ブルーベリー

読んだ本の感想です。3冊目です。

高校生の頃を思い出す時、よく「甘酸っぱい思い出」なんて言うけども、それは私が当時、好きな男の子のことしか考えてなかったからで、文字通り甘く酸っぱい思い出だらけだからなんだけど、男性にとっての、しかも大学生の頃の思い出と言えば、いったいどんな形容詞が当てはまるんでしょうか。

この本は、作者の重松清さんが、山口から上京し、東京で一人暮らしをしていた大学生の頃のことを振り返って綴った物語集です。

一緒に東京の大学を目指していた彼女は、受験に失敗して山口に残ります。その彼女のために、2人お揃いのマグカップを買ったけれど、片方は一度も使うことがないままだった、とあり、その言葉通り、恋愛のエピソードは出てきません。

悪友と飲み歩いた日々、背伸びして通った六本木、バイトを通じた出会いなど、大学生らしい日常の中で、あの頃の自分にはどうしたらいいか分からなかった、どうすることも出来なかった、というような、少し後悔が滲んでいるような物語がならんでいます。

大人になって、答え合わせが出来た話もあれば、出来ないまま、思い出すと涙が出そうになる…みたいな話もあり、結果、どれも、とてつもなく甘酸っぱい思い出ばかりでした。

昭和の、一人暮らしの、大学生の、薄っぺらなようで濃厚で、後悔だらけの、でも精一杯の日常が、作者の優しい視点から描かれていてキュンキュンします。

読みやすそうだからと、偶然手に取った本でした。サイコーでした。



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