎるのでこちらにしてみました。

付記:
にょろにょろした人がこんな良記事を公開してましたのでリンクしておきます。

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