初めて行者にんにくを調理したら、子供の頃に食べたティラミスがフラッシュバックした話
「これもらった〜」
ビニール袋片手に夫が帰ってきた。中には太くて立派なネギと、行者にんにくが入っていた。
袋をのぞきこんだら、行者にんにくだけキレイにラップに包まれている。
「行者にんにくは臭いから、丁寧にコーティングしてくださったのね」と、勝手に解釈した。
行者にんにくが我が家にきたのは初めて。勿論調理したこともない。
以前夫の実家に行ったとき、食卓に出してくれて、初めて食べた。ゆでて水気をしぼった行者にんにくが3センチくらいにカットされて、見た目はほうれん草のおひたし。
お義父さんが「くさいぞ〜?」とニコニコしながらおいしそうに食べていた。好きみたい。
溶き卵にくぐらせて、すき焼き風にいただいた。こんな風に食べるんだ、と新鮮だった。食べた感想は「ニラに似たやつ」。
おいしかったし、そんなに臭くないよ?と思った。ちなみに、お義父さんお義母さんは、行者にんにくを「アイヌネギ」と言う。
ネギと行者にんにくが入った袋を2日くらい玄関に置いてたら玄関がくさい。原因はネギだか行者だかわからないけど玄関がくさい。
「これは早く食べないとだね」って夫と話し、行者にんにくから速やかに食べることにした。私も夫も調理したことがない。
どおやって食べますか?と聞いたら「ジンギスカンと一緒に食べるかな」
食べ方をググったそうだ。北海道ではこの食べ方がベターらしい。
玄関にいる行者にんにくを迎えに行ったら、水分があってシナシナになっていた。
え?これ茹でてあるの?
ってゆーくらいシナシナになっていた。
腐ってる?大丈夫?
最初の状態をしっかり見ておけばよかった。
私は「腐ってるか、腐ってないか」を確認するとき、めちゃくちゃ匂いをかぐ。行者の匂いをくんくんくんくんかぎまくったけど、よくわからなかった。
この匂いは腐ってないような… でも腐ってるのかもしれない… でも行者にんにくはこーゆうものなのかもしれないし………
不安になってきた。
正解がわからない。
せっかくいただいたんだ。しかも丁寧にラップにくるんであって思いやりをかんじる。
ヨシやれることはやってみよう。
うん、これはきっと腐っていない。
「もうそろそろ腐りそうです」という状態に思えてきた。
行者から「いいから早く食え」という気配をかんじながらも、やっぱり不安だった。
「行者にんにく 腐ったら」
「行者にんにく 痛んだ」
とか検索してみたけどよくわからなかった。
考えた。
ジンギスカンと一緒に炒めないで、単品でいただこうと。だってもしやばかったらジンギスカンも巻き込むことになるからね。
夫の実家で食べた「すき焼き風 行者にんにく」に変更した。
調理の仕方を検索したら「サッと茹でる」と書いてある。
サッとじゃ足りないだろうと、茹でるというか煮込んでやった。塩を入れて。使用後の哺乳瓶を煮沸消毒するかようにグツグツにした。きっとこれで大丈夫だろう。
冷まして、めんつゆにヒタヒタに漬け込むらしい。
めんつゆに漬け込む前に、めんつゆにごまかされる前に、行者にんにくの味を確認しようと思った。腐ってたらやばいし。夫お腹弱いし。
小さく切って食べてみた。
「クッセェ!」
噛めば噛むほどエキスが出てくる。なにこれ腐ってる?!
わからない。
正解がわからない。
私は子供のころ腐ったティラミスを食べたことがある。
ティラミスが出たばかりころ、世の中はティラミスブームだった。ティラミス味のお菓子がたくさん出た時代だ。
祖母の家で人生2度目のティラミスを食べた。「ケーキもらったから食べていきな」と、大きめのケーキの箱に、違う種類のケーキが2、3個ぽつぽつと入っていた。きっと、祖父と祖母2人で食べきれずに残ってしまったんだろう。私はティラミスをワクワクしながらお皿にとった。
ワクワクも束の間、一口食べたら
「あれ?こんなに酸っぱかったっけ?」
こーゆう味だったかもしれない…とか思って、全部食べた。
食べてる最中は「…こんな味だったっけ? こんな味だったかもしれない」とゆー思考が終始グルグルしていた。
祖母の家から自分ちに帰り、ティラミスを食べたちょうど2時間後、今までに感じたことのない苦しい苦しい腹痛におそわれた。トイレにうずくまって痛くて動けない。親は「どうしたの?!」とあたふたしていた。
「なんか変なもの食べた?!」
ティラミスだ。
あの酸っぱさは腐ってたんだ。
祖母は悪くない。腐ってるの知らなかった。だけだ。
正解がわからない行者にんにくを一口食べた瞬間、腐ったティラミスがフラッシュバックした。
こわい…
ちぃぃさいやつを、もう一口、二口おそるおそる食べてもやっぱり
「くっせぇ……!」
夫に食べるか?と尋ねたらあっさり断られた。
半日くらいめんつゆ風呂に入った行者にんにくも恐る恐る食べてみたけど、夫の実家で食べたのと違う。不安しかない。
結局食べきれなかった。ごめんなさい。なんとも言えない気持ちになった。
次食べる機会があったら、しっっっかり味わって食べようと思う。正解を舌に教えたい。
この一部始終を、相談がてら友人に話したら、
「うちの旦那さんは行者にんにく大好きだけど、クセェって騒いでるとこ見たことがない」と言うではないか。
友人の旦那さんは臭いのが平気なのか、私がただ刺激的に感じてただけなのか。はたまたほんとに腐ってたのか。
いまも正解がわからない。
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