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世界三大珍味のトリュフが主役の映画「白いトリュフの宿る森」

映画(白いトリュフの宿る森)(ネタバレありです)

世界の三大珍味の1つとされるトリュフの中でも特に貴重とされる白トリュフ、その白トリュフを山中から掘り出し、生計を立てる人々を描いたドキュメンタリー映画です。
舞台は北イタリアの山村で、嗅覚の優れた犬と一緒に山中に入り、犬に良い匂いのトリュフが埋もれている場所を見つけ出させて掘り出します。 

原題はTruffle Hunters(トリュフを採る人)で、高齢となった地元の人々が生活の糧として採取を続けています。以前と比べると収穫の量が減った白トリュフですが、生活の糧である以上は自然の産物との共存が前提であり、採りすぎて乱獲にならないようにすることが、長年の採取の知恵としてそれぞれの人々の心に刻まれています。 

当然採取する場所にも縄張りが存在する訳で、この範囲をお互いに守るということも長年の暗黙の了解として成立しています。

ただ貴重な食材の白トリュフだけに、当然資本主義の性(さが)として市場メカニズムが介入し、白トリュフを狙う仲介業者は再三取引を持ち掛けてきます。
白トリュフの希少性を象徴するシーンが、記者会見場で多くのワインに囲まれながら、シルクと思われる小さなマット(座布団)に鎮座する巨大な白トリュフが映し出されます。 

三大珍味でもフォアグラはソテーなどでメインの食材になれますが、トリュフはキャビア同様にメインではなくサブの添え物であって、終盤にチーズと目玉焼きにスライスした白トリュフを食べるシーンがありますが、まさしくそれは素材を食べるのではなく、トリュフの香りに酔いながら料理を楽しむ行為だと思いましたね。

食文化はその国、地域の固有の文化ですから、そうした食材へのこだわりは、他の者からしたら理解しづらい面もあると思います。

1つの貴重な食材を巡り、その採取で生計を立てる地元の人々の素朴な暮らしぶりと、貴重であるがゆえに動き出すビジネスでの市場システムとの対立は、これまでも数多く語られてきたテーマでした。 

勿論資本主義経済である現状の社会では、こうした現象は避けられないものですが、それでもSDGsが声高に叫ばれる現代では、その対立も少しは緩和されるかもしれません。資本主義の根本的な部分は不変でも、そうした試みは継続的に行うことが必要になってきます。

今さらながらにこの映画は、そうした課題を抉り出してくれたと思います。(写真は公式サイトより引用しました)

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